自転車で糖尿病を克服した! -139ページ目

クロスバイクの栄光と挫折【最終章】

2007年4月のある日のこと。

午後4時をまわった頃だろうか、私はとある仕事で都内中心部へ出かけ、その帰り道、走り慣れた国道246号を世田谷方面へと下っていた。渋滞はそれほど酷くない。私は快調なペースで三宿を通り過ぎ、三軒茶屋の交差点の混乱もなんなくすり抜け、右手に世田谷郵便局を見ながら、微妙な上り坂に差し掛かるところだった。

もちろん「ジャイアントホープ」ことジャイアント・エスケープR3はいつもにも増して快調だ。48×17のギアで足も快調に回る。ケイデンスも90前後をキープ、時速30kmを超える速度で、我が町「世田谷B地区」を目指す。

思えば去年の1月にこいつを購入してからというもの、よく走ってくれたなぁ。去年の10月に「ピナレロ君」ことピナレロ・アングリルが来てからは“セットアッパー”というかたちで実用目的のコミューターとしての役割が与えられたが、それでも文句ひとつ言わず(普通言うか?)、こうしていつも適切な性能を発揮してくれる…。

日本の4月は気候的には最高だ。今日も暑過ぎず、寒過ぎず気温にして20度前後だろうか…、さすがに自転車を漕いでいるとちょっと汗ばむが、むしろ身体にあたる風の気持ちよさが感じられて最高に気持ちいい。空気の汚れ具合を度外視すれば、の話だが。

これがもっと緑の多い、空気の澄んだ田園だったらさぞかし気分がいいだろうな、見渡す限りの牧草地帯を通り抜ける1本のフラットな舗装道路だったらどんな気分なのだろう…。いつかヨーロッパに行って、現地でロードバイクを調達して、向こうの田舎道を走る。良さそうだな。あ、そうだ、確か「エタップ」というのがあったよな。ツール・ド・フランスのコースをそのまんま走るというやつ。レースの前日か翌日かにプロが走るコースとまったく同じルートを何千台もの自転車で走る~つまりグランフォンドというやつになるのかな…。これはちょっとした夢だな。いつかは必ずやってみたいな…。

自転車で走るという動作に集中しているにも関わらず、頭の中で考えることはとりとめがない。

微妙な上り坂に差し掛かるので右手の親指はシフトレバーを操り、1段づつシフトダウンしていく。環七との交差点に到達する頃には、おそらくアウターでの一番軽いギア、48×23くらいにはなってしまうはずだ。調子が良ければ48×21で行けることもあるが、今日はどうだろうか。

そう、その「エタップ」、聞くところによるとかなりキツいらしい。参加した日本人のひと月の平均走行距離は確か750kmくらいだとか。まあ、その点に関してはオッケーだな。最近は結構走ってるから。問題はそのコース設定だ。たいていアルプスとかピレネーとかの山岳コースが使われるみたいだから、その辛さは半端じゃないだろうな。誰かのレポートだと11時間くらいかかったとか…。あ、あの河口湖任務のときはもっとかかったから時間的には問題はないけど、そんなコース、自分が登りきれるかな…、練習が必要だな、きっと。

「ジャイアントホープ」は上馬の交差点(=環七)を通り過ぎ、駒沢大学駅前を通り過ぎる。このあたりは駐車車両が多く、非常に走りづらい。細心の注意で右後方を確認しながら駐車車両のすぐ脇を通り抜ける。

そういえばつい最近、トラックのすぐ脇を通り過ぎるとき、荷物か何かの積み込みをしていたトラックドライバーがいきなり後方の確認もせず、運転席に戻ろうとしたのか道路に出てきたことがあったよな。あのときは危なかったな。あと30cmくらいでぶつかるところだった。自転車はほぼ無音だし、まして結構スピードが出ることがあまり認識されてないから、気づかず人が出てくることもあるよな。それは気を付けないと。駐車車両との距離は余裕を持たないと…。

お、自転車だ。

マウンテンバイクだ。

ケイデンスが遅い。MTBルック車だ、きっと。

ケイデンス=足の回転の早さって、遠くから見てもその自転車のスピードを計る目安になるな。ロードバイク乗りや、乗り慣れているサイクリストだとたいていケイデンスが90近くは回ってるから、少なくとも25km/h以上は出てることがわかる。だけど、ママチャリ乗りやマウンテンバイカーでもあまりスピードを出してない人は極端に足の回転が遅いので、自分との速度差がかなりあることがすぐに見て取れるから追い越しは楽だ。ただ、そういう人たちって、全然後ろを確認してないことが多いから注意して抜かないと。

