2005年07月12日 00時00分

トヨタ自動車が石油メジャーの英BPと共同研究に取り組むための交渉に入ったことが、日経ビジネスの取材で明らかになった。共同研究の対象は、植物を原料にした代替燃料、いわゆるバイオマス燃料についてだ。


バイオマス燃料は、サトウキビやトウモロコシ、木材などを原料にして作るエタノールやディーゼル燃料などを指す。ガソリンに添加したり、軽油の代わりに使うと、その分石油資源の使用量を減らし、さらに二酸化炭素の発生量を削減できる。そのため自動車の代替燃料として注目を集めている。


一方、代替燃料には、アルミやゴム製の部品などに影響が出たり、排ガスへの追加的な対応などが必要になるものもある。トヨタは、2004年7月に英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルと天然ガスからの液体燃料に関する共同事業に着手したばかりで、欧州の自動車メーカーに比べれば出遅れている。


今回はBPと組んで、バイオマス燃料の経済性や車両への影響、原料などについても研究を進めていきたい考え。現在テーマの絞り込みに入っているという。BPは既に欧州勢と合弁でバイオマス燃料の精油所を運営し、事業化に取り組んでいる。


ハイブリッドだけでは不足


これまで、トヨタの環境対策では「プリウス」を代表とするハイブリッド車が最前線に立ってきた。


ところが、ハイブリッド車は2種類の駆動装置やバッテリーが必要となるので、車両本体の価格が高くなる。半面、従来の燃料に添加して使用する代替燃料は、既存のエンジンを応用でき、車両のコストアップは限定的だ。


バイオマス燃料は、世界的にも商用化へ向けての動きが本格化している。ブラジルではサトウキビからエタノールを作っており、ガソリンに混ぜているほか、海外にも輸出している。米国でもバイオマス燃料を添加したガソリンが普及しており、欧州連合(EU)では2010年までに域内で消費される燃料の5.75%をバイオ由来のものに置き換えるという目標を発表済み。国内でも、国土交通省が2006年3月末をめどにバイオマス燃料対応車の開発を進める計画を打ち出している。


この背景には、自動車用エネルギーが転換期を迎えたことがある。


まず、6月末に史上最高値を更新した原油価格は、2002年初めの価格から比べると約3倍の水準で推移している。一方で、石油への需要は活発で、国際エネルギー機関(IEA)の推定では2030年には世界全体での石油の需要は現状の約1.5倍に膨らむ。


自動車会社は燃料の脱石油化を図り、燃料電池の開発を進めてきた。ところが、各社とも航続距離が約400kmで頭打ちとなり、革新的な解決策が見いだせていない。


新燃料の標準化でも主導権


そこで、石油代替燃料を探す取り組みが加速している。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)はシェルと組み、天然ガスや植物などから液体燃料を作る研究を進めている。一方で、VWは同じドイツのダイムラークライスラーなどと、木材から抽出したディーゼル燃料の事業にも取り組んでいる。さらにドイツ政府も、生産コストが石油系燃料の約2倍かかるバイオマス燃料に対し、政府が税金を免除するなど、政策的に後押ししている。


「近い将来、日本でも代替燃料が必要となるのだが、業界内での材料や組成などについての合意づくりは手つかずのまま。様々な燃料が乱立しかねない」とトヨタの関係者は懸念する。今回の共同研究をきっかけに、ハイブリッド以外でも「環境のトヨタ」の名前を世界に広め、新燃料の標準化でも主導権の掌握を狙っているようだ。(伊藤 暢人)