絶望ビリー

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*コメントお返事*追記あり

先日天上天下に関してご意見を頂いたので、さすがに放置するものいかがかなと思いこちらでお返事させていただきます。


DL販売に関して、天上天下は前サイトで連載していた当初、さまざまな事情により続きはイベントにて発行し完売したものです。
ありがたいことにたくさんの方々よりご要望を頂いたので、せっかくなので加筆訂正し、DL販売に踏み切った経緯があります。
元々試し読みで片手間に書いたものはございませんし、まして販売するためだけにのせているわけでもありません。
他の方からも同じようなご意見があればこちらでも改善の措置を取るよう考えますが、DL販売開始してすでに3年目になり、数々の方にDLして頂きましたが、その時から現在まで、こういったご意見は一件もございませんでした。
良心があるのならば即刻サイトを改めるべき、とご指摘いただきましたが、こちらに不手際や落ち度はないと思っておりますので、改める必要はないと感じておりますので、ご了承ください。



お返事いただいたので追記します。

そもそも、突然見も知らぬ相手を詐欺呼ばわりするような方を、悪意のある方に分類するのは当然だと思いますけど間違っておりますでしょうか?
貴女の意見を拝見して、確かに不親切だったかもしれない、これは改善しなければとは思いましたが、何よりも趣味でやっていることに対して、いきなり詐欺呼ばわりされ、挙句悪意のある言葉を並べられれば、結局お金を払って買うのがいやなんでしょ、なら読むなよって言いたくなる気持ちだってわかってくださいよ。

ネットの世界だからといって、どう見ても誹謗中傷のメールを初対面の相手に対して送りつけて、良心があるなら即刻サイトを改めるべき?本当どうもお疲れ様です。あなたの突然の言葉でどれだけ私がショックを受け、思い悩んで上の文章を掲載したのか考えたこともないんでしょうね。
もういらっしゃらないと思いますが、当サイトの小説を読んで、ご意見くださったことには大変感謝しております。ありがとうございました。

ちょっとした手違い

うっかり登録サーチから自分のサイトを削除しちゃいました。本当、うっかり。うっかり過ぎて一瞬どうなってんだかよくわかりませんでした。何やってんだが、本当。

再登録申請を出させてもらったけど、毎回すいませんとしか言いようがない・・・orz


先日車で突っ込まれて、生まれて初めて事故の被害者となったんですが、それから右半身が痺れてうまく動きません。

キーボード打つのにも普段のスピードが出ない+すぐに腕が疲れちゃうので、執筆活動に影響が・・・・
100%向こうが悪い事故らしいので、ちゃんと病院行ってきっちり治してこなくちゃね~と呑気にしてたら、周りからもっとちゃんと相手を怒らなきゃだめでしょ!って言われてう~んって感じです。

だって菓子折りも持ってきて挨拶に来てくれたし、保険会社の対応も悪くないし、無理に相手を怒ってもなぁ・・・とのんびり構えてるんですがそうか、これがいけないのか!

長時間キーボード打つのが結構つらいので、短編をつらつら書いてあげていこうかな~って思ってます。
なんかネタがあったらポチリと投下してくださると大変うれしいです♪

*更新履歴*

*更新履歴*



2009年9月22日 空、星、海の夜 1 UP NEW!!


