frog meets lake |  orient point 

frog meets lake

国際法律学と古文と日英翻訳論とで、朝の10時から夕方の5時半までは授業で忙しかった。それが終わったら今度は皆とUMASSのキャンパスと隣接している小さな町、アムハーストに出かけて、留学前の頃の日本語の先生に会って食事をした。本当のことを言うとあまり行きたくはなかったけど、行かないで悪印象を与えるよりは一応行って、できるだけ先生と話すことを避けながら我慢した方がいいと思った。その策は全体的に見て成功だったと思う。確かに行ったし、確かにあまり話さなかったから。


日本語の先生方とあまり話したくない、というのは先生方に対して腹を立てているとか憎悪を覚えているとかそういうわけじゃなくて、ただ日本人が嫌いなだけなんだ。特に先生が嫌いだというわけじゃなくて、日本人を皆、平等に憎んでいる。何故そんなふうに日本人が嫌いになってしまったのか、よく自問するのだが、いまだに決定的な結論に至っていない。あるいは僕は自分の期待に添えなかった国を、自分の夢を蹂躙した人種が許せない、というのは今の僕の有力説なんだけど。ただ知っているのは、僕の日本人や日本国に対する憎悪は恐らく、日本とは殆ど無関係に自分の心の中で生まれ、これからも募っていくのだろうということだけだ。僕はそれでも、日本語とその勉強が好きなんだ。ただ僕にとってはその日本語を使う人種は耐え難い獣たちである。


だって本当の人間じゃない。ただ人間のように振舞うのが矢鱈上手なだけじゃないか。いつも尤もらしいことを、適当なことばかり言っている、でも本当は何も考えていない。友達にそう言ったら彼も同意した。「魂がないんだよね」


そういうことだ。


夕飯の後、コーヒーを買いに行って寮の前にモエと擦れ違った。モエはいつもクリスと一緒に煙草を吸いながらお喋りをする。僕もその隣に腰を下ろして煙草をふかした。


一度だけ、たったの一度だけでいいから、モエと二人きりで話をしたい。何について話せばいいか分からないけれど、とにかくもっと親しい雰囲気で彼女と知り合う機会が欲しい。クリスはゲイだし、彼のことは好きだし、別に彼が邪魔なわけじゃないけど、やはりモエとはもっと話がしたい。


煙草を吸ってから部屋に帰って、翻訳論の課題、三浦哲郎の「春は夜汽車の窓から」の翻訳をした。特に面白い話じゃないけど、訳しているうちに翻訳論に対して色々と考えさせてくれた。


寝る前にマイケルと散歩をした。マイケルとはあまり散歩をする機会がないけれど、本当にいい奴で楽しいんだよな。今学期誰か好きな人はいるかって訊いてみたら、うん、何人かいるけどもうコリーには話したから、金曜日飲んでいたときにね、だから二度と言わない、聞きたければ僕を酔わせることだねって彼が言った。
「フーン」
「君は?誰か好きな人いるの?」
「うーん、いるかもしんない。一人が」モエのことだった。「それがまた凄い励ましになるな。なんか、いい顔を見せるために精一杯努力しなくちゃって感じ。それってちょっとむなしいけどな」