マリオのスマホ出稼ぎ 勝算は???

"3月17日、任天堂の岩田聡社長とディー・エヌ・エー(DeNA)の守安功社長兼CEOが、並んで共同記者会見の場に姿をみせた。両社が明らかにしたのは、資本・業務提携を結び、スマートデバイス(スマートフォン、スマートタブレット)向けに任天堂のゲームキャラクターを起用したアプリを共同開発・運営することだった。



また、任天堂ユーザー向けの新メンバーズサービスを共同開発し、複数のゲーム機、スマートデバイスを横断的に結びつける任天堂ゲームファン向けにサービスも準備するという。中・長期的な事業拡大ビジョンを共有し、継続的な企業価値拡大を狙って資本提携(株式の持ち合い)も同時に実施する。



■ マリオがスマホの世界に出稼ぎ出張



 この提携はひとことで言えば、「任天堂のマリオがスマホの世界に出稼ぎ出張するようなもの」に見える。



 1月、任天堂は2015年3月期の営業利益予想を400億円から200億円に下方修正。前年度の232億円の赤字に比べれば大幅な改善だが、急速に円高が進んだ中での営業利益半減は、任天堂が置かれている厳しい立ち位置を顕している。



 岩田社長が「射幸心をあおって課金をうながす手法では、顧客との長期的な関係を結ぶことはできない」と発言してきたのは2013年のこと。スマートフォン向けに任天堂の知的財産(IP)を提供する可能性について、この日の会見まで前向きな発言はなかった。



 しかし、カジュアルにゲームを楽しむ層がスマートフォンへと移住しているだけでなく、子ども達もスマートフォンを持つ時代になりつつある。さらには没入型の本格的なゲームを楽しみたいユーザーは、より高性能なソニーやマイクロソフトのゲーム機へと流出しており、任天堂はの市場は顧客層の上下両面から挟み撃ちされている。



 任天堂のコアなユーザー層……子ども達や子どもに安心してゲームを遊ばせたい親たちとの信頼関係は未だに根強い任天堂だが、彼らのエコシステムを支えてきた一部が離脱し始めたことで、プラットフォーム全体を支えきれなくなっているように見える。



■ 「これまでの迷いを払しょくできた」



 スマートフォン向けゲームの開発に対して否定的だった任天堂は、なぜ今回DeNAとの提携を決めたのだろうか。



 もちろん、本業の不調が大きくこたえたことは間違いないだろう。しかし岩田社長は、これまでの迷いを払拭できたことが、変心のもっとも大きな理由だと話した。スマートフォンとゲーム機で遊ばれるゲーム、エンターテインメントは異質なものであり、市場としてきっちり切り分けることが可能という結論を得たことが、今回の提携に繋がったというのだ。



 「ゲームIP、キャラクターたちは、任天堂が持つもっとも大きな価値だ。そんな任天堂IPを使ったゲームの品質が不足していると、結果、任天堂IPに対する不満として顧客の心に残り、我々の財産価値を下げることになってしまう。故にライセンスには慎重になってきた。射幸心を煽る”ガチャ”などの仕組みも、任天堂自身が積極的に関わりることで”ビジネスとして行き過ぎ”と疑われるようなアプリになることを防ぐことができる」(岩田氏)。スマートフォン向けに任天堂IPを使ったゲームを展開することに躊躇がなくなったことを強調していた。



 スマートフォンの販売台数が、ゲーム機に比べ桁違いに多いことは今さら言うまでもない。スマートフォン向けに任天堂IPを展開する異議について、岩田氏も「消費者との接点を増やすこと」が第一義にあると話した。これまで任天堂は自社開発・販売するゲーム機だけにしか、自社開発コンテンツを展開していなかったが、それだけでは認知を拡げることはできない。



 そこでスマートフォン向けにも任天堂IPをライセンスし、消費者と任天堂の人気キャラクターが接する点を増やすことで価値を高め、本業であるゲーム専用機へと顧客を巻き取っていく意図があると考えられる。




