皆様こんにちは!モトクラシックの天野です。
前回に引き続き、イギリスの若者文化について紹介していきます。
今回はご要望のあった「TEDDY BOY」(略称:TEDS/テッズ)について紹介していきます。
なかなか古風かつ派手であり、尚且つ、UKユースカルチャーの始まりとも言えるスタイルなので、是非最後まで読んでいただけると嬉しいです。
それでは本題に移りましょう。
TEDDY BOYとは
TEDDY BOYとは、1950年代にイギリスの若者の間で広まったスタイルで、当初は「エドワーディアン」と呼ばれていました。
その由来として、エドワード7世がイギリスを統治していたころ(1901~1910)の貴族階級の服装を基盤としたファッションをしていました。
(1900~1910年代の英国貴族階級の服装)
1950年代当時のイギリスではアメリカに夢を抱く者が多くいました。チョコレートやダンス音楽など、当時の多くのものがアメリカを想起させるものであり、その中に映画もありました。アメリカが1920年~1940年の間ゆっくりと時間をかけて築き上げていたものが、イギリスでは一気に流れ込んできた為、アメリカの文化、生活、多くのものが視覚化されました。それによってその20年間のものが、強烈なインパクトを伴って現実化しました。
1940年代当時のイギリスは、アメリカによる武器貸与法の廃止により、一気に経済が暴落し、その結果、配給制を続けざるを得ませんでした。そんな中登場したのが「スピッヴ」と呼ばれる闇屋でした。民衆の欲しがるものを調達しては売買する彼らの格好は一目見ただけでわかるものであり、派手な色のネクタイにズートスーツといった1940年代にアメリカで流行し、当時のアメリカに夢を抱くイギリスの民衆の最新のファッションに身を包んでいました。
(ズートスーツを着るアフリカンアメリカン)
(スピッヴと呼ばれる闇屋の服装)
この肩幅の広く大きなアメリカンスタイルに反発するように生まれ、過去の優雅な時代への回帰を目指したのがエドワーディアンスタイルで、当時の上流階級はヴェルヴェットの襟、装飾的なヴェスト、細身のネクタイなどの全体的に細身のシルエットに身を包みました。1949年にはこのエドワーディアンスタイルは上流階級の中では廃れてしまいましたが、1950年代初めになると、今度は当時の不良少年の間で取り上げられ、彼らはエドワーディアンスタイルを簡略化し、さらにズートスーツ的要素を取り入れたものもいました。ゆったりとしたジャケットに細身のスラックス、そしてズートスーツ的要素である派手な色の靴下や、大きいラバーソールの革靴などがその例です。
1952年に「EDWARDの簡略形=TEDDY」という理由から「TEDDY BOY」と呼ばれるようになりました。1950年代初頭になり、配給制などの緊縮生活の終わりが見え始めると、若者たちもまともな稼ぎを得られるようになり、それに伴ってそのお金の使い道を探し始めました。しかし、当時の若者市場は娯楽、ファッション、食べ物などが非常に限られていて、時間と金はあるのにやることが無いといった状況でした。そして彼らは刺激を求めるために非行に走り、本格的に犯罪行為に走る者もいました。あくまで目的は犯罪行為そのものではなく「刺激」だったのです。メディアはそれを取り上げ「TEDS=人殺し」のイメージを決定づけました。そして、この暴力的なイメージこそがティーンエイジャーの理想像として若者の間で爆発的な成功を見せました。
そして彼らのスタイルは瞬く間に拡散され1950年代当時の若者のファッションはTEDS一色でした。彼らが特にこだわったのは髪型で、もみあげを伸ばし、リーゼントに決め、サイドはヘアオイルをたっぷりつけ後ろに流すといったスタイルで、これは「ダックテイル」と呼ばれていました。
そして1955年にはアメリカから「ビル・ヘイリー」の「Rock Around the Clock」がリリースされ、その翌年にはエルヴィス・プレスリーやチャック・ベリー、リトル・リチャード、ジェリー・リー・ルイスなどロックンロール黄金期が到来し、それがTEDSの行動にさらに火をつけ、過激化していきました。そして、彼らはTVメディアに取り上げられ、さらに全国的なブームになりました。しかし、これは今日にも言えますが、TVメディアに取り上げられた後には、もう目新しさはなくなり、流行というものは去っていきます。このようにしてTEDSは次第に終息を迎えることになります。
しかし、このTEDS誕生から終息までの軌跡は、数ある若者文化の基礎を作ったともいえるでしょう。アンダーグラウンドから始まり、その中で成長してきた彼らのスタイルがついに抑えきれなくなり、表舞台に出ることによって、メディアに取り上げられ、更に多くの人々がそのスタイルに魅了され、真似をし、それが大衆化してしまうと目新しさがなくなり、終わりを迎え、次のスタイルが台頭してくるといった流れです。
終わりに
今回はTEDSについて紹介しました。イギリスユースカルチャーの起源ともいえるだけあって、非常に濃い内容でした。僕の目には70年前のスタイルとは思えないほど、新鮮かつカッコよく映りました。また皆様の生活に今回の記事が反映されるかどうかはわかりませんが、エドワーディアンスタイル、ズートスーツ、TEDDY BOYスタイルはどれもめちゃくちゃカッコいいと個人的に思います。僕はまだ大学生ですが、お金を貯めて、ダブルのスーツを作ってバイクに乗ることが夢の一つとしてあります。今回の記事が皆様の日常のほんの少しの支えになれたら、非常に嬉しいです。
また、次回以降の投稿ですが、文献を読み進めて、「面白いな」と思ったものを上げていこうと思いますので、多少期間は空くと思いますが、お楽しみにお待ちください!
「〇〇を紹介して欲しい!」や例えば「〇〇のユースカルチャーの好んだブランドが知りたい!」などありましたら、可能な限り調べて記事にしようと思うので、是非コメントにお願い致します!
参考文献:
・イギリス「族」物語 /ジョン・サベージ 著/岡崎真理 訳 (第一刷1999年2月5日 発行:毎日新聞社)
・誰がメンズファッションを作ったのか?英国男性服飾史/ニック・コーン 著/奥田祐士 訳 (初版発行 2020年12月10日 発行:DU BOOKS)
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