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もう30年以上前、、、建築展で、講演会を行うことになり、当時なぜか、よく覚えていないが
2年生が企画実行することになっていて、講演会担当になった。しかし勿論、誰を呼んだらよいのかわかるはずがなく、親しい先輩から紹介を受けたのが榮久庵 憲司先生だった。芸大の小池岩太郎先生の名を冠してGKインダストリアル研究所を立ち上げたという。先輩から借りた本が
『幕の内弁当の美学』
建築家の職能をテーマに据え、槇文彦先生にもそのときご登壇いただくことにした。一度、事務所に榮久庵先生をたずね、お願いしたことをおぼろげながらに覚えている。
榮久庵先生のご講演は、自分がテープに起こして、たしか「早稲田建築」に掲載されたように思うが、なによりも、掃除が大事!と強調されていた。1に掃除、2に掃除、掃除をすることで、もののテクスチャーに触れ、また凹凸から掃除のしやすさ、生活者の視点を得て、観察をすることの大切さを話されたことを今だに覚えている。
『幕の内弁当の美学』は、外形をコンパクトにして、そのなかに秩序を与えながら、いろいろなものを飾る日本の美的感覚を示した名著だ。
キッコーマンの醤油ビンをはじめ、成田エクスプレスやJRのサインなどGKデザインが生活の一部をなしている。手を、体を動かしながら物質世界を感じていく生活者の視点。そのことを今、改めて思う。