実家から東京に戻ってくる、気持ち上の口実だった、
エリカさんの占いの日。
お土産の花を買い、エリカさんの待つ日暮里へ。
何を見てもらいたいのか、これといってハッキリしたことがなかった。
だから、久しぶりに会ったエリカさんにもそんな風に伝えた。
そして始まった、30分間。
エリカさんの占いは、手相から始まる。
わたしの手を見て、エリカさんはふと聞いた。
「えみさんのお父様は、もしかして白髪で短髪の痩せた方ですか?」
「・・・はい。お腹は出ていましたけど痩せて見えます」
「角刈りみたいな感じ?」
「はい・・・」
白髪で角刈り風の短髪を、最後までなでた記憶がよみがえる。
「ああ、やっぱり。2、3日前に来ていましたよ、お父さん」
・・・来ちゃってましたか。
「好きなようにやれ。 誰かの犠牲になるようなことはしなくていい。 愛しているよ、って」
・・・。
愛してるなんていう柄じゃないでしょ、父。
ああ、でもここに来ようと思った時、
なんでなんにも言ってくれないの、って父を心の中で責めたっけ。
だからエリカさんの力を借りたのだね、きっと。
すべてをまっとうして逝った、と、
たくさんの光に包まれていた、と、
エリカさんは言った。
愛など口にするはずのない、昭和の男から出た
「愛しているよ」は、
父がこの世にもういないことを、あの世に逝ってしまったことを
実感させた。
そしてわたしはこの夜、
父を想って、ほぼ初めて泣いた。 (意識のあるときに)
悲しみは、ふとしたときにやってきて、
BGM3曲分くらいで、優しく去っていく。
