「不潔にしていたから」と思われがちなのですが、少し違います。毛嚢炎の仕組みは、感染というより排出の問題に近いです。そしてその材料は、実は移植したときから中にあります。
毛包単位というのは、毛だけの塊ではありません。皮脂腺がくっついた構造ごと移植します。ですから移植後も、その皮脂腺は今までどおり皮脂を作り続けます。ふだんは毛穴を通って外に出ていくものです。ところが術後は、この出口のほうが状況が悪い。角質があり、かさぶたがあり、浸出液もあります。しかも新しい環境のストレスで、分泌のほうはむしろ増えることがあります。作る量は増えて、出る道は狭くなる。
たまった皮脂は、菌にとって栄養になります。そこへ届く経路はたいてい手です。術後は頭皮がかゆくなりますし、生えてきた毛が気になって触ってしまう。どちらも同じ結果になります。構造としてはニキビにいちばん近くて、傷の感染とは別物だと考えていただくほうが実際に合っています。
時期についても触れておきます。多いのは術後一か月前後です。ちょうど移植毛がいったん抜けて生え変わる時期にあたり、表面の状態が落ち着いていないぶん、排出も安定しません。予測できる時期に、予測できる理由で起きている、と考えていただければと思います。ただし数や大きさによっては見せていただいたほうがよい場合もあります。その線引きは別の記事にしました。
ひと目で比較
| 起きていること | 背景 |
|---|---|
| 皮脂腺も一緒に移植される | 毛包単位の構造 |
| 皮脂の分泌が増える | 新しい環境への反応 |
| 出口がふさがる | 角質・かさぶた・浸出液 |
| たまった皮脂に菌が届く | 手で触れることが多い |
よくある質問
Q. 毛嚢炎が出たら手術が失敗したということですか。
A. いいえ。術後の排出条件によるもので、移植そのものの結果とは別の話です。
Q. なぜ一か月前後に多いのですか。
A. 移植毛が抜けて生え変わる時期と重なり、表面の状態が安定しないためです。
Q. その部分の毛は抜けてしまいますか。
A. 小さく治まる程度の炎症で毛包がだめになることは通常ありません。大きい場合は別途ご相談ください。
