5月2日(木)
西山のばあちゃんちにお世話になる前、
今の家に引っ越す以前の家に暮らしていた時期のことです。
母が私を産んだ後も仕事を続けるために、
近所に住むSさんという主婦の方にお願いして、日中私を預かってもらっていました。
期間としては、私が0歳から3歳くらいまで、
その間妹が生まれ、妹は1歳過ぎくらいまでをお世話になったようでした。
当然ながらその時の記憶はほとんどないのですが、
当時、Sさんちには、小学生の男の子「カツスケ兄ちゃん」と
女の子「N子姉ちゃん」がいて「otamiちゃんおいで~。」と
優しく手招きされて一緒に遊んだ記憶がぼんやりとあります。
亀がいて、その亀の名前が「かめライダー」ってのはしかと覚えてる!(笑)
そしておじいちゃんも一緒に住んでいて、そのおじちゃんと一緒に
夕方になるとお風呂に入っていたことを覚えています。
今の実家に引っ越して保育園に通うようになって以降、
Sさんちに行くことはなく、そのまま私は大人になりました。
私が地元に戻り就職をして数年が経った頃、
母から、カツスケ兄ちゃんが歯科医院を開業したと聞きました。
母「あの子は小さい頃から手先の器用な子やったけん、よか歯医者さんやろ~。
あんた虫歯があるなら、診てもらいに行ってきんしゃい!」
私「えぇぇ~・・・だって私の事とかもうわからんちゃないと~?」
母「わからんちゃよかやんね。かっちゃんに診てもらいんしゃい!」
しばらく聞き流したままにしていた私。
ある日、奥歯が眠れないほど痛み出し、もうこれは行くしかないなと、
全く知らない歯医者さんに行くよりはいいかと思い直して、
カツスケ兄ちゃんの歯科医院に予約を入れ、ドキドキしながら行きました。
初診アンケートに記入をしてしばらくして治療室へ。
治療台を倒され横になったところへ、カツスケ兄ちゃんがやってきました。
「お待たせしました~。えっと・・・。」と言いながら、カルテに目を通すと、
「ん?」と言って私の顔を見ました。おそらく名前を見てだったんでしょう。
もう一度カルテを見直しながら、「えっ!!!もしかして、otamiちゃん???」
「・・・あ、はい・・・。」と私、ドキドキしながら返事をしました。
だって、カツスケ兄ちゃんの顔さえもう覚えていませんでしたから。
3歳のあの時から20数年ぶりの再会、どう挨拶しようかも戸惑いました。
すると、カツスケ兄ちゃん、嬉しそうにそばにいる助手さんに向かって
「この子、オレの妹。」と言いました。
「えぇーーーっ、そうなんですか~~?」と助手さん。
「そ、いもーと。」とカツスケ兄ちゃん、
そう言いながらニッコリ、私の顔を覗きこみました。
「そうやぁ、otamiちゃんかぁ。おおきゅうなったねぇ、当たり前か。(笑)」
「虫歯の痛かったと?どれどれ、じゃあ診てみましょうかね~。」
と、あの時と変わらない優しい雰囲気で治療をはじめてくれたのでした。
カツスケ兄ちゃんが、私を自分の妹だと言って優しく微笑む姿を見て、
私は、Sさんちのご家族から自分がどんなに可愛がってもらっていたかを
その時はじめてほんとうに知ったような気持ちになって・・・
治療台の上で「はい、口開けてね~」とカツスケ兄ちゃんに言われる度に、
鼻のあたりがツンツンして泣きそうで、むせないように堪えるのが大変だったのでした。
私が結婚して数年が経ったころだったでしょうか、
母から、カツスケ兄ちゃんが病気で亡くなり、歯科医院も閉院になったと聞きました。
今は、治してもらった未だ丈夫にある奥歯を歯磨きするたびに、
カツスケ兄ちゃんのちょっとタレ目の笑顔を思い出しています。
カツスケ兄ちゃん、今日も歯磨きちゃんとしとるよ~。
ありがとう・・・ありがとう・・・