オフロードクラブ・林道突撃隊に入ってから数ヵ月立ったある日の事。「慎吾!森谷さんから電話だよ!」とオフクロに呼ばれた。森谷さんは林道突撃隊の仲間で、同じ30に乗っている人だ。車検でノーマルのマフラーが必要との事で予備を貸してあげていた。ジムニーの車検が上がったので、マフラーを返しに来ると言う内容で、本人は忙しいので奥さんが返しに来ることになった。
暫くたってから呼び鈴が鳴り、私は表へ出て「遠いところわざわざありがとう」とマフラーを受けとる。森谷さんの奥さんを車まで見送りに行ったら、「神崎さんこれから時間空いてる?」と聞かれ「空いてるけど」「由美っちが一緒にドライブに誘おうって言うんだけどいい?」えっと思い、窓を覗き込むとロングヘアーの女の子が照れくさそうにこっちを見ていた。頭を下げられ、こっちも軽く頭を下げた。「とりあえず車を出して来るわ」と言い、ジムニーを後ろに着けると、ロングヘアーの女の子がこっちへ来て「横に乗せてもらえませんか?」と聞くので「いいよ」とドアを開けた「お邪魔しま~す」と彼女が乗り込んできた。茶目っ気のある感じの可愛い女性だ。森谷さんに続き車を走らせた。暫くしてルーフを外して走った。風が彼女の髪をそっとなびかせる。綺麗なロングヘアーはまるで踊っているかのように見えた。そんな様子を見て私は素敵なプレゼントでももらったような気分になった。夜も更けて来たので、彼女を森谷さんの車に返し解散した。

翌朝会社の掃除当番なのでいつもよりも少し早く会社に向かった。暫く走り信号で止まった時の事だ。ワンピースを着た可愛いらしい女性がこっちに手をふっている。「まさかあんな可愛い子が俺に手を降るわけがない」隣の車にだろうと思い、信号が変わると私は走り去った。
その晩森谷さんの奥さんから電話があり「神崎さん、由美っちを無視したんだって」「え?」「大学通りの交差点を曲がる時に、手を降ってる人いなかった?」「いたよ、えっ、でもまさかあんな可愛い子がこっちに手をふるなんて思わなかったから。由美ちゃんだったの?悪いことしちゃたな~。ごめんね。って謝っていたって、言っておいてよ」そんな内容だった。翌朝は掃除当番もないので昨日より少し遅く、その交差点に差し掛かった。「あっ、由美ちゃんが手をふっている」すぐにハーザードを点けて、急いで車を路肩に止めた。車から降りて挨拶をした。「おはよう」「おはようございます。」「昨日はごめんね。まさかこんなに可愛い人が俺に手をふる訳がないと思って、隣の車に手を降っていると思っていたんだ。ごめんね」「いいんですよ全然気にしてませんから」「よかった、それじゃ会社に遅れるといけないからまた。仕事頑張って」「神崎さんも」「ありがとう、それじゃまた」手を降る由美ちゃんをミラー越しに車を走らせた。こんな偶然もあるんだな~、なんて思っていた。
今になって最初は偶然だと思うけど、二回目は待っていてくれた、そんな気がする。