BGM音譜
ffフォルティシモ



以前仕事でよく加勢をもらっていたSさんの見舞いに行った。
だいぶ以前に倒れたという情報は聞いていたのだが、見舞いに行かなければと思っていながらそのままになっていた。
2Yと三人揃って病院に行った。

今思えばおばちゃんグループをこちらに紹介してくれたのもSさんだった。
Sさんはシルバーの取りまとめをしていたので色々な人を知っていた。
技術はともかく人手のいる場合何かと重宝していた。

Sさんは今年の6月脳出血で倒れた。
運よく発見した人が看護師で即座に救急車で鹿大に搬送されて緊急手術となった。
それから4ヶ月経つのだが、まだ両手両足麻痺したままということだった。

部屋に着くと奥さんが付き添っている。
細面のなかなかの美人さんだったが一層やせたようだ。
『bi~noさん、今回は突然のことでホントにびっくりしました。
 とにかく今まで無我夢中でやって来ました。』
顔には出さないが声は泣きださんばかりである。

Sさんは目が開いてはいるが無表情だった。
『オイ!Sさん!オイじゃが!ワカルか~?』
話しかけると唇が微かに震えた。意識はあるようだ。

小さな声では判らないかもしれない。よく聞こえるように大きな声でゆっくり話す。
机の上に100円ばさみが置いてあった。
『Sさん、またチョキチョキせんといかんが~。』
指を穴の中に入れてやったらチョキチョキし始めた。
いつもやっていた事は意識がなくてもできる。
『ジャが、ジャガ~、もう一回キバランとイカンド~。』

死んだ細胞は生き返らない。
よく両手を開いて真っすぐ前に挙げる。力を入れてしっかり開いている積りでもいつの間にか掌がひっくり返って来る。それでも毎日動かすと次第に掌はひっくり返らなくなった。黒板に書いた字がミミズの這ったような字だと言われたが少しはまともになった。

手を差し出すと力が手に入っているのが解った。
『ありゃ~、Sさん!力があるがな~。腕相撲をせんとナ~。』
Sさんの唇がピクピクし始めて、いつの間にか顔がくしゃくしゃになって来た。

『ダイジョウブだぞ、今キバランこて~!』