



ビナブーに入社した者は編集長より二つの洗礼を受けなくてはなりません。
ひとつは、ニューヨークでドラマーとしてバンド活動をしている彼女の息子のハードロック音楽を聴くこと。朝っぱらからユーチューブで溺愛する息子の姿を観てテンションあげているのはいいのですが、何度も聴かされるとさすがに皆「もういい加減にしてくれよ」と心の中で叫ぶようになります。
もうひとつは、彼女の高校時代の恩師である福島次郎の『三島由紀夫-剣と寒紅』を読むこと。これは同性愛者であることを秘し隠してきた著者が、かつて三島由紀夫と肉体関係を持ったことを綴った暴露本です。
実は(ああみえて)財閥の血筋をひくお嬢さまとして生まれた編集長ですが、家業であったお布団の打ち直し工場が放火の被害にあったことや、当時の家族関係のもつれからとにかく働いて自立したいという気持ちが人一倍強かったそうです。結果として働きながら定時制高校へ通い、そこで当時高校教師をしていた福島次郎氏と出会ったことで文学が好きになったといいます。また、福島次郎氏は編集長が在籍していた美術部の顧問でもあったとのことで、おそらく可愛がられたのでしょう、高校卒業後も編集長が彼の自宅を訪れては自筆の絵をもらうような交友が続いたようです。
かつて何度も芥川賞候補にあがった福島次郎氏ですが、人間臭を露にしたこの『三島由紀夫-剣と寒紅』では文芸界から大きな非難を浴びることになります。
「福島次郎は三島のストーカー」とか「松田聖子の元愛人を自称し売名に成功した外国人と福島次郎は同類」などとさんざん批判された挙げ句、遺族が裁判に訴えたことで発禁処分となりました。
今、編集長はどうにかこれを解禁してキンドルで出版再開してほしいと切実に願っています。福島次郎氏の教え子であった彼女はこう断言します。
「わたしにはわかる。三島さんがなぜ彼を愛したか。とても繊細で、嘘をつけない、あの無骨な素朴さに惹かれたから。福島先生を気持ち悪いという生徒もいたけれど、私は初めて出会った時からとてもイイなあ、なんか素敵だなあって思っていた」
そこまで言うなら美ナ子としては、生の福島次郎と4年間過ごした高校時代の記憶の断片を彼女の口から綴ってもらいたいと思うのです。だからこれから編集長がハノイに来る度に少しずつ語ってもらって、美ナ子が書きとめていつか本にしたいと考えてるのですよ。皆さんも読みたいですよね???
ところで知らない方も多いので申し上げますが、ビナブーはロイヤルトランスというお引っ越し会社の出版部門で、編集長はその社長です。営業面倒だしてっとり早く会社を宣伝したかったからという理由で現社長(兼編集長)がビナブーを創刊したというのが経緯です。そして今年になり日本にも会社ができました。
ですから、みなさまもお引っ越しの際にはどうぞロイヤルトランスをよろしくおねがいいたします♥


