ライオンと女の子 | 僕が心臓のネジを巻く時

僕が心臓のネジを巻く時

出来れば僕が動かなくなった後でも、この世界が平和であって欲しい。大切な人達が幸せであってほしい。

どこにでもいる

普通の犬として生まれた僕は

偶然、見かけたライオンに憧れて

なれるはずもないのに

ライオンになろうと思った


その姿はとっても恰好よくて

たてがみがとても凛々しくて

強そうで勇ましくて

堂々と歩く姿を見て

僕もライオンになろうと思った



そして旅に出た

その旅先で出会った女の子


その女の子は

とてもわがままで

だだをこねては僕を困らせて

さみしがり屋のくせに強がりで

泣き虫のくせに頑固で

僕のいうことをいつも聞いてくれない

でも僕のしっぽをしっかり握るものだから

あまりにもぎゅっと握るものだから

なぜだか僕も

彼女を守りたいと思うんだ


彼女が大事にしていた人形に

僕が名前を付けてあげると

彼女は喜んで

その人形に語りかけた

そしてその人形を

大切にする彼女を見た僕は

なぜだか彼女を守りたいと思ってしまった

ライオンでもない

ただの犬が

そんな夢物語を考えてしまった


僕の背中ですやすやと眠る彼女が

どうして僕を選んだのか

どうして僕についてきたのか

わからないけれど

僕は彼女の幸せそうな寝顔を見て

とても幸せな気持ちになった


だから僕はこの女の子を

ここに置いていこうと思った

ライオンになりたいと思う僕が

この先、この子を守れるだろうか

ただの犬でしかない僕が

自分の身を守るのが精一杯の僕が

この先、この子を守れるだろうか


きっと彼女は起きた時に

僕がいないと必死に探すだろう

そして僕がいないことを知ると

いっぱい泣くだろう


それでもこの先のことを考えると

その方がいいだろう

だから、そっと彼女をここに置いていこう


そうして僕は彼女を地面にそっと置いて

小さく吠えて別れの挨拶をした


すると彼女は眠りながら

僕のしっぽを掴んだんだ

あまりにもぎゅっと握るものだから

僕はそこから動けなくて

仕方がないから

僕はその晩、ずっと夜空を見て考えた


ライオンでもない僕が

この子をちゃんと守れるだろうか

この先、しっかりと

この子の笑顔を守れるだろうか

僕は昔、見たライオンの姿を

思い浮かべて眠りについた




あれから僕は

やっぱりライオンにはなれなくて

まだ、普通の犬のままだけど

彼女が僕の為に作ってくれた

草でできたたてがみが

僕をほんの少しだけ強くした