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きょう首脳会談で伝達
 政府は二十五日、自動車や燃料電池発電の燃料として活用できる次世代の非化石エネルギー「バイオマスエタノール」について、主要産出国であるブラジルからの求めに応じて輸入拡大を国内の民間企業に働きかけていく方針を決めた。小泉純一郎首相が二十六日に来日するブラジルのルラ大統領にこうした方針を伝える。輸入拡大による経済関係の強化によって、経済面でもブラジルへの接近を強める中国に対抗するねらいがあるとみられる。
 政府としてもバイオマスエタノールを使う自動車を在ブラジル日本大使館の公用車として試験的に導入する。
 バイオマスエタノールは、サトウキビやトウモロコシなど農作物を発酵、蒸留して作られる燃料。農作物が育つ際に二酸化炭素(CO2)を内部に吸収する。このため、燃料として燃やしてもCO2を新たに排出しなくてすみ、「地球温暖化対策上も有効。(石油などの)化石燃料に代わる有力な選択肢の一つ」(大手シンクタンク)との期待が高い。
 ブラジルは、この燃料を新たな基幹産業と位置づけ、日本への輸出拡大を働きかけてきており、昨年九月に小泉首相がブラジルを訪問した際にルラ大統領が輸入拡大を要請していた。
 政府としてはブラジル側のこうした要請に応えることで、国連安保理改革でともに常任理事国入りを目指す立場から、関係を一層強固にしたい考えだ。
 ロシア、インド、中国とともに「BRICs」と呼ばれるブラジルは高い経済成長が見込まれている。こうした中で、中国は最近二年間でブラジルとの貿易額を二倍に伸ばし、経済面での結びつきを急速に強めており、対インド関係と同様に日中が関係強化を競う構図になっている。
 ブラジルでは原料のサトウキビが豊富な上、価格がガソリンよりも安価なことから大半の自動車でバイオマスエタノールを燃料として活用している。ガソリンに数%から25%程度まで混ぜたものが使われ、中南米諸国や米国にも普及し始めている。
 日本は法定で3%以下の混入が認められているが、窒素酸化物の排出量が多いことなどを理由に、実際には使用されていない。
 資源エネルギー庁によると、自動車用燃料としてバイオマスエタノール燃料が普及すれば、最大で、年間のガソリン消費量約六千万キロリットルの3%に相当する約百八十万キロリットルの需要となる見込み。
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 【非化石エネルギー】植物から作られる薪(まき)や炭、乾燥した家畜糞(ふん)などの燃料のほか、太陽光、風力など再利用が可能なエネルギーのこと。いずれも二酸化炭素(CO2)の発生がないため、石油や天然ガスなどの化石エネルギーを非化石エネルギーに置き換えることで、温室効果ガスのひとつであるCO2排出削減への効果が期待されている。

(産経新聞) - 5月26日2時40分更新