創作オカシアター スクリーン3 ~爆ぜた真実~
このシアターで売っているポップコーン好きなんです。
とても軽い口当たりで、
さまざまな味の種類があって…
少し不思議なのは、
その味の種類を、客側で選べないこと。
ポップコーンを作ってくれているおじさんが味を選んでくれるのです。
今日はどんなテイストなのかとても楽しみなんです!
「おじさん、ポップコーンください!」
「やぁ!お嬢さん!また来たね。すぐ、用意するからね!」
そう言って、
笑顔でお客さんを待っていたおじさんは、
急に慌ただしく動き出しました。
黄色い、派手なTシャツにあずき色のエプロンをつけて、
真剣なまなざしで、ポップコーン機を覗きこむおじさん。
四角い、透明なアクリル板で囲まれた機械の中、
箱の天井部分から銀色の鍋がぶら下がっていて、
そこからポップコーンが溢れ出てきます。
「ハイ!お待ちどうさま!」
そう言って私の目の前に突き出されたポップコーン。
何故か今日はやや茶色い色でした…?
「おじさん!焦げてるの?それともキャラメルか何かの味?」
私がそう告げるとおじさんはふと、顔を曇らせこう言いました…
「お嬢ちゃん…最近…この一週間くらいに、誰かに意地悪しなかったかい?」
「え!?」突然のことに私は面くらいましたが、
そういえば思い出したことがあって、
「そういえば三日くらい前に、
混んだ電車にお婆ちゃんが乗ってきたんだけど、
寝たふりして、席を譲らなかったわ…」
「ははぁ…それだね…お嬢ちゃん…」
おじさんはそう言って、お腹のあたりをしきりに擦った。
え?!
どういうこと?
不思議に思っておじさんに尋ねようとしたその時、
突然背後から甲高い声が降ってきました。
「ヤダ!あんた何してんの?こんなところで?」
驚いて振り返ると、そこにはクラスのイジメっ子である、ナツメさんが立っていました。
今日もとりまきを引き連れて…
「あんたみたいのも、映画なんて観るんだ?」
そう言い、ナツメさんは大声で笑いだしました。
とりまき達も連られて笑いだします。
「なんか、生意気ね!」
ナツメさんはそう言って、私の持っていたポップコーンを一握り掴み取りました。
するとどうでしょう、
今まで薄い茶色だったポップコーンは、みるみるうちに真っ黒に変わったのです。
「きゃっ!何?!これ?!」
そう叫んだナツメさんは、握っていたポップコーンを私に向けて投げつけました。
「ふざけないで!」
カンカンに怒ったナツメさんは、足早にその場を立ち去っていきました。
私の足元には、さっきよりもさらに深く黒に染まったポップコーンが散らばっています。
すると、
「あの子は相当なモンだな…」
と、ポツリ呟いたおじさんが、またお腹を擦っています。
お腹…
は…はら…!?
まさか!?
私は呆然としながらも、
足元に散らばる真っ黒なポップコーンの、
その黒い色が、ナツメさんの腹の色とダブったのでした…。