2009年9月15日 ブログサイトopen

           最後の歌 6 UP 

空、星、海の夜 1

※天上天下設定のダイポです。
その後のようなことをつらつら書いていくので、天上天下を先に読まれることをお勧めします。












・1(夢、目覚め、そして帰還)・




その日、妖精の世界に鮮やかな色と歓声が空に響き渡った。
人間に比べて少々小柄な体に羽根の生えた美しい種族達は皆一様に喜びを現し、甲高い独特な声音で歓喜の歌を叫ぶ。
誰もが涙を流しながら今日起きた奇跡に両腕を上げて、一人の青年に感謝を捧げていた。
神の寵愛と恩恵を一心に授かる美しい種族である彼らは、その中心に立つ威風堂々とした青年をまるで神を見るように崇め、感謝を捧げる。
「我らが救った人間が、我らを救った英雄になった!」
「勇者よ!この地にも勇者はおられた!」
口々に叫ばれる声に青年はただ困惑し、しかし照れながらも穏やかに微笑みを浮かべて、そんな妖精達を眺めて手持無沙汰に仮で使用した細い剣の鞘を指で弄っていた。
「ダイ!ダイ、怪我はない!?」
「リリー!」
妖精達の間から飛び出してきた少女が勢い込んでダイに向かって飛びつき、ダイは慌ててその小柄な体を受け止めてほっと息をついた。
良く見知った顔と言えば、目が覚めた時からずっとそばにいてくれたのはこの妖精族のリリーと言う少女だけだった。
興奮に白い頬を赤く染めてダイを見上げてくる少女に向かって、照れくさそうにはにかんで笑いかけると、小柄な体を地面に降ろして綿毛のようにふわりと揺れる髪をそっと撫でた。
「カイザーの手下はまだ完全に倒したわけじゃない・・・・だいぶ傷を負わせたから今は皆の封印でなんとかなるかもしれないけど、油断は禁物だ」
「ええ、わかっているわ。それは妖精王も御承知の上よ」
キラキラと光り輝く風を舞わせながら、リリーと呼ばれた少女は実に美しく微笑んだ。
人間界、魔界、そして妖精界。
神々が住まう世界を除けば、この世には三つの種族がそれぞれの世界で生活をしている。
先の人間界での二種族間の大戦で、大魔王と名乗った魔人が竜の戦士によって倒された。その報はすぐに二つの世界に知れ渡り、勇者ダイの名は本人の預かり知らぬところで随分と有名になっていた。
妖精界にとっても、魔界は相容れぬ存在だと誰もが周知している。
闇と光はどう足掻こうと混じることのない存在だと長い時間の中で悟っている妖精達は、厄災を連れてきたと罵られてもおかしくはない勇者の事を篤く敬い、そしてよき理解者となる道を選んだ。
「でも、俺がいる所為でカイザーがここに刺客を送り込んだんだし・・・・・・なんか、凄い申し訳ないよ」
ちらりと宴に興じる妖精達の姿を見て、ダイは自嘲気味に笑った。
「そんなこと言わないで、ダイがこの世界の為に必死になって頑張ってくれたことなら私達が知ってるわ!あたしがみんなの前に行って、説明してもいいぐらいよ!」
明るく笑うリリーは、謙虚に困惑するダイの両肩を掴んでそう叫んだ。
「ここもようやく武器を持たないで暮らせるようになったもの・・・・ダイ、一度、故郷に帰ってきたらどう?ここなら、まだまだ大丈夫よ」
「リリー・・・・」
ダイは己の周りにひらひらと小さな体を舞わせる少女に向かって一瞬ずきりと胸の中に走った痛みに顔をしかめながら、それでも笑顔を作って、緩く首を振った。
