「…やってしまったんです…。」

かなりうなだれた感じで、
僕と机を挟んで、飲みかけのジントニックの氷を見つめる、
若人A。

彼は、僕が学生時代のアルバイト時に家庭教師をしていた生徒の一人である。

僕が面倒をみていた高校3年生の時から早4年、
彼は今や大学生として最終年度を迎える年齢となっていた。

20歳のお祝いをして以来、
久しぶりに彼から連絡があり、
それも深刻な感じで「相談がある」といわれたので、
じゃあ軽く飲みに行こうか~となったわけである。

「はぁ、なんであんなことしてしまったのだろう。
 最終面接やったのに…」

今まさに彼は就活中、それも終盤戦を迎え、
最終面接にGW明けの先日挑戦してきたばかりであった。

「でっちゃったんですよ…

 社長さんが、恐らく僕の緊張を解してくれようとして、
 小話してくれたんですけど、
 個人的にツボだったんで、いつもの癖が…。」

そうなのである、
彼は生粋のニコニコユーザーであるのが起因してか、
「おもろい」ことがあったとき、
かなりの確率で「ちょwww*」と声に出してから、
笑う傾向がある。

*もともとは「ちょっと待て」の意味。
ツッコミとして使われる。
吹いた、お茶返せなどと共に使われることもある。
あまりに酷い場合はちょww弾幕ができる。
(ニコニコ大百科より)

確かに、ニコニコ動画の弾幕で、そのタームは見たことがあるが、

彼はそれをリアルの現場でも実用するのである。

そして、そんな「ちょwww」を、
就職活動の、それも第一志望の最終面接でぶちかましてしまったというのである。

「…まぁ、癖だもんね、
 これも運命だと思って、あきらめるしかないんじゃない…

 僕もそんな笑い方する後輩はいややもん」

と高校時代から、その癖治せ!と言い続けたし、
今は社会人の先輩でもある僕は、
これもある種いい機会だと思い
ドライな対応をすることにした。

「ちょwww

 酷くないっすか⁉もうちょっと優しい言葉をかけてくれてもいいじゃないですか!」

「いや、それやで!
 それをやめろ言うてるやん!」

「ちょwww」

まぁ、こんな感じである。
全く治す気がない…。

「そういうところやで…。」
とさらに冷たく対応すると

「そうですよね、
 
 たしかに…。

 親にもその笑い方やめろ!って言われてますしね。
 
 彼女にもそれで振られましたし…。」

 あ、そうなんだ、
 親御さんも怒ってたんだ!
 てか彼女にもそれで振られたんだ!

 確かになぁ、逆に彼女の口癖が「ちょwww」だったら嫌かもしれんもんなぁと思っていると

「決心しました!
 元号も変わりましたし、
 もうこの癖なくそうと思います!」

そういうとAは、
「ちょwww」の代わりに「うける!」という合いの手を使い、
コミュニケーションを図ろうとしてきた。

「もはや言い方の問題ではないな、
 
 スタンスだよね、変えなきゃいけないの…」

と僕はお会計を済ませ、その会を終えることにした。