先に結論から言うと日テレは応募できなかった…。
「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」が発表されたとき、日本全国の脚本家志望の人間は思っただろう。
「なんで日テレと同時復活なんだよ!!!」
そして恐らく日テレの局員もTBSの局員も同じことを思っていたはずだ。
「日テレさん(TBSさん)、かぶせてこないでくださいよ~…」
とくに日テレの方は頭を抱えただろう。
TBSのシナリオコンテストは2017年まで「TBS連ドラ大賞」として開催されており、休止の発表もまだ多くの志望者の記憶に残っていることだろう。
とくにTBSは大手テレビ局主催のコンクールで唯一の「連続テレビドラマの企画・シナリオ」の募集ということでテレビドラマを書きたいと思っている人間にとってはもっとも重要なコンクールだっただけにその復活は待望されていた。
対して日テレの方はといえば…。
調べてみたところ2005年まで「日テレシナリオ登竜門」という名でコンクールを開催していたようだ。
知らなかった。今シナリオライターを目指している人の中で存在を知っている人はいてもリアルタイムで投稿していた人は少ないだろう。
もう当時日テレシナリオ登竜門に応募していた人はプロになっているか、もしくは夢と現実に折り合いをつけ別の人生を歩んでいるはずだ。
だからどうしても「待望の復活!!」という感じがしない…。
さらにTBSが「連ドラ」という要素で他のコンクールと差別化できているのに対し、日テレは枚数こそ違えど他のコンクールと同じように単発の企画だ。
さらに締め切りがTBSの方が早く、燃え尽き症候群にかかってしまう志望者が多くいるのではないか、というのも懸念事項の一つだ。
日テレの担当者さんは頭を抱えたことだろう。「TBSさんよお…!」
そして僕もその燃え尽き症候群にかかってしまった一人だ…。
非常に悔しい…。
いや、以前このブログでも書いたようにNHK、TBSと不作が続いたので「今回は無理には出さない、思いついたら書く」というスタンスで挑んでいたので本来ならこんなに悔しがる必要もないはず。
しかし、思いついてしまったのだ、日テレに出したい企画を。
締め切りの三日前に。
今回で再確認したのはやはりインプットの重要性だ。
TBS終わりからしばらくは仕事が忙しくなりシナリオを書こうという意識が薄れていた(絵に描いたような燃え尽き症候群だ)。
終わってから三週間と少したったある日家でとある映画を見ていると急に頭に「ビビビビビ!!!」と刺激が走った。
その映画というのが山内ケンジ監督脚本の『ミツコ感覚』という映画だ。
前のブログでも書いたが僕はなにかしら映画やドラマを見ているときに、自分のオリジナルのキャラクターたちがその映画と同じ世界で生きているような感覚に陥ることがあり、そこからイッキに作品が書けるときがある。
まさにそれが起きたのだ。
ミツコ感覚の世界で僕のキャラたちが動き出した。
元々山内ケンジ監督のことは『友達のパパが好き』という映画で知っていた。
ぶっちゃけ変な映画である。登場する人物みんななにかしら奇妙奇天烈な感情を持っているように思う。
でも僕の書きたいテーマの一つが「人間って普通に必死に生きているのを外側から見るとそれだけでだいぶ面白い」というものなのでまさに僕にピッタリの監督だった。
『ミツコ感覚』のどのシーンで「ビビビ!」とやらがきたかといえばだいぶ冒頭のシーンである。
姉の同級生であると主張する男と主人公が「嘘よ!」「嘘じゃないです」と言い合うシーンだ。
僕はこういうの映画の中で繰り広げられる生産性のない会話が大好きだ。
人生の無駄な瞬間ほどなにか価値があるように思えてならない。
何も意味のない会話を見て僕は腹がよじれるほど笑った。
どれだけビビビ!と来たかといえば…。
『ミツコ感覚』を途中で停止するほどだ。
山内監督に謝りたい。
『ミツコ感覚』があまりに良すぎて、脳が刺激されすぎて、アウトプットが止まらなくなってしまったのだ。
停止して四時間ほどかけて約20ページほどノートに書きなぐった。
それもプロットとかでなく、登場人物たちの深堀と使うかどうかもわからないシーンの羅列である。
『ミツコ感覚』のおかげで僕の中に四人のキャラクターが生まれた。
そしてこの四人がどう絡むのか、特定のシチュエーションに巻き込まれたらどんな対応をするのかを考えるのが死ぬほど楽しい。
そしてそれを考えているうちにキャラの新しい特徴を見つけることができる。
そしてそれを見つけると新たなシーンが思い浮かぶ。
無限ループが出来上がってしまった。
締め切りまで時間がなかったのもあるが、この作業が楽しくなりすぎて終わらせてくなくなってしまったのだ。
もうだいぶキャラを深堀できているので無理にでも適当な構成さえ用意すれば形にはなっただろう。
でももったいなくてできなかった。
きっと彼女らなら僕が構成を用意するまでもなく、自分たちが歩むべき結末を勝手に見つけてくれるのではないか、と期待してしまったのだ。
これだけ楽しくシナリオのことを考えることができているのは何年か前に書いた『竹子、結婚を考える』という作品以来だ。
あれもコンペでは成績を残せたわけではないんだけど、でも自分の中で一番と言っていいほど愛着のある物語になってくれた。
今書いている話もそうなってくれるのではないかとわくわくしている。
このシナリオに着手できたのは明らかに『ミツコ感覚』のおかげだ。
そしてもちろん「日テレシナリオライターコンテスト」の存在も大きい。
途中までは日テレに出すために書いていた。それにそもそもこのコンペの存在がなければ「なにか書かなくては」という意識すらなかっただろう。
本当に日テレさんには感謝しているし、だからこそ出したかった。
悔しい。
なので日テレさん。
ぜひとも今年だけじゃなく、来年も開催してください。
来年には絶対賞をとれるような作品を持っていくので。
…まあ今書いているのはヤンシナに応募するつもりだけど。