「もう遅いよ、俺がここにきて・・・もう何十年たっていると思うんだい?俺は、そう変わっていないかもしれないけど、・・・・人間て、そうじゃないんだろう?」
自嘲気味に呟いてから、ダイは顔に焦燥をびっしりと貼り付けて虚ろな眼差しを空に送った。
大魔王バーンとの戦いに勝利し、そして黒のコアによって吹き飛ばされたダイは、妖精達が住まう世界で命を救われた。
闇の力によって傷つけられた体は意識を取り戻すことなく混濁し、妖精達の緩慢な時間でゆっくり癒してくれたらしい。
次に目が覚めた時、バーンと対峙した時より二十年以上も時間がたっているのだと言われて、ダイは絶望にも似たショックを受けた。
己の体の変化に付いていけず困惑していたところに、竜の戦士の目覚めを感知したのかカイザーの手下が妖精の世界を襲った。
それを、なんとか食い止め妖精達の手で封印できるまでに弱らせたダイは、己がまいた種とはいえ妖精界ではまるで英雄扱いだ。
武器を持たず、戦う術を持たぬ非力な妖精達は、手渡された粗末な剣で果敢にも魔物に立ち向かうダイの姿は、それは神の使者のように見えたのかもしれない。
実際、成長したダイの表情は引き締まり、少年の面影を残しながらも男くさい魅力に溢れていた。
美の集大成とまことしやかに囁かれる妖精達すらも、己にはない精悍な顔立ちの青年に未だかつてない熱い情熱をこめて見つめている。
しかし、そんな周りの思惑など気にもしていないのか、ダイはリリーに向き合って手に持った刃こぼれの酷い剣を握り直し、何かに耐えるようにぎゅ、と目を閉じた。
妖精の世界は不思議な色彩に満ちていて、虹色の空がダイを包み込んでくれる。優しい、優しい光だ。しかしダイにとっての光は地上にしか存在しない。しかし、それもきっともうないだろう。
今まで必死に耐えてきた可能性を口にした途端、ダイは泣きだしそうに顔を歪めた。
この世界で、世界の均衡を狂わせないようにと頑張って魔物と戦ってきた。カイザーの放った刺客はなんとか妖精達の力を借りて倒すことが出来たが、しかし失った時間を取り戻すことはできない。
後悔はないと、己に課せられた義務なのだとわかってはいたが、ダイの心の中にはぽっかりと空洞のような虚ろが侵食するようにじわりと広がっている。
もう、人間の世界に降り立っても、ダイの知った顔ぶれはいないかもしれない。妖精達の不思議な時間はダイの成長を緩慢に遂げさせて、奇跡的に未だ若々しい青年の顔立ちを保っている。人間でいえば、ようやく二十歳を迎えるか否かだ。
そんな、人間の時間を忘れたダイは自分の体を見るたびに自己嫌悪に陥った。伸びた身長、少年のまろみを帯びた頬から骨格の隆起した逞しい顔立ちへと変化した、自分に。
こんな姿、見てもきっとポップは自分だと気がついてくれないかもしれない。そう思うだけで、胸の中にどす黒い闇が侵食してくるのを感じるのだ。
「・・・・・・何言ってるの?ダイ」
「・・・・妖精の君に言っても、わからないかな?」
人間の短い命なぞ足元に及ばぬほどの寿命を持つ妖精には、ダイの苦しみはわからないのかもしれない。リリーの、妖精らしい美しい表情に困惑の色が浮かび、形の良い眉が強く寄せられた。
「何言ってるのよ!ここの世界と人間の世界じゃ、時間の流れ方が違うって事を知らないの!?」
「・・・・・・・・え?」
