project runway |  orient point 

project runway

モエとのことは、もう皆には話さないことにした。


他人には話さない、というのは、何か他の媒体を通してその気持ちを表現しなければならない。消去法で結局はここに書くか、夜空に向かって叫ぶかのどっちかだ。


今日授業が終わってから一旦部屋に帰って、色々な事務的な手続きをする為にもう一度ハータ・ホールに出かけた。寮の前の丘を下りながらモエを見かけて手を振った。少しばかり立ち話をして、別れ際に「We should hang out sometime」と彼女が言った。いいよ、と僕は言うとフェイスブックは使ってるのと彼女が聞いた。
「使ってない」
「じゃあ、携帯は?」
「うん、持ってる。ちょっと待って」と携帯を取り出しながら言った。彼女に僕の携帯番号を教えるつもりだったが、表示できる前に彼女が自分の番号を教え始めた。それで結構びっくりした。彼女はやる気満々か、矢鱈親切か、或いはただ純粋だけか、今の時点ではちょっと分からないが。

「電話してね」


10時ごろ煙草が吸いたくて寮を出かけたときも彼女がそこに立っていた。今でも泣き出しそうな顔をしてクリスと話していた。両親が日本からイスラエルに引越しをすると決めて、彼女も一緒に来ないと援助を中断すると言う。彼女は困り果てていて、どうすればいいのか分からない。僕とクリスは色々とアドバイスをしたが、考えるのに疲れると、お喋りをしたり、ふざけたりして、1時間後彼女はちょっと元気になっていた。


彼女が自分の寮に帰ってから、僕は寮の前の階段に座って、煙草を吸いながら必死で考えを巡らした。


僕はモエが好きなのか?ちゃんと愛せるのか?彼女は僕が好むタイプの女の子とは随分違う。顔立ちはいいが、小太りで背が低い。それでもモリコに対して感じたような、燃えるような強烈な性的欲望は抱けるのか?或いはあれは例え誰に対してであっても二度と感じないかもしれないが、性格はどうか?好き、と言いたいところだがこの間初めて会ったばかりだし、性格がどうのこうの言うことができない。こんな曖昧なことしか言えないまま、彼女を求めているかどうかさえ分からないまま、彼女を求め続けてもいいのか?よく分からない。


寮の外で、彼女は僕の頭を撫でて、「髪の毛が凄く柔らかい」と面白がった。彼女が知るはずもないことだが、モリコも昔全く同じことをしてくれた。まだ付き合いを始める前の頃、彼女は何気なく僕の頭を撫でた。あれはドキドキしたわ、なんだか君に近づきたくてついにやってしまったの、と彼女はずっと後で言った。


このままだと、僕とモエも、付き合い始めるのか?僕はそれが欲しいのか?わからない。自分がモエにアドバイスしたことが頭に浮かぶ。


「眠ったら大抵のことは治る。今は考えるのをやめて、早く寝たほうがいい」