株数は、どのカウンセリングでも出てくる数字で、患者さんが必ず比較する数字でもあります。しっかりした測定値のように見えるところが、実はやっかいなんです。一株とは毛包単位のことで、毛包単位というのは自然にできているまとまりですから、含まれる毛の本数は一定ではありません。つまり同じ数字を提示された二人が、実際に受け取る毛の量では大きく違うということが起こり得ます。しかも、誰かが意図的に誤解させたわけでもない。
だからこそ、計画を書く前にドナー部を拡大視野で確認します。ここで見ているのは「毛が足りているか」だけではなく、三つの別々の性質です。毛の太さは、育ったときに一本がどれだけの視覚的な重みを持つかを決めます。同じ株数でも、細い毛より太い毛のほうが密度感が出ます。密度は、その範囲からどれだけ採っても薄く見えずに済むかを決めます。そして毛包単位あたりの毛の本数が、株数を「グラフトの数」から「実際の毛の量」に変換してくれます。
実務上の帰結はこうです。この確認を経ずに出された株数は、測定値の書式で提示された見積もりであり、その書式こそが問題になります。クリニック間で、意味の違う数字どうしを比べてしまうことになるからです。それに「多いほどよい」という前提も呼び込みます。本当に必要な問いは、その数字が特定の頭皮で実際に何をもたらすのか、そしてそれを供給するためにドナー部が何を差し出すのか、のほうです。
測定が大事なもうひとつの理由は、あとに何が残るかに関わることです。ドナーの毛根は再生しないので、どの範囲からどれだけ採るかが、脱毛が進行したときに使える余力を決めます。ドナー部全体の密度を測っておくことで、一箇所に集中させずに分散して採ることができます。測定なしの計画は、この配分の判断を意図的にではなく、なんとなく行っていることになります。
数字を患者さんが読み解く必要はありません。必要なのは「何を、いつ測ったのか」を聞くことだけです。ドナー部を拡大視野で見る前に株数が出ていたなら、その数字は何を根拠にしているのかを聞いてみてください。測定にもとづく計画は具体的に答えられますし、見積もりは一般論で答えます。その差は、聞けば分かります。
ひと目で比較
| 測る項目 | 何が決まるか | 省くとどうなるか | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| 毛の太さ | 一株あたりの見た目の密度 | 見え方が分からないまま株数だけが出る | ドナー毛の拡大視野での確認 |
| ドナー密度 | その範囲からどれだけ採れるか | 一部から採りすぎるおそれ | ドナー部全体の密度測定 |
| 毛包単位あたりの本数 | 株数が示す実際の毛の量 | 同じ株数でも結果が食い違う | 拡大視野で単位内の本数を数える |
よくある質問
Q. 一つの毛包単位に入っている毛の本数は決まっているのですか。
A. 決まっていません。毛包単位は自然にできたまとまりで、含まれる本数には幅があります。そのため同じ株数でも、人によって実際の毛の量が変わります。
Q. クリニック間で株数を比べてもよいですか。
A. 数字だけの比較は当てになりません。ドナーの所見によって株数の意味が変わるためです。その数字を出すために何を測ったのか、そして計画がドナー部に何を残すのかを聞くほうが有益です。