「ここの一年って、人間界で換算すれば、二、三ヶ月ぐらいしかたってないんだよ?」
ぽかん、とダイは口を開けてリリーの困惑したままの顔を凝視した。
「なんだって・・・・・?」
今、彼女は何を言った?、と頭の中がぐるぐると回り出す。先ほどまであった陰鬱な空気は一気に飛散してしまって、くらりと眩暈までしてくる。
「ダイがここに来て、もう二十年ぐらいになるよね・・・・人間の世界でも、もう五年ぐらいはたってるかもしれない、けど」
リリーは気遣わしげに優しく囁きかけながら、小さな手でダイの肩に触れた。
「ダイが起きてから、一度すぐに人間界に顔を出したことがあったでしょう?あの時も、二年ぐらいしか立ってなかったはずだけど・・・」
十年程前に目を覚ましたダイは、まず先にと人間界に顔を出した事がある。しかし傷も癒えて間もない時期に無理をしたせいか、誰かに会う前に結局力尽きてしまい、人間の世界に足を踏み入れたはいいが、付いてきてくれた妖精に連れ帰られるという大変不名誉な結果を残した。
その時に気がつかなかったのかというリリーの問いは、声に出せる余裕があれば答えはノーだ。きしむ体で何とか人間界へと降り立ったダイは、妖精界とは違った大気の濃さにいくらもしないうちに意識をなくしてしまったのだから。
「そんな・・・・・・」
ダイはあまりの事に言葉をなくして、目にいっぱいの涙を浮かべて唇を震わせた。
「ごめんなさい、ちゃんと言えば良かったね・・・」
「そんなことないよ、リリーはちっとも悪くない」
ダイは慌てて謝罪を告げてくる妖精の少女の肩を優しく叩き、泣き笑いながらも嬉しさに破顔させてぐいと涙を拭った。
「早く帰ってあげなさいな、大切な人が、待ってるんでしょう?」
「うん、絶対に帰るって、約束した人がたくさんいるんだ」
リリーの優しい声音に、ダイは己の強張った表情が、まるで氷が解け行くようにに砕けて散っていくのが良く分かった。
己の早とちりと思いこみでどろどろに染まっていた胸の中は逃げ道を見いだして、急速に光を取り込もうとしている。体だけ成長を果たした勇者は、未だ純粋な気持ちを溢れんばかりに笑顔へと変えて、何度も涙をあふれさせる。
「謝んなきゃいけない人がいて・・・・・」
「大切な人?」
「そう、俺を、ずっと支えてくれた、奴なんだ」
ダイは男らしく笑うと、また溢れてくる涙を頬に伝わらせながら、照れくさそうに鼻を啜った。
「ポップに、会いたいんだ・・・・・・」
ダイはぽつりとそう呟き、しばしもう昔に思える過去を思い出してじんと胸を温かくさせた。ずっと、目が覚めてからずっと、もう会えないと思っていた。
人間にとって時間ほど残酷に現実を突き付けるものはない、ダイの知らぬところでポップもレオナも、誰もかもが自分たちの時間を過ごしている。
そう思うだけで、時間に取り残されたダイは胸が苦しくてたまらなかった。だから、もう人間界に戻ることはないだろうと勝手に思っていた。
それなのに。
ダイは未だ勝利の宴に酔う妖精達をぐるりと見届け、優しい光に身を包まれて今度こそ陰鬱な闇を払って笑った。
「でも油断しないでね、もう一度、・・・俺の剣を持ってここに帰ってくるから」
「ええ、みんなであなたの帰りを待っているわ」
リリーは誰が見ても見惚れる様な優しい笑顔を浮かべて、ダイの手をぎゅうと握って少しだけ目端に涙を浮かべて、笑った。


