神道の霊魂観【4】術魂
神の魂は四魂ということでしたが、その他に「術魂」と言われる魂も加えて五魂説が考えられていた事があったようです。
もっとも、その説明の最後に「おそらくこれは中世の末か近世の初めに鎮魂術に関連して考えられた用語が『先代旧事本記』に誤って入ったものと思われる」と書いてあって、やはり四魂と考えていいのかもしれません。
大国隆正による神の出現の一形式・術魂
大国隆正は『魂魄弁』を著して、和魂荒魂よりも、「さき(割・裂)みたま」と「くし(串)みたま」とについて説いた。
さらに『先代旧事本記』に見える「術魂」を取り上げ、
『日本書紀』神代巻の大己貴神(大国主命)が、三輪大物主神として祀られることになる伝承において、「吾是汝之幸魂奇魂」、「汝是吾之幸魂奇魂」の下にそれぞれ「術魂」の字を補っている。
これを、ハケ(者消)ミタマと呼び、古書に「化魂」ともあるようにバケミタマとも呼び、自然界、人間界における種々の現象を千変万化させる力として解している。
さらにこれを神の出現の一形式であると考えた。
「術魂」という語の出典『先代旧事本記』の「地祇(地神)本記」
「吾は是れ汝(いまし)之幸魂奇魂術魂之神也」にある
前田家本で「バケミタマ」、吉田神道関係『神道名目類聚抄』では「マヂミタマ」と読んでいる。
橘守部は術魂之神を「わざみたまののかみ」としている。
「術魂」は日本上代の霊魂信仰に類した霊魂観と思われるが、あやふやな点が多い。
亀田鶯谷の五魂説
その後、亀田鶯谷(かめだおうこく)の著『五魂説』(明治14年刊)では、
この術魂の語を『先代旧事本記』に見える異伝として四魂と共に独立的な五魂として説を展開している。
五魂は、八神殿に奉斎する
高皇産霊神・神皇産霊神・生産霊神・足産霊神・玉積産霊神の五柱の御霊(みたま)であり、
術魂は死返魂(まかるかえしのたま)のことで、足産霊神の現れとされている。
この五魂は占卜に関係し、これらはすべて鎮魂祭の秘術に深い関係があると主張している。
が、おそらくこれは誤って『先代旧事本記』入ったものと思われている。
という訳で、昔の日本人は八百万の神々の魂を多面的にとらえていたようです。