5日前からわが家に住み始めた、
ウッタルカンド州の村からやってきたモヌ 。
彼がデリーに来たのは、勉強のためである。
両親が辛い思いをしてまで彼を都会に送り出したのも、
彼が人間としてより良いマナーを身につけ、
より良い教育を受けるためである。
彼もそれを望んでデリーにやってきたが、
11歳の子供には、まだ事の重大さが分かっていないところもある。
インドの田舎と都会では、日本とは比べ物にならないほどの
教育の質の格差が存在する。
裕福な家庭に育ったデリーの子供は、
幼少の頃から英才教育を受け、
家庭内でも英語を話し、一流の私立学校へ通う。
方や、田舎の学校は、「とりあえず行っておけばいい」
という感覚であることが多いそう。
モヌが通っていた村の学校の英語の授業にしても、
会話の練習などはせず、
子供には全く意味の分からない、かなりハイレベルな
英語の物語をひたすら丸暗記させ、
暗唱できなければムチで叩くという、
何の意味も成さない内容である。
「もっと勉強がしたい」
という、純粋な思いを持ってデリーへやってきたモヌであるが、
彼はこれから、幼少の頃から全く異なる教育を受けてきた
子供たちと競っていかなければならないのである。
デリーの学校は、
ヒンディー語で授業を行う公立の学校と、
英語で授業を行う私立の学校に分けられる。
公立の学校は学費も安い(または無料)が、
教育の質は私立の学校に比べてかなり劣っていることが多い。
また、インド社会では英語ができるできないで、
職業の選択肢に差が出てくる。
したがって最低限、英語で授業を行う私立学校に入る必要がある。
モヌがデリー来る前から、私立学校を下見していた。
しかし実際に彼がデリーへ来てから私立学校の試験を受けてみたら、
彼は1問も問題を解くことができず、全て0点であった。
田舎と都会、公立と私立の学校では、
同じ学年でも学んでいる授業の内容に大きなひらきがある。
まして、試験の問題文は英語で書かれていた。
全くと言っていいほど英語が話せないモヌに、解けるはずがなかった。
友人ラメシュさんも私も、学年を一つ落として
(本来、モヌは今度7年生になるが、6年生に入って)
私立学校に通わせればよいと考えていたが、甘かった。
試験を受けたあと、その私立学校の校長には
「2学年落とすのであれば入学を許可するが、
それでも彼が授業についていくのは至難の技だろう」
と言われる有様であった。
私たち夫婦は悩んだ末、まずは彼を公立の学校に通わせることにした。
公立の学校に1年通わせ、その間に英語の家庭教師をつけ、
みっちり英語を学ばせる。
(必要であれば他の教科も家庭教師をつけるが・・)
そして1年後、私立学校に再チャレンジすることした。
わが家の周辺にいくつか公立の学校があり、
最近はその学校を回って、入学が可能かどうかを調べている。
公立の学校でも、比較的教育の質がいいところは、
定員がいっぱいだったり、
モヌの学力面から入学を許されないこともあり、
そう簡単に事が運ばない。
昼間は40度近くになるデリー。
炎天下の中、しかも対応の遅いインドで
学校を回るのは骨の折れる作業であるが、
モヌのためにも妥協するわけにはいかない。
少しでもいい学校に入れるよう、毎日必死である。