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09/09/22
久しぶりのダイポです。ずっと設定だけ出来てて、書ききれなかった天上天下のダイ視点のお話です。
ちょっと軽いノリで書いていけたらなーって思ってます。

最後の歌 6




バーンの前より辞したミストは、長いローブを翻しながら与えられていた部屋に迷わず進んだ。
巨大な回廊の端々から見える地上はどんよりと臭気に覆われ、果ては霞んでよく見えない。地上よりも高くに浮きあがる新しい魔宮は、崩壊から二年の歳月で十分に機能を回復し、バーンの愛する機能美を取り戻していた。
淀んだ空気はミミストの宿主である生身の人間には酷い毒の風となっていたが、周囲を覆う暗黒闘気によって護られ、頬を撫でる風は平素と変わらない穏やかさを持っていた。
ぴくりとも感情を出さない彼の表情が一瞬苦しみに歪み、ふらりと軸を保てず壁に縋る。
実に少年らしくない冷たい表情は徐々に歪んでいき、唇が痙攣するようにひくひくと動き出し、冷たい水晶のような瞳が左右に揺れ、部屋の扉をあけるのと同時に虚ろにくるりと白目を剥いた。
突然ふらりと揺れた体は、完全に部屋の中に入る前にがくりと崩れ、少年の華奢な背中が仰け反った。白い肌は次第に土に近い色へと変化し、闇の濃い色合いに沈んでいく。
「く・・・・」
小さな呻き声が小さな唇から洩れ、震える手で必死に部屋の中に身を潜めると、最後の力を振り絞るように弱々しく扉を閉めた。
「ああ!!」
もう一度大きく体が揺れると、皮膚を醜く染め上げていた闇が潮が引くように体から溢れ出、水蒸気のようにポップの体を覆う。しゅうぅ、と水が蒸発するような音が周囲に木霊すると、飛散していた黒い霧は徐々に人の形をなし始め、倒れ伏す少年を見下ろすように高い天井の部屋の中をぐるりと旋回した。
「せめて部屋に入るまで待てばよいのに・・・なぜ、我慢が出来ぬ」
「馬鹿野郎、ちょっとだって嫌なんだよ!!」
黒い霧の中から発せられる声は水を通して伝えられるように響き、呼吸荒く肩を上下に揺らす少年に重々しく伸しかかる。額を汗で濡らし、震える両足で壁に縋りつきつつ立ち上がると、早速悪態をつき始めた。
「くっそ、好き勝手しやがって・・・・・・!」
どさりとベッドに体を投げ出し、がらりと変わった声音でぶつぶつと文句を口の中で言っていると、もうすでに慣れているのかミストは真の姿で気楽に空を舞っていた。強制的に意識を奪われていたポップの体は急激な解放に未だ体が付いていかないのか、がくがくと痙攣を起こしている。
人間の体に住むと言う枷を負わされているミストは、やはり暗黒の世界に生きるだけあって光の世界の住民の体は居心地が悪いらしい。
ようやく解放された、とでも言わんばかりに自由な空間をゆったりと漂い、地の底から響く様な笑い声を響かせた。
「なんとも脆弱な体だ・・・・・・ぬしを生かさなければ故、宿り続けることが出来ぬとは」
ポップの体から立ち上る暗黒闘気が何度も体中を這いまわり、ポップはいつものことながら嫌悪感に顔を歪めて肌触りの良いシーツを握りしめた。
「だったら出て行ってくれて構わないんだぜ、俺はいい加減頭にきてるんだ・・・・・」
ふう、と弱々しいため息をつくと、ポップはぎりりと歯を噛み締めた。
「こんな状況になってもへらず口を叩ける力はあるのだな。誠、人にしておくには惜しい・・・・・」
「どうとでもいえ、誰がお前らの思い通りになるかってんだ!」
暗黒闘気を体にまとわりつかせながら、ポップは心底嫌そうに顔を歪めた。
夜の闇の中をまどろみ明けると、地上よりも空に近い魔宮では朝日が分厚い雲に隠れた隙間から漏れだし、ゆっくりと闇を隠していく。その時こそ、ポップがミストの支配から解放される瞬間だった。
意識のない屍のような体を支配し慣れていたミストにとって、身体中から溢れる光を抑えることは容易ではない。続いた爆発のせいで失った太陽の熱は、ある意味彼等にはよい方向で進んだ。
闇になれた魔物達はやはり日の光に弱く、また気候の変動になれていないものが多い。
彼が以前叫んだ通り、ポップの光は常に閃光のように鋭く輝き続けている。どれほど闇色へと染めようとしても、ポップの意思だけは黒に染まることはなかった。
ミストは煙だけになった体でポップの頬を一撫ですると、どこから響くのか地を這うほど低い声で笑った。
「まったく強情なものよ・・・・・・ぬしに恐ろしいものはないのか。我が主ほどのお方はおらぬと思うが・・・・・」
「そんなことねえよ・・・・・俺は、自分以外のものはほとんど恐いぜ?あんたも、大魔王も、・・・仲間も」
