大学からの連絡が解禁される「特別な日」
NCAAディビジョンIのラクロスでは、毎年9月1日が高校3年生にとって非常に大きな意味を持ちます。4年間の高校生活のうち、3年生の始まるこの日から、大学のコーチが選手本人に対して正式に連絡を取ることが認められるようになるためです。それまでの期間、大学側はどれほど優れた選手であっても、電話やメール、SNSのDMを通じて直接やりとりすることはできません。つまり、9月1日は、大学ラクロスへの夢が現実へと動き始める「解禁日」なのです。
9月1日に何が起きるのか
この日を迎えると、選手のスマートフォンには大学コーチからのメッセージや電話が届き始めます。選手によっては、午前0時を回った瞬間に最初の連絡が来ることもあり、緊張と期待が入り混じる一日となります。しかし、連絡の多寡に一喜一憂する必要はありません。それぞれの大学がリクルーティングのタイミングや評価のプロセスを異にしているため、最も大切なのは、解禁日までにどれだけ準備を整えてきたかです。
全米No.1リクルート、Millon選手の実例
このリクルーティング解禁日を象徴する例として紹介したいのが、全米No.1リクルートと称されたMillon選手の体験です。彼のストーリーは、YouTubeに投稿された『HOW The #1 Recruit In The Nation Made His Commitment!!』という動画で紹介されています。Millon選手は、華やかなオファーの裏で冷静に自分の進路を見つめ、数々の名門校の中から自らの意思で決断を下します。彼の兄も名門・バージニア大学でラクロスをプレーしており、まさに全米が注目する一家です。
動画の中でMillon選手の9月1日に、日付が変わるやいなや、複数の大学コーチから電話が鳴りはじめ、次々とリクルートの意志を伝える様子が伝わってきます。さらに驚くのは、その6時間後、朝の7時には自宅の玄関のチャイムが鳴り響き、なんと大学コーチたちが自ら足を運び、玄関先に立って熱意を伝えてきたというのです。解禁初日にこれほどの動きがあるというのは、米国ラクロス界のリクルーティングがどれほど競争的で真剣なものであるかを物語っています。
試合中に見せるリクルートの本質:Kyle Lehman選手
もう一つ、リクルーティングのリアルを感じることができる動画『I let the #1 lacrosse recruit in the country mic up 😳(Kyle Lehman)』では、まったく異なるバックグラウンドを持つリクルート選手の姿が描かれています。Millon選手のように、数々の栄光で飾られた名門校や全国区のクラブに所属し、両親もラクロス界のレジェンドという“華やかなラクロス一家”とは対照的に、Lehman選手は、ラクロスがそれほど盛んではないニューハンプシャー州の公立高校、そして地方の小規模なクラブチームで腕を磨いてきました。お父さんはその高校で教員を務めており、決して「ラクロス家系」でも「注目校の選手」でもありません。
動画の中でも、彼が名門校と対峙した際に少し臆したような態度を見せる場面があり、Millon選手とは異なる素朴な一面が印象的です。しかし、それでもなお、Lehman選手は全国のショーケースで着実に実力を証明し、最終的には『Inside Lacrosse』誌で全米ランキング5位に選ばれるまでに成長しました。プレーの中で見せる落ち着いた判断力、冷静なコミュニケーション、そして仲間を生かす視野の広さが、彼の大きな武器となっています。
この動画では、Lehman選手が日々の地道な練習や高校の試合でコツコツと積み上げてきた信頼、そしてプレーそのものの“質”が、大学コーチの心をどのように動かしたのかがよく伝わってきます。実際、9月1日の朝7時半にはメリーランド大学、9時にデューク、午後1時にはラットガーズ大学のコーチが彼を自宅まで訪ねてきます。ラットガーズのコーチはその場で3000万円分の奨学金を保証。その後さらに交渉が進んで上乗せ金もオファーします。最終的には3つの大学を訪問し、9月16日にデューク大学に進学することを決めます。
夢を「見る」から「つかむ」へ
9月1日は、夢を描くだけの日ではありません。これまで積み重ねてきた努力が試され、自らの意志で未来を切り開く、特別な一日です。どんな選手にも、自分らしいリクルーティングの物語が始まることを願っています。