前述した”任天堂ユーザー向けの新メンバーズサービス”の構築は、モバゲーで急成長したDeNAのノウハウを組み込んだ形で行う。ここでしっかりとファンと任天堂を結びつけるコミュニティを構築できるかどうかが、今回の提携の行方を決めると言っていいだろう。



 このサービスこそが、スマートフォン、タブレットを使う任天堂IPのファンを任天堂製ハードウェアを用いたゲームプラットフォームに送客する核となるためである。



■ DeNAはベストなパートナーなのか



 では任天堂にとってDeNAはベストなパートナーなのだろうか。



 上記のようなモバイル上のファンコミュニティを中心とした送客の仕組みは、まさにDeNAが成長してきたビジネスモデルそのものだ。また、DeNAはこれまで任天堂が得意としてきた売り切り型のゲームコンテンツとは異なるノウハウを持っている。



 モバイルゲームは常にネットワークに接続され、コンテンツや機能が最新へとアップデートされる。知人とのコミュニケーション(ソーシャル機能)も重要だが、コンテンツを常にアップデートしながら、やる気を喚起していくサービス運営が重要になる。



 岩田社長もDeNAに対して期待するポイントとして、億単位のソーシャルコミュニティへの成長を狙う際、膨大なトラフィック、負荷を捌けるサーバ側のノウハウやイベント運営などを挙げた。



 さらに、コミュニティ運営を発展させると同時に、ニンテンドー3DSやWii Uとは異なる、まったく新しゲーム専用機プラットフォーム(コード名:NX)を開発、来年発表し、スマートフォン/タブレットとゲーム専用機の間をつなぐサービスとして、新メンバーズサイトを運営。相乗効果を狙う。コミュニティへの参加は、3DS、Wii U、NX、スマートフォン、パソコン、タブレットのすべてから行えるようにする。



 両社の分業体制についても、ユーザーが実際に手に触れ、感じる部分……すなわち、アプリ開発部分は任天堂主体で行い、サーバ側の開発、運営などはDeNAが担当する。そうした意味では、両社得意分野に分かれてガッチリとタッグを組む体制となっている。



■ 夢は大きいが、リスクも大きい



 一方で、この戦略には大きなリスクも想定される。アプリやコンテンツの品質管理は任天堂自身もかかわるだろう。ゲーム自身もスマートデバイス向けアプリと、ゲーム専用機タイトルは、明確に切り分けて設計すると話している。誰もが知る任天堂のキャラクターならば、アップルやグーグルからの推薦を受けて、アプリケーションのストアで強力なプッシュを受けられる可能性が高い。



 任天堂IPならば、世界ヒットにつながるだけの耳目を集めることは容易だろう。しかしながら、目論見通りに任天堂の本業である”ゲーム専用機”のプラットフォームへと橋渡しできるかは、今回の発表だけではわからない。



 たとえば、任天堂がスマートデバイスでは低い課金率に抑え、ゲーム専用機向けに送客する仕組みを上手につくればつくるほど、アップルやグーグルの目からは”プラットフォームへのタダ乗り”に見えるかもしれない。スマホアプリの流通は、プラットフォームの胸先三寸でルールが変更され、それに対して文句をいうこともできない""怖い世界""だ。



 また、数億人クラスのコミュニティに成長させるモバイルアプリとなれば、サーバ側の維持管理コストが問題になる可能性がある。コミュニティ規模が大きくなるほど、アプリへの課金率は明確に下がる傾向にあり、元より射幸心を煽って課金させるビジネスモデルを潔しとしないと公言している任天堂が、どこまで課金パフォーマンスを引き出せるかも未知数だ。



 こうしたことを勘案した上で、それでも「ゲーム専用機プラットフォームにはまだ多くの可能性がある」と岩田社長が語る背景には、まったく新しいゲームプラットフォームになると話す”NX”の存在が大きいのではないか。スマートデバイスのソーシャルとゲーム専用機のソーシャルをつなぐ存在として”NX”があるのだとすれば、今回の提携は、より高い成功の可能性が見えてくるだろう。

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参考
http://rakukasegu.webcrow.jp/service.html