「ほう?」
「力だけのあんたらにはわからんと思うがな、人間は何も肉体的な暴力だけで人を殺す訳じゃない。言葉とか・・・・態度でも簡単に殺せるんだ、色んな意味でな」
ポップは顔中に浮かべた苛立ちを取り去って、緊張に凝り固まった体を投げ出した。
普段ならそのまま堅い床に身をぶつけるだろうが、黒いガスに覆われた体はふんわりと宙に浮かび、柔らかい布で包まれているような感触がポップを包んだ。
初めは不快で仕方がなかった黒い霧は、気が付いたらどうでもよくなっていて、ポップは必要以上に食ってかかることも騒ぐこともしなくなった。
どんなに叫んでもこの黒い塊はどこかへ行くことはないし、ポップに完全なプライベートなど用意されていない。
生かされていること自体が稀有なこの場所で、少年は両腕を投げ出してぼんやりと天井を見つめた。
「・・・・・・・いい加減我に体を明け渡せ。この先、見なくてもいいものを見せられることになるぞ」
「ふざけんなよ、俺が生きてる限りそんなことさせるかっつーんだ」
けっ、と下品に舌打ちを返しながら、ポップは負けん気の強い瞳で黒い塊を睨んだ。こうした会話を交わすようになって、もう二年近くがたつ。
ミストは己の黒い霧のような体で少年を見下ろしながら、瞳に映る意志の強い光を眩しそうに眺めた。
「そうは言っても、貴様がここにいる限り人間どもは何もできまい。現に、二年もたつのにここへ来ようともせぬではないか」
「うるせー・・・どうせ、俺は死んだと思われてるからいいんだよ」
ぷい、と顔を逸らして黒い霧の中に顔を伏せてしまう。ミストはふわふわと揺れる己の体を持て余して、ころころと表情が変わり、また感情の起伏の激しいポップを興味深げに観察した。
「すでに、竜の騎士も存在しないのに、か?」
「ダイは死んだりしない」
「そう思うのは勝手だな」
ポップの確信を込めた言葉に、毎度のことながら呆れを通り越して感嘆すら浮かぶ。どうしてこんなにも頑ななのか、ミストは己にはない感情に困惑して黒い空気のような体でポップの体をぐるりと一周した。
「お前らにはわからないんだな・・・・・・俺を生け取りにしたってなんにも起きねえよ。ダイはそこまで馬鹿じゃない」
そう言いきってから、いやしかし多少不安ではあるなと思った。
あの猪突盲進な勇者様は、ポップのことになると、目先がみえなくなることが多々あった。姫君が倒れるよりも、ポップが傷つくことに敏感かもしれない。それは彼が一度でも勇者のためだけに命をおとしている所以だろうか。
彼が傷つき地に伏す姿をみたくないと叫ぶように、ダイは最後までポップを救おうともがいたのだから。
そこまで考えてから、ポップは純粋な黒色の瞳にうっすらと涙の膜を張った。今こうして敵の手に落ちていることが、彼に対してどれほどの苦痛を与えていることか。
死を覚悟して大魔王に挑んだが、まさかこんなことになるとは思いもよらなかった。体を奪われ、意識を奪われ、抵抗を続けてもう二年。
しかし、ミストの存在がポップの意識を奪う時間が徐々に長くなってきているのも事実で、ポップは冷静に、後どれだけこうして憎まれ口を叩いていられるだろうかと時折焦燥感に駆られる。
高い窓からかすかに漏れる太陽の光が日に日にか細くなっていくのを感じながら、ポップは挫けそうになる心を叱咤して強く唇を噛み締めた。
「・・・・・・飯、腹減った」
「なんだと?」
「いつも言ってるだろ、俺は人間だから腹が減るんだよ!!いつになったらあんたは覚えるんだよ!!」
毎日こんな会話してるじゃねぇかと叫ぶ悲鳴のようなポップの喚き声に、ミストは軽い殺意を覚えつつふらりと己の中に集まる霧を少しだけ飛散させていつものように食事の合図を送る。
そうすると見計らったように運ばれてくる料理にポップは腑に落ちない何かを感じながら、それでも無言で用意された食事に手を出した。
「まったく人間とは不便だな・・・・・・」
「あんたの主人だってちゃんと飯ぐらい食うだろ」
がつがつと肉にかぶりつくポップの姿を少し離れたところから眺め、ミストは宿主の食事風景を興味深く観察しつつ、呆れたため息をついた。



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2009/9/15
せっかくなので早速更新。
おバカなポップになっちゃった・・・でも15歳くらいってこんぐらいうるさくておバカちゃんですよね。
じゃないとこっちがいたたまれない!
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