25-12-6(土)
ものすごい冷えこみだ。気候温暖で知られる逗子ー鎌倉―湘南エリアでも今朝は2度くらいまで気温が下がったようである。来週はまたいくらかましになるらしいが、まだ寒さに慣れていない身体には応える。
さて、(最近では日本でも言われる)ブラック・フライデーも終わり、いよいよアメリカも日本も本格的な年末商戦に入っている。例年アメリカ(と言うか、正確に書くとNYダウ)はクリスマスを頂点とするこの年末商戦期に株価が上昇し、今のうちに買って年が明けた頃にうっておけばそこそこ利益が出るのであるが、今年は恐らくそうはならないかと思う。いくつか原因が挙げられるが、来週のFOMCでほぼ確実にFRBが利下げを仕掛けてくることをすでに市場が織り込み始めており、利下げ発表直後にはむしろ材料出尽くしで売りが入いると私は見ている。トランプ氏に罵声を浴びせかけられても利下げをしなかったパウエル氏が、何故今回利下げに踏み切ったのかは、どうも雇用統計の結果が非常に良くなかったことが挙げられるらしい。パウエル氏はもうすぐご退任されて、後釜にはトランプ派の人がFRB議長になるらしいが、パウエル氏は中央銀行の独立性を頑張って保ってくれたものだと感謝している。
雇用統計が良くないのと関係があるが、アメリカでは格差が大きく広がっている(らしい)。年末商戦を終えて楽しいクリスマスを迎えられるのは一握りの金持ちだけであり、低所得者や失業者は大きな買い物は出来ない、それが年末商戦の盛り上がりに冷や水を浴びせかけているということである。(もっともFRBが利下げをしたら、「チャンス到来!」との判断のもとに強欲な機関投資家どもが買いに出るかもしれない。しかし私なら「ここがピーク」と判断し、来週の月曜日の寄り付きで売りを入れて利益を確定するであろう。もっとも私はアメリカの株など持っていないので何も出来ないが。日経平均がバブル的に高い、と言うのは日本の庶民から多く寄せられる感想だが、私に言わせればNYダウの方がよほどバブル的である。)このようにNYダウやアメリカの経済指標などはしっかり見ているが、日本の年末商戦がどうなっているか知らないし、私の持っているなけなしの資産で今年の年末年始乗り切れるかどうか良く解らない。要は『モーニング・サテライト』(テレビ東京系の経済番組)は見ているが、現実の自分の生活に目が向いていないと言うことである。
昨晩、久々にNHKのラジオ放送の7時のニュースを聞いたが、日本の年末商戦も相当に厳しいらしい。今年はサケの収穫量が少なかったのでイクラが高いというのを何となく覚えているが、一応鎌倉に住んでいて、大船の仲町商店街で買い物をしている私も実感として物価の高騰の酷さを感じている。高市さんが大がかりな経済政策をうってきているらしいが、その効果が表れるのには半年や一年はかかるだろう。もっとも日銀の植田総裁が利上げを仕掛けてくるのはほぼ確実なので、預金の金利の上昇は期待できる。問題は物価高がそれに追いつかないということである。
こうして日本の庶民もアメリカの庶民も苦しい年の瀬を迎えているが、1つ気になるのは、この格差が広がった社会において、日本のニュースでは必ず「こういう厳しい生活を強いられるのは、国が悪い、社会が悪いのであって、自分達は犠牲者だ」と言う怨嗟の声が何となく共感を呼んでしまうのに対し、アメリカのニュースでは「貧しくなって、下層階級に堕ちるのは自分が悪い」と言う自己責任の意識が徹底して見られることである。要は「貧乏である」のは両者とも同じであるのであるが、その責任(社会心理学で言うところの帰属意識の問題)を一方では社会に帰属させ(他人が悪い)、一方では個人に帰属させる(自分が悪い)と言うのは面白い現象である。これは深く国民性に根差したものであって、どちらが正しいか私がここで判断することは出来ない。(日本では民のかまどの煙が少ないのも天皇陛下の責任であるそうだ。)
ここまで書いて漸く解った。これは「甘え」理論に帰着するのではないか?日本では何か困ったことがあったり苦しんでいたりする人(貧乏で年が越せない人、拉致被害者、脱サラして独立開業して失敗した人、失業者など)を見たら「可哀想だ」と思わなければならないし、また被害者自身も「自分は社会を糾弾する権利がある」と何となく思ってしまう。この背後には明らかに「隠れた甘え」がある。一方、アメリカで事業で失敗してプロレタリア階級に転落した人が「社会が悪い」と言っても誰も相手にしてくれない。アメリカでは勉強をしない中学生や高校生に「そんなことをしていると、将来マックドナルドの店員にしかなれないよ」と言う叱責の言葉を平気で言うのが普通らしい。(もっともマックドナルドの店員の何が悪いのか私にはよくわからないが。)特に現政権を持っている共和党は「貧しくなるのも豊になるのも、結局は自分の責任」と言う自己責任のイデオロギーが根強くある。(民主党はもう少し福祉国家のようなものを理想としているが、今それについて書いている暇はない。)昨晩たまたま聞いたNHKの「7時のニュース」を聞いた時の違和感が漸く溶けた。アメリカのニュースばかり聞いていると、普通の日本人の感覚が少しづつ喪われるらしい。
そろそろ日が昇ってきたので、私も現実に戻ろう。最後に書いておきたいのは、年を越せないほど貧乏な人が増える日本の社会を求めたのは皆さんご自身であるということである。20年前のあの愚劣な郵政解散総選挙で小泉自民党が圧勝し、小泉純一郎、竹中平蔵(明らかに公明党の影響を受けている)の求めた社会が今の日本の現実となって皆さんの現前に顕われているのである。