「なぜか今日は...、
イケる気がするんですよね…」
出張中、仕事をようやく終えた酒場で、いい感じで酔った新人T君は、
おもむろに携帯を取り出し、
そっとつぶやいた。
どうやら彼は、最近知り合った女性に片思いしているらしく
(飲み会のほとんどの話題が、仕事ではなくその話だった…)、
そろそろその想いを伝えたいとのことであった。
「なんか、今日いい感じのLine来たんすよね、
なんで、ちょっと後で電話して告白しようと思うんですよ!」
という彼。
「あんま酔った時にそういうことはやめといたほうがいいよ、
個人的な経験上、かなりの確率で後で後悔する結果になるよね」
とたしなめる僕。
「いや、ちょっとLineみます?」
と携帯の画面を見せてくるT。
そこには、
『おはよ!今日お仕事なんだね!がんばってね!』
みたいな、さらっとした文章が。
「え!どこで手ごたえ感じた!」
「何言ってんすか、休みなのにもかかわらず、
出張行くのを応援してくれてるんすよ!
これ絶対俺のこと考えてくれてるってことでしょ!?
てことはイケるは、今日は!」
超ポジティブ…
そして根拠(業界的に言えばレファレンスw)が全然足んねーよ!
とのツッコミをいれようと思った矢先、
Tは居酒屋という場所で、それも僕の目の前で、
意中の相手に電話をかけ始めた!
…ガッデム!
やりやがった、
という僕の視線とは裏腹に、
軽快にそして楽しそうに、
会話をはじめるT。
ちなみに時間は24時前…
軽妙に話していた彼だったが、
意を決したのか、
とうとう本題に入り、
想いを伝える時が来た。
「…で、いきなりでびっくりするかと思うけど、
好きです!付き合ってください!」
僕も心配とともに、
この後どうなるんだろうとかたずを飲んでいると、
彼の顔がそれまでの高揚感をともなったものから、
スッと平常運転時、いやそれ以下のドライな表情へと変化した。
「あ、彼氏いるんだ…
なるほど、
あ、 うん、
それじゃ、はい、バイバイ」
そう、Tは撃沈した。
「まぁ、致命的なリサーチ不足だよね…。」
「そうすね。
おっしゃってたように、酔って告白するのはダメですね…」
と空になったグラスを見つめる、先ほどまでのバカポジティブとは逆サイド、
ダークなフォースをまとったT。
「さて、飲みなおすか。今日はおごるわ…」
そして僕らは、2件目の居酒屋を目指した。
