仲道郁代 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲演奏会第Ⅳ期 第7回 〈田園~のどやかなベートーヴェン、実り〉

【オール・ベートーヴェン・プログラム】
ソナタ第2番 イ長調 op.2-2
ソナタ第10番 ト長調 op.14-2
ソナタ第13番 変ホ長調 op.27-1
ソナタ第15番 ニ長調 op.28「田園」
ソナタ第17番 ニ短調 op.31-2「テンペスト」

<アンコール曲>

「エリーゼのために」

 

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を演奏するシリーズ(全8回)の第7回。

私の記憶では、おそらく第1回を聴き逃したほかは聴いているのだが、第4回に開催されたプレ・コンサート(ブロードウッド&サンズ)を聴き逃したのが悔やまれる。

これは、ベートーヴェン最もお気に入りのピアノだったのである。

さて、今回もプレ・コンサートが開催され、1795年製の複製版「ワルター」による演奏と解説がなされた。



「ワルター」は、18世紀末ウィーンを代表するピアノ・メーカーであり、ベートーヴェンも「欲しい」と思っていたが、所有は叶わなかったという代物である。

会場には複製を行った太田垣 至さんが登場し、このピアノについて、「5オクターヴ(61~63鍵)あり、モーツァルト迄の曲は全て弾ける。すなわち一つの完成形を示している。」というコメントをなさった。

ということは、この後に、モダン・ピアノの開発に向けた試行錯誤の時代が待っていたのである。

・・・というわけで、その1795年の発表された2番は、師であるハイドンに捧げられた作品の一つで、純粋な古典派の楽想。

10番は「歌う」曲で、「月光」(14番)とセットの13番(1800年)になると「響き」が入る(ペダル使用の指示がある)。

「田園」(15番)は低音部の連続が特徴的だが、これもベートーヴェンが「響き」を求めたからだという。

ハイリゲンシュタットの遺書が書かれた1802年発表の「テンペスト」(17番)になると、ベートーヴェンは「強い情念」を表現する音を求めたようで、1楽章には「ペダルを踏みっぱなしにせよ!」という指示が付されたパッセージが出てくる。

ちなみに、この曲に「テンペスト」という別名をベートーヴェンが与えたかどうかについては、消極に解する研究者が多いが、その根拠としては、弟子であるシントラーの「虚言癖」が挙げられる。

これに対し、仲道さんは従前から積極説の立場に立っており、その根拠として、「ハイリゲンシュタットの遺書」に「テンペスト」と同じく”弟を許す”旨の記述がある点を挙げていた。

さらに今回、仲道さんは、プロスぺローの島に置かれていた「エオリアン・ハープ」の響きが、1楽章と3楽章に登場する点を挙げた。

なるほど、これは説得力がある。

おそらく、ウソつきもたまには本当のことを言うということなのだろう。