左側にエッソのガソリンスタンドを見ながら「ジャイアントホープ」は先へと進む。このあたりからは信号ストップもそれほど多くなくなるので、割と高めのスピードを保ちながら、気持ちよく走れる区間だ。

だが、今日は、いや今日もと言った方がいいだろうか。駐車車両の多さは相変わらずだ。

このあたりは、例の「トレックディスカバリ」つまりトレックのロードバイクとの長い長いバトルになったところだな。一旦は勝ったと思ったのは確かもうちょっと先だったかな。飛ばしてる自転車がいても今日はレースはしたくないな。ゆっくり、いや普通のペースで走っていこう。

「ジャイアントホープ」は駒沢の交差点をタイミング良くとおり抜ける。時速は30km/hを再び超える。

後方から何やら大きなエンジン音だ。大型トレーラーだ。たぶん時速40km/hほどは出ているのだろう。速度差は10km/hあるかないか。ゆっくりと右側を追い越して行く。トレーラーとの距離は約1メートルほど。うかつに近寄ると危ないから慎重に行かないと。

それにしても長いトレーラーだ。普通の大型トラックより明らかに長い。右側を追い越しているのだが、まだ後端に達しない。まだだ。まだだ。やっと追い抜いてくれた。

その直後だった。

あ、と思った。

左側に幌付きの小型のトラックが駐車していた。私はその右側をうまくすり抜けられるはずだった。

私には何が起きたのか一瞬わからなかった。

何かが「ジャイアントホープ」のハンドルの左側に付いているバーエンドに触った。そのシーンだけははっきり覚えている。

「ジャイアントホープ」のハンドルがいきなり90度左側を向いた。

え、

そこからは「マトリックス」で登場した特殊SFX撮影のような可変速度の断片的なイメージしか思い浮かべられない。音は何も聞こえかった。そして、自分の身体の動きをコントロールすることもできなかった。

クルマの騒音が音として認識できるようになったときには、私は全く想定外の方向を向いて道路に寝転んでいた。もちろん自転車には乗っていない。右肘を打ったようだ。そこだけが痛い。よくは覚えていないが頭もちょっと打ったかも。

ただ、意識ははっきりしている。ちょっと記憶が一瞬途切れただけだ。

そのまま立ち上がる。あれ、自転車、「ジャイアントホープ」はどこだ?

私の後方約3メートルのところ、左から2番目の車線のど真ん中に「ジャイアントホープ」は転倒していた。右側に倒れているので、ディレーラーがダメージを受けていなければいいが。すぐその後ろにシルバーのクルマがいる。停車している。

別に誰からも声はかからないし、誰が見ている感じもしない。誰かが心配してくれている感じでもない。

私は「ジャイアントホープ」のところまで行き、自転車を起こすと、そのまま押して歩道に上がる。タイヤの動きがおかしい。前輪が明らかにダメージを受けている。

シルバーのクルマはどうやら動き出したようだ。夕方近くの国道246号は何事もなかったかのように、早くも通常の交通状態に戻っている。

あれ、サングラスがないぞ。お、それに腕時計が壊れている。盤面のガラスがなくなっている。時刻はきっちり4時10分を指して止まっている。

サングラス、サングラス…。

私は自分より5メートルほど先の一番中央寄りの車線にサングラスらしきものがあるのを発見した。原型をとどめていないことはこの距離からでもわかる。クルマに踏まれてしまったらしい。つい最近、A子にプレゼントしてもらったばかりのスポーツサングラスだったのに。1万2千円だったかな。この瞬間の私の最大のショックはこのサングラスのことだった。

ようやく状況が飲み込めてきた。

私はトラックの幌に引っかかって、大転倒したのだ。

落車だ。それも思いっきりド派手な。

冷静に考えると、あの後ろに停車していたシルバーの乗用車は相当驚いたはずだ。だけどそのまま行ってしまった。それが東京か…。

ヘルメットを見ると左側面に1つ、明らかな新しい傷が付いていた。

あ、頭をちょっとだけだけど打ったみたいだ。ヘルメットがなかったらヤバかったかも…。あと痛いのは右肘だ。骨が折れているとは思わないが、結構痛いゾ。

道路って堅い!

それが第二の感想だった。

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解説

これは今をさかのぼること約半年前に起きた真実だ。私は小型トラックの幌に、走行中に触ってしまい、ハンドルがいきなり直角に向いてしまったために、柔道の背負い投げよろしく、空中に放り投げられ、1回転して地面に叩き付けられた、というわけだった。

速度計は直前には見ていなかったが、おそらく時速30km/h程度は出ていたことは確実だ。少なくとも時速25km/hだったということはない。自転車復活して以来のはじめての落車だった。一度も転倒したことのない「ジャイアントホープ」をはじめて転倒させてしまったのだ。

原因は“私の不注意”。それしか考えられない…。と思っていた。

誰でも経験があると思うが、家の中を歩いているときに足の小指を椅子の足などに思いっきりぶつけたことはないだろうか…。アイタタ、タ、え、どうして、ぶつかっちゃうの???という感じ。まさにそんな感覚だった。

だが、最近、原因となる別の要素があったのでは…ということに思い当たった。

風だ。

駐車中の小型トラックの幌と接触する寸前、私の右横を超大型トレーラーが追い越して行った。かなり長かったのを覚えている。私が幌と接触したのはまさにその直後のこと。もしかしたらトレーラーが巻き起こす風の影響があったのかも。ほぼ80パーセントの確信を持って、私はそのことを言える。

大型トラックの巻き起こす風は実は結構強い(もし大型トラックの運転手の方がこのブログを見ることがあったら是非そのことを認識して欲しいと思う。軽量な自転車にとってはそれは思った以上の脅威になり得るからだ)。だから、私はその超大型トレーラーの追い越し終了直後にその後ろに引っ張られるかたちになったのだと思う。私は無意識でそれとは逆方向に自転車を誘導した。ほんのわずかだったと思う。それがほんの数センチの違いを生んでしまったのかもしれない…と。

もちろん私の100パーセントの注意不足だった可能性も否定できない。だから決してその超大型トレーラーを責めているわけではない。だけど、自転車乗りとしてはこんなことも起こり得るということを肝に銘じておいた方がいい、と思った。そういう意味では私にも“傲慢さ”、あるいは“過信”があったのかもしれない。いや、確実にそれがあったと思う。それ以来私はより慎重になった。

そして転倒した「ジャイアントホープ」のすぐ後ろに停車していたシルバーの乗用車のこと。もしかしたらこのクルマは急停車して二次災害を避けてくれたのかもしれない…私は彼(彼女)によって救われたのかもしれない。だとしたら感謝してもしきれない。どなたかは知らないけれど、本当にありがとうございました。

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そして「ジャイアントホープ」と私自身のダメージのこと

「ジャイアントホープ」は、サイクルベースあ○ひで見てもらった結果、フロントフォークが大きく曲がっていることが発覚。フロントフォーク交換をすることになった。フレームにもハンドルが大きく切られた際についた傷があったが、これはタッチアップで対処。フレームそのものには変形等はなく、そのまま使用可能だった。この件でジャイアントEscape R3のフレームは結構丈夫だ!ということが判明した。もしこれが軽量なカーボンだったら…。きっとフレーム交換だったろう。

リアディレーラーとリアエンド、それにホイールは調整するだけで問題はなくなった。他にも多少の傷はついたかもしれないが、特に気になるレベルのものはない。

新しいフロントフォークが入荷するまで、実は約2ヶ月間近く待たされた。これにはちょっとしびれたが、結局、1ヶ月半以上経っても部品が本国台湾から送られて来ないことに業を煮やしたジャイアント日本支社は、07モデルの完成車エスケープR3からフォークのみを取り外し、私のために用意してくれた、と聞いている。ありがとうございました。

私? あ、私に関しては、その後約1週間ほど肘が痛かったが、それだけだった。別にどこもおかしくない。ぴんぴんしている。不幸中の幸いに感謝したい。神様、ありがとうございます。

そして、こんなに長くなってしまった、私の個人的なアクシデント話をここまで読んでいただけた方々、ありがとうございます!!!(また「続く」になってしまうかと思ったです)

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次回は体重75kg以上の「重量級サイクリスト」必見! 「軽量級サイクリスト」に勝つための秘策!


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