壁が少し薄いだけ、という感覚がずれる理由 | ダナ形成外科

 

壁の厚みがわずかに違うという話を聞くと、たいていは誤差だろうと受け取られます。長さとして並べれば、たしかに小さい差です。この受け取り方そのものが間違っているわけではありません。ずれているのは、見ている単位のほうです。

 

外径を揃えても、壁の厚みは内径から左右で二回引かれます。ですから壁が薄いほうが内側は広くなります。そして毛包が通るのは一本の線ではなく、円の開口です。ここで見るべきものは長さではなく面積になります。

 

面積は半径の二乗に比例します。二乗は比率をそのまま保たず、広げます。直径の側で得た割合は、面積の側ではそれより大きな割合になって返ってきます。これは算数の性質であって、針に限った話ではありません。だから、百分の数ミリが効くはずがないという感覚は、単位を取り違えた推論ということになります。

 

ここまでが幾何で、幾何は臨床の結果ではありません。物理として言えるのは狭い範囲です。内側が広ければ同じ大きさの毛包が余裕をもって通り、通る途中で壁に押しつけられる組織が少なくなります。植えた毛包が圧で頭皮の外へ押し戻される現象をポッピングと呼びますが、挿入時の圧が下がる向きはポッピングが減る向きとして知られています。ただしその程度は頭皮の状態、毛包の大きさ、スリットの深さ、器具の扱い方で変わり、仕様表で決まる数字ではありません。

 

ひと目で比較

見ている項目 何を決めるか 差の出方
外径 皮膚側の開口の大きさ 長さのまま
壁の厚み 内径(左右で二回引かれる) 長さのまま
断面積 毛包が実際に通る広さ 半径の二乗で拡大する

よくある質問

Q. 壁が薄いほうが結果がよいということですか。

A. 同じ外径で内側の余裕が大きいという物理の話までです。結果は組織の状態や毛包の大きさ、手技など、針の寸法が決めない要素に左右されます。

 

Q. それなら太い針を使えば済みませんか。

A. 外径を太くすると皮膚側の開口も大きくなります。皮膚に負担を増やさずに内側の余裕を得たい、というのが壁の厚みが話題になる理由です。

 

Q. ポッピングは器具を選べば防げますか。

A. 減る向きに働く要素の一つではありますが、それだけで決まるものではありません。頭皮の状態やスリットの深さも同じくらい関わります。