統一コリア  | 新書野郎

統一コリア 




玄 武岩
統一コリア―東アジアの新秩序を展望する (光文社新書 317)

ゲンブガンもこれで新書2冊目だが、相変わらずの「主思派」ノモサ。もはや和田春樹チルドレンは海の向こうから調達するしかないのだが、さすがに北大准教授に出世ともなると、説明責任も生ずる様だ。この人の場合、自分の主張が日本の世論と乖離していることを百も承知で、あえて韓国左翼の立場を説明する確信犯だから、ノムヒョン一派が退任しても、無視できない影響力を残すだろう「三八六タリバン」を理解するには有用かもしれない。北朝鮮の「人権問題」を取り上げるのはレジーム・チェンジに繋がるからダメという主張が妥当かどうかは別として、そういう考えにある連中が他国の内政問題である靖国や従軍慰安婦、教科書を焚きつけているということだけは覚えておかなくてはならない。傍からみると、軍事政権による若かりし日の被弾圧体験が、北朝鮮の「民主化」を支援する方向に向かわないのは全く不可思議なのだが、それは北朝鮮を弾圧されている対象として位置づけることで、「弾圧する側」の日米を、かつて自分たちを弾圧した韓国軍事政権と同質化しているのだろう。その被弾圧体験の反動が現在の歪な急進主義に帰結するのも分からないではないが、著者が期待している「日本の良心」は、そこまで韓国人に都合よくできていないだろうし、それも特定の利益を追求する手段にしか過ぎない。著者が受けた非現実的なエセ反共教育の反動として金日成教に魅せられた様に、同世代の日本人は非現実的なエセ「平和教育」の反動が生じているのだ。要するに「右傾化」も「左傾化」も目くそ鼻くそということである。しかし、「統一コリア」を主張して、「デジタル・デモクラシー」を達成させた人間が、「レジーム・チェンジ」を否定するというのは何か矛盾していないか。やはり、日本は金王朝による統一を支援しろということなのか。
★★