1950~51年録音のズート・シムス初期
の傑作で、彼の作品群の中でも大好きな
アルバム。
どこが好きかと言えば、温かくふくよかな
ドライブ感が特徴と言われるズートとは一味
違った、レスター・ヤングにそっくりの、
知的でクールなサウンドが聴ける点。
レスターに影響を受け、触発されたモダン
ジャズの巨人には、スタン・ゲッツ、ワーデル・
グレイ、アレン・イーガー、ビル・パーキンス、
リッチー・カミューカなど、数上げればきりないが、
いずれのプレイヤーも、特にその初期において、
レスターのフレージング、緩急、「間」などの
影響が強く感じられる。
異論もあるところだが、私はパーカーの
サウンドもレスターの影響を強く受けていると
思う。事実、彼はレスターのレコードを
早回ししてアドリブの練習をしていた。
レスターの全盛期を思わせる、溌剌とした
アドリブを交えて、「ダンシング・イン・ザ・ダーク」
「イースト・オブ・ザ・サン」などを始めとした
スタンダードを、クールかつ軽快に吹くズートの、
新たな魅力をこのアルバムで発見する。