無痛分娩は、人的資源などの医療体制
医療者と妊産婦さんの情報共有
それぞれの価値観、社会・文化的影響など
様々な課題を抱えています。
無痛分娩も帝王切開もその他の医療介入も時に必要なもの
ということは十分理解した上で
その一歩手前で、無痛分娩についてみなさんと考えたいこと
または、本来であれば、医師や助産師に伝えていただきたいことなど
今日は、一つの視点で、無痛分娩について書いてみたいと思います。
無痛分娩では【オキシトシン】レベルの低下が起こります。
オキシトシンは、幸せホルモン、ラブホルモン、愛情ホルモンなどの異名を持ち
最近は、テレビなどでも取り上げられるようになったので
ご存知の方も多いと思います。
無痛分娩(硬膜外麻酔)では、そのオキシトシンレベルが下がり
出産時の生理的なホルモン・サイクルがスムーズに機能しなくなります。
そのために、陣痛が弱まる、陣痛が止まるという
経験をした方も少なくないはずです。
そして、陣痛促進剤が用いられます。
オキシトシンは、子宮を収縮させてお産の進行をスムーズにし
産後の出血予防にも重要な役割を果たします。
今週のニュースでも、無痛分娩後に亡くなる原因の一つは大量出血とありました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170417-00050023-yomidr-sctch
(もちろん、無痛分娩でなくとも、大量出血は起こります。)
陣痛を強くするオキシトシンは
同時に和痛効果のあるホルモン(エンドルフィン)まで引き出します。
(エンドルフィンもハッピーホルモン、脳内麻薬の異名あり。
その鎮痛作用はモルヒネの6.5倍とか。)
これは、合成オキシトシン(陣痛促進剤)にはできない働き。
オキシトシンが、母乳哺育を促し
母親の母性行動や母子間の愛着形成に
影響を与えることも分かっています。
産後うつや虐待は
「産後」の問題として取り上げられがちですが
出産の影響は、絶対に軽視できないと思いませんか。
女性の主観的な出産体験そのものもそうですが
ホルモンという点においても。
産後のホルモンバランスの崩れは
どんなお産をしても起こりうることですが
産後の不調やうつなどの原因の一つがホルモンだということが
これだけ言われているにもかかわらず
お産のホルモンに目を向けないのはなぜでしょう。
もちろん、産後の赤ちゃんとのふれあいや抱っこ
見つめ合いでもオキシトシンは分泌されますが
お産の時に必要なホルモンを出すことも無関係ではないはずです。
ミッシェル・オダンさんは
もし、帝王切開で産む必要がある妊婦さんがいたら
「あなたにとっては、帝王切開で産むことがベストだと思う。
でも、陣痛を待って、陣痛が来たら帝王切開をしましょう。」
と説明し、緊急・予定・帝王切開をするとおっしゃっていました。
帝王切開が必要であっても
できるだけ陣痛を起こすことが
母子にとって大切だというのです。
今、ホルモンなどの内分泌学、微生物などの細菌学、そして遺伝学など
目に見えないレベルで、そして、長期的な視点で
出産の生理を守ることの大切さが少しずつ分かってきています。
今、「自然分娩」という言葉は死語だと聞きました。
死語かどうかは分かりませんが、タブーな言葉になりつつあることは感じます。
これも、今週のニュースですが、
小学校の先生が、自然分娩の方が良いといった内容の発言をしたことで
謝罪をしていました。
先生の言い方に問題があったのかもしれません。
それに傷ついた子どもやお母さんがいれば、それはとても残念なことです。
ただ、自然に産むことがいいと言えない世の中
「自然」という形以外で産んだお母さんや
生まれた子どもが傷つかなければならない世の中であることの方が
問題ではないでしょうか。
どんなお産でも、納得や満足、幸せは得られるはずです。
そこに必要なのは、やはり助産だと思うのです。
そもそも、自然という言葉が曖昧で
最近は、それも自然なの?という自然出産、正常出産
さらには、不妊治療にまで自然という言葉が…。
私も自然なお産という言葉は使わなくなりました。
でも、可能な限り「生理的なお産」をしてほしい
助産師さんには、それを守り支える人であってほしいという思いは変わりません。
私は、こうやってひっそりとながらも本音を書いていますが
本当に、こういうことが言えない世の中になっています。
助産院などで幸せなお産をしたお母さんも
それを人に言えず肩身の狭い思いをしているとさえ聞きます。
どんなお産をしても肩身の狭い思いをするということでしょうか。
海外では、ガイドラインでも保健省など政府のホームページでも
「リスクの少ない人は、自宅やバースセンターで産みましょう。」
「その方が、医療介入の少ない自然なお産ができます。」
「母乳は赤ちゃんにとって完璧な食事です。」
と書いてあります。
母乳で育てることや
自然に産むことがいいと声に出してはいけない日本
人を傷つけないということは、そういうことなのでしょうか。
話を戻しますが
無痛分娩だけでなく
孤独と不安の中で陣痛やお産を体験することも
オキシトシンの分泌を妨げます。
無痛分娩を選択する方の中には
前回のお産がトラウマ(ひとりで辛かった等)だという方
ひとりで痛みと不安に耐え
それ以上耐えられずに希望したという方がいらっしゃいます。
助産師には、まずそのトラウマを癒すこと
そして、女性がひとりで耐えなければならないという状況を
改善していただきたいと思います。
また、産後が楽らしいという理由で
無痛分娩を選ぶ方もいらっしゃいますが
会陰切開や吸引分娩などの医療介入が増え
帝王切開の確率が高まる無痛分娩
産後に重要なホルモンのバランスを崩してしまう無痛分娩は
本当に産後が楽なのでしょうか。
不安を煽るつもりはありません。
ただ、日本では、無痛分娩に関する情報が乏しすぎます。
偏りがありすぎます。
以前、無痛分娩の副作用などについて書かれたものを訳し
Facebook「お産と助産」に投稿したことがあります。
その時、頂いたコメントには
「こんなことは医師も誰も言わなかった。
誤訳ではないですか。」とありました。
女性が自分で情報を集めることも大切ですが
無痛分娩を行う産科医には
海外ではどれだけ無痛分娩が行われているという話だけでなく
様々な情報を女性と共有していただきたいと思います。
もちろん、助産師もそうです。
高齢出産やハイリスクが増えているといいます。
女性の求めるものが変わってきているとも聞きます。
本質論が通じにくいことは分かっていますが
助産師には、助産の哲学、お産の本質にいい意味でこだわってもらいたいと思います。
まずは、女性が十分な情報と選択肢とサポートを得ることからです。
どうやったらそれが可能になるのか、模索と行動を続けましょう。