レディージェーンから数ヶ月が経ち、またしても仕事が東京で入った。
よし!
“ゴールデン街“に行ける!
バーテンさんの意味深なあの一言を忘れていなかったオイラは仕事を調整してゴールデン街へ!
そこは新宿の街並みから想像出来ないなんとも雰囲気のあるエリアだった。
乱列に並ぶ酒場は古き良き時代、そこには昭和の匂いがあった。
と、、
来たのはいいが、どの店入ろうか?
まぁ、適当に入ればなんか聞けるからなと一通り歩く。
するとBARとBARの間にうっすら目える狭く怪しげな階段があった。
そこに決めて階段を上がる。
大きな声でマスターらしき人が招いてくれた。
笑顔が素敵な金髪頭にぷっくり腹のマスター。
『いらっしゃい!!適当に座んな!』
そこはテーブル席一つ【5~6人席】とカウンター3席ほどのなんとも狭い空間に、統一感のないデザインのBARだった。
お相撲さんやプロレスラークラスの巨体なら3~4人いたら歩けないほど席の間も狭く、息苦しさを感じたおいらは
『ミスったかな、一杯飲んだら出よう。』
なんて思いながら先に飲んでるサラリーマン二人と相席する。
『お兄ちゃんなに飲む?』
『ビールで』
『はいよ!ところでこの辺の人じゃないね~。仕事かなんかで来られたんで?』
『はい。一杯だけのみたくてね~。』
タイミング的に今、ここに来た経緯を話す流れだったがオイラはなんとなくこの狭さと雰囲気が合わなく、『ここには何もない。』と感じ、マスターとの話を広げず切った。
まぁ、一応来たからには楽しまないと!
リーマンと会話を交わす。
これがまた、まぁ~面白くない。
『電気とか興味あります?』
俺『いや、、』
『電気の工程はあ~でこ~で、』
俺『???ごめんにーちゃん分からんし、他にない?』
『.....。じゃサラリーマンってなんなんですかね?』
俺『‥‥知らん。あんたみたな人をいうんじゃないのかい?』
『うっ‥、うお~!俺をこき使いやがって課長のクソヤロ~』
‥‥‥‥。よし、出よう。
席をたち金を払って出る間際、だめもとでマスターに一応聞いてみた。
『なんだ優作ファンなのかい?』
するとマスターの目が変わった。
『あんたが座ってた席の上にマッチが置いてるだろう?あれは松田優作が俳優業だけで食えてない時代に最後に働いた喫茶店のやつなんだ。もう潰れちゃったけどな、俺の友達が大ファンでよ、その店が潰れると聞いてその店まで行ってマッチが入った箱もらって来てな、俺も一つもらったやつなんだよ!だいぶ昔だよ。飾ってあるマッチすら忘れちまってたな!このへんで良く飲んでたらしい!喧嘩も強くて、その通りの道で暴れた事もあるそうだよ!』
欲しい!!
使ったら無くなるそのはかなさが素敵!!
一応言っとこう。
『下さい!』
マスター『ダメです!』
まぁそりゃそうだ。
でもまた出会ったのは間違いない。
『マスターありがとう!』
階段を降りて次の飲み場所を探そうと歩いていると
『にぃ~ちゃん!!』
ん?さっきのマスターだ。
『ついてきな』
またもや一言。
レディージェーンがタブった。
マスターはさっそうと歩き出した。
着いていくオイラは暗闇にポツリとたつBARの前に連れていかれた。
入り口でマスターに肩を叩かれ、『じゃ~またね!』と言われ置き去りにされる。
これはまた!!
ドキドキ!
ワクワク!
なんなんだこの流れは。
そして、扉を開くとまたしてもとんでもない感動がそこにあった。
続く