被疑事実の要旨

被疑者、飯塚は静岡県伊豆市のマンションの所有者、鈴木正○に代金を支払わないで妻・奈々名義にした。初めから資金調達の目途も支払い意思もないのに破格な値段を切り出して騙し取ったのである。刑法第246条第1項の詐欺罪。

 一方、妻の奈々は、神奈川県中郡の不動産会社の代表取締役吉川稔から200万円を借り、平成23年9月14日「原因(売買)」で吉川稔に所有権移転仮登記をした。借入れの200万円はそのまま残っている。

 飯塚は「吉川には200万借りて、300万以上支払った。吉川を過払いで訴えてやると嘯く。領収書を偽造し、訴状を弁護士に依頼して支払いから逃れる魂胆だった。だが、その弁護士は別件で逮捕起訴され頓挫してしまった。

 これら事実から、マンションを売却して、その売却代金を債務弁済資金とすることは出来なかったのに、被疑者らはマンションに係る上記、所有権移転仮登記前の全部事項証明書(以下「本件全部事項証明書」という)が手元に存在することを奇禍として、B’z氏から金員を詐取しようと企て、共謀の上、遅くとも平成24年9月16日、B’z氏に対し、被疑者、奥村においては、架電の上、「俺の友人で、飯塚が伊豆下田にマンションを持っていて、それを担保に200万円程貸して欲しい。

 私も60万円貸したことがあり、返済は、最悪の場合でも売却すればできます。評価は、現状で400万円で売れるから絶対にとりっぱぐれはありません」と力説して、平成24年9月16日、B’z氏に本件全部事項証明書をFaxし、被疑者らにおいて、平成24年9月18日、西東京市のファミレスにおいて、実際はマンションには平成23年9月15日付で「原因、平成23年9月14日売買、権利者、神奈川県の吉川稔との所有権移転仮登記がなされたにも関わらず、B’z氏に本件全部事項証明書を示し、「謄本は古いが内容は変わっていません」と偽り、飯塚、奥村は抵当権は付いていません。

「嘘なら、詐欺になります」と告げた上で、借入れを申し込み、最悪の場合でも、マンションの売却により、確実に貸金の弁済を受けられる旨を誤信させて、借入れに応じさせ、現金の交付を受けた。以って、人を欺罔して財物を詐取したものである(以下「本件詐欺」という)

 警視庁田無知能犯係の松田課長代理は「これは詐欺だ。時効も迫っているので、それまで間に合わせる」と云って、捜査の進展は不透明だった。そこでB’z氏は、東京都公安委員会の苦情相談に職務怠慢の書簡を送付、訴えた。事態は一気に動いて、3回目の告訴状が漸く受理された。田無警察は被疑者らを逮捕しないで事情聴取に留めて検察庁立川支部に書類送検をした。結果は不起訴処分。コロナ禍の中で国民は、世の中の悪と戦い、自分と戦い、心と戦っている。

不起訴処分を不当とする理由
証拠十分

① 売買契約書
② 飯塚に対する督促状
③ 鈴木○子に対する質問状と回答
④ 飯塚が詐欺を自白した書面
⑤ 判決文(武蔵野簡易裁判所)

 本件では、民事訴訟を通じて、本件詐欺が認定され、被疑者自身、本件詐欺の構成要件該当事実をすべて自白した。
よって、本件詐欺の事実は立証十分であり、本件は起訴相当である。

 被害回復不存在及び反省不存在
東京地判平成30年7月24日(平成30年(レ)第33号)は、被疑者らに対し、「被疑者らは、被疑者 飯塚の実質的資力を偽って、B’z氏に○○○万円を交付させたものと認められ、このような被疑者らの行為について、B’z氏に対する不法行為が成立すると認められる」などとして、共同不法行為に基づき、B’z氏に○○○万円及び遅延損害金の支払を命じた第1審判決を維持する旨の控訴審判決を言い渡した。

 しかし、被疑者らは、B’z氏に対し、認容金額を1円も支払わない。他方、B’z氏は、被疑者らの財産の所在を知らず、強制執行による認容金額回収の現実的可能性は乏しい。以上の経緯から、被害者らは、B’z氏に対する被害回復を判決により命じられながら、B’z氏に対する被害回復を一切行わないもので、これにより被害回復は全く目途が立たない状態となっており、被疑者らが本件詐欺につき何ら反省していないことが明白である。

 よって、本件は、犯情悪質であり、起訴相当である。