*シルバーシート

ロンドンに通信員として赴任していた志村 喬は羽田空港へ行き、当時の生活を懐かしみ、昔話を誰彼となく話したがる。

そんな彼が空港で亡くなったことから、水谷と桃井は彼の住んでいた老人ホームへ行ってみると、笠 智衆・加藤 嘉・藤原鎌足・殿山泰司といった同居人に歓迎される。

そんな彼らが突然、都電の車庫で電車ジャックをするがなかなか理由を話したがらない。

鶴田が駆け付け説得し、ようやく反乱の理由を聞かされるが、老人ホームに入るにあたり、現役時代のことは綺麗に忘れて単なる男と女として入居するよう指示されているという。

彼等にとって現役時代の業績は忘れがたいもので、それを誇りに生きてきたのに、それを忘れ去ることは無理だと訴える。

 

*墓場の島

題名の曲が大ヒットし一躍スターになった根津甚八。

彼は鳥取のスナックで歌っていたところを高松英郎に見いだされスターになったのだが、歌のイメージとは違うので人前で笑顔を見せるなとか色々と高松から指示される。

そんな彼は自分を取り戻したく、高松には内緒でステージで引退宣言をしようと考え、心の通い合った水谷にそれを漏らしてしまう。

水谷はお喋りなので鶴田に喋ってしまい、高松がかつての特攻隊仲間だったと知った鶴田は高松を助けたくて説得にあたる。

「普通の女の子に戻りたい」と云って後に引退したキャンディーズが同じステージに出てくるのは暗示的で、当時、脚本家の山田太一は彼の考え通りに引退させるシナリオを書いたところ、スタッフから猛反対されて現役を続けるよう書き直したとリーフレットに吐露しているが、今になってキャンディーズのことを考えると書き直すべきではなかったと告白しています。

 

*別離

水谷は桃井に結婚を申し込むが断られてしまい、彼は鶴田にとりなすよう頼むのだが、彼女は重い病気に侵されていることを鶴田に告げ抱いて欲しいとせがむ。

鶴田は桃井の看病を精一杯するうちに彼女の思いに打たれるが歳の差を考え躊躇する。

社長の池辺 良(軍隊時代の上官)にほだされその気になったところへ彼女の危篤の報を受け病院へ。

元気になったら一緒になろうと彼女に告げるが、その直後に桃井は帰らぬ人となる。

鶴田としては珍しく恋愛問題に巻き込まれるストーリーですが、根底にあるのは人を愛するということは何なのか、という課題。

重いテーマだけに鶴田の重厚な演技が光ります。

 

これら第3部の3作品を見終わってみると、今までの脚本とは一線を画するシナリオの筆のタッチが変わっていることに気付かされました。

今までは何を云いたいのかは判っても、何かもどかしさを感じたものですが、それがストレートにセリフに行間に表れています。

スペシャル版を除いて次は最終章たる第4部。

最後の「車輪の一歩」を含む第4部です。