近年、日本にアメリカのプロラクロスリーグ「PLL(Premier Lacrosse League)」の選手が来日する機会が増えています。イベントやクリニックを通じて、トップレベルの選手のプレーや指導を日本の大学生が直接受けられるようになり、注目が集まっています。

PLLの試合では、スピード感のある展開や1対1のドッジ、ピックプレー、2ポイントシュートなど、個人技を活かした攻撃が多く見られます。プレーの自由度が高く、試合の流れも速いため、観戦する側にもわかりやすく迫力のある内容になっています。

一方、同じアメリカのラクロスでも、NCAA(全米大学体育協会)に所属する大学ラクロスの試合では、やや異なるスタイルが見られます。大学チームは、戦術やフォーメーションに基づいて組織的に動くことが求められます。選手はそれぞれの役割を理解し、パスやオフボールの動きを活用して、チーム全体で得点機会をつくることが重視されます。

このように、PLLとNCAAではプレースタイルに明確な違いがありますが、その背景にはリーグの目的や設計思想の違いがあります。

PLLはテレビ放送と商業性を意識して作られたリーグ

PLLは、元プロ選手のPaul Rabilとその兄が設立したプロラクロスリーグで、ラクロスの競技としての魅力をより多くの人に届けることを目的としています。そのため、テレビ中継に適した試合設計や、SNS展開などを含めたメディア戦略が重視されています。

Paul Rabilは、リーグ創設にあたって、ESPNと密接に連携しながら、視聴者が楽しみやすいラクロスを作るための工夫を導入しました。具体的には以下のような点が挙げられます。

  • ショットクロックの短縮(32秒)により、攻撃が速く展開される

  • 2ポイントシュートの導入で、逆転の可能性が高まり試合が盛り上がる

  • フィールドサイズの縮小により、テレビ画面内でより多くのプレーを映せる

  • 中継時のマイク付き解説・リアルタイム統計表示で初心者にもわかりやすい演出

  • SNSでのハイライト展開や選手個人のブランディング支援

これらの設計は、選手のパフォーマンスを引き出すと同時に、観客や視聴者にとって見ごたえのある試合づくりを目的としています。

PLLの選手は全員、NCAAの出身者である

現在PLLで活躍している多くの選手は、NCAAで実績を積んだスター選手たちです。彼らは大学で数年間、戦術的なチームオフェンスやフォーメーション理解を身につけたうえで、プロに進んでいます。

  • Tom Schreiber(Princeton大学):戦術理解と視野の広さに定評あり

  • Matt Rambo(Maryland大学):2017年全米優勝、Tewaaraton Award受賞

  • Trevor Baptiste(Denver大学):NCAAフェイスオフ成功率歴代トップクラス

  • Michael Sowers(Princeton→Duke):通算400ポイント超の得点力

彼らの自由で即興的に見えるプレーは、実はNCAA時代の戦術的な基礎に支えられています。即興性は土台があってこそ機能するものであり、決して感覚だけでプレーしているわけではありません。

大学生には大学生に合ったプレースタイルがある

一方でNCAAラクロスでは、練習時間や環境に制限があるなかで、まずは組織的にプレーする力を身につけることが重要です。そこでは、以下のようなプレーの土台を整えることが求められます。

  • チームとして機能するためのフォーメーションの理解

  • スペースを作る・使うためのボールの動きとオフボールの連携

  • 誰が仕掛け、誰が引きつけ、誰が打つかといった戦術的判断

こうした基礎があるからこそ、個人の持ち味や創造性が試合の中で活きてきます。PLLで見られるようなプレーも、チームプレーの上に成り立っていることを理解し、自分に合った段階で身につけていくことが大切です。

まとめ

PLLとNCAAでは、リーグの設計目的や試合の見せ方が異なるため、プレースタイルにも大きな違いがあります。
PLLは、テレビやSNSを意識して作られたプロリーグであり、スピード感や個人技を活かすためのルールや演出が整えられています。一方、NCAAは教育の一環としてのアマチュア競技であり、戦術や組織的なプレーが中心です。大学生プレーヤーは、まずNCAA的な戦術理解とチーム力を土台にし、そのうえで個人技や即興性を伸ばしていくことが、将来的なレベルアップにつながります。プロのプレーに憧れながらも、自分の立ち位置と環境に合った成長のステップを大切にすることが、長期的な上達への近道です。