ある日の夜、僕の家族を乗せた1台の車が信号待ちをしていました。すると、遠くから1匹の片目の開かない小さな黒猫が、信号待ちをしていた車の所へ向かって走ってきました。

必死に『助けて』と言ってるように思い、万が一危険な状況なら尚更見過ごせない猫好きな運転手達は、黒猫を車に乗せて保護しました。

すぐに家に戻り、黒猫の身体を綺麗に拭き・温かいミルクを飲ませたところ、知らない所にはいるけれど、助かったと思ったのか落ち着いた様子の黒猫。

この子の今後について話し合った結果……まず、動物病院に連れて行く事になりました。

動物病院へ行き、目やその他の細かな検査をすると、体内に寄生虫がいる事がわかり、更に身体の悪い部分があちこち見つかりました。一緒に猫を保護した僕の家族は、決して裕福ではないけれど、この子が健康的な身体を取り戻し、家族として共に生活出来る事を願い、治療してもらう事に。

そうして、黒猫の名前を【シーサー】と名