人の魂の行く末は、どのようになるのか…。
江戸時代の寅吉少年は、要約すると、こう言ったという。
まず人の魂は善悪問わず、一つに凝り固まると固くなり、消える事がない。
とりわけ悪念の凝固した魂は消える機会がなく、妖魔の仲間になり、永久に神明の罰を受ける。
善念の凝固した魂は神明の恵みを受け、末永く世を守る神となる。
しかし善念は崩れやすく、悪念は崩れにくいもの。
それゆえに善念は生涯かけて固めていかねばならぬ。
反対に悪念はわずかな間のものであっても、固まって消える事がない。
一分の悪念が九分の善念を水の泡にする。
善にも悪にも固まるというほどの事も無い人の魂は、
散ったり消えたりしながら、そのような多くの人の魂が相まじりあい、
人間やその他のものになって生まれ出る事がある。
或いはまた、無数のちいさなものになったり、
一個のものに生まれ変わったりするが、
いずれそのうちに小さなものになっていき、
魂も減って少なくなってしまうのだと師匠に聞いた。
【参考書籍】
『仙境異聞』平田篤胤・著
魂、小さくなったり減るんだ…。江戸時代の寅吉少年の師匠の説では。