阿波屋みろく | 美塾塾長 内田裕士オフィシャルブログ「人のために美しく生きる」Powered by Ameba

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終電近く、晩御飯を食べずに帰ると、

僕は町屋で
阿波屋によく寄る。


カウンター6席
調理場を入れても

推定2坪ほどの小さな小さなお店だ。



僕は必ず


「抹茶割り」を頼む。



親父はお湯でしぼったおしぼりを


ほおり投げる。



それで手を拭く。




冬は温奴頼むのだが、

この季節はこれが無くなるので、

長~いことメニューの黒板を眺めながら



抹茶割りを飲む。





今日は


かにミソを頼むことにした。




いつもは缶詰のかにミソをパカッと開いて

出してきたのだが、


今回親父がぼそっと


「温かくする?」


と聞いてきた。




ドキドキしながら


「ハイお願いします。」



と答えた。





そうすると親父は

かにミソの缶を開けるとアルミホイルに


バチャッ



と投げつけるように出して


火にかけた。



お客さんは僕の他に3人。


奥のおっさんは8割はあの席にいる。


その1つ手前のおっさんは6割はあの席にいる。


隣にいる女の人は初めて見る。




僕がいるのは・・・・



月に3,4回程度。




とびらはあけっぱなしだから

大抵は虫が飛んでいる。



今日も飛んでいる。




親父が


ふいに

炊きたてのご飯を小さい小鉢に入れて



壁際の棚に乗せた。




神棚だ・・・。




いつもガスコンロで見えなかった壁には

神棚があって

親父は毎日そこにご飯をお供えしていたのだ。




その神棚の隣には


「おばけ煙突」


の写真が飾ってある。




僕は「こち亀」でしか知らない

おばけ煙突。


彼らは生の、おばけ煙突と荒川区で生きてきたんだなぁ。





かにミソHOTが出来た。



笑えるほどに美味い。



酒の入れすぎで

まだアルコールが飛んでいないが美味い。




ここの料理は驚くほど簡素というか手抜きに見えるが

顔がにやけるほど美味い。




ろくに拭いてない濡れた皿に

適当に切って出してくる初がつおも美味い。


O-157も豚インフルエンザもBSEも

関係無い。


衛生面での留意なんて関係無い。



美味い物を切って出す。



食べたい奴が食べる。



腹壊しても誰も訴えないだろう。




店が混んできて

どうなるかと思っていたら外のイスの前に

空きびんのケースと立てかけていた板を使って

テーブルが出来た。


作ったのは8割の男。



外の客がモジモジしていたら


「マスター、俺がテーブル作ってやろうか?」


と言い設置を始めた。



8割の男の言葉に

ほとんど返事をしない親父。





外の客が頼んだそば茶割り2つを


親父は中の客に、渡すように「ホレ」と差し出す。



中の客は当然のようにそれを外の客に渡す。





僕はニコニコしながら店を見渡しながら


抹茶割りを飲む。





隣の女が意を決して


「マスター、美術館のただ券もらったからあげるね。

 っていうかできれば一緒に行きたいんだけど・・・」



と想いを告げた。



おやじはすかさず


「俺そんなヒマ無いよ!」



とフる。




落ち込む隣の女に



「たたみいわし食べる?」




と親父が聞く。



女はうん。と答える。





隣の女は酒をこぼして、

自分のおしぼりと

1つ奥の6割男のおしぼりを使って


テーブルを拭く。



「隣のお客さんのおしぼり使っちゃったから

 マスター、彼に新しいおしぼりをあげて。」



と言う。



親父は

「いいんだよ!その人は使わないんだから! 

 うるさいなぁ・・・。」



と女を叱る。



女はしょぼんとする。




そして女は僕にたたみいわしを一切れくれる。





外のテーブルは許可なんて取っていないだろう。




でも荒川警察は親父を裁かないだろう。





しめに必ずおにぎりを食べる。




ここは通称

「おにぎり屋」


と呼ばれている。



おにぎりがべらぼうに美味いのだ。




神棚にお供えするのはご飯。




親父にも自負があることが

あの供えた瞬間に伝わってきた。




筋子と鮭の親子おにぎり。




頼むと親父は



毎回まったく同じ作業をする。



まず最初に

海苔の入った

オレンジアルミケースの上に乗っている

芋の入ったざるをどかす。




この作業があまりに

のっそりたまたまなのに毎回全く一緒なように見えて

感動する。


イチローのネクストバッターサークルとは

違う。


意図的でなく、意識していない。




なのにまったく同じ。





そして親子おにぎりは美味い。



本当にめちゃくちゃ美味い。




阿波屋は100年後もあるだろうか。




阿波屋に追いつく現代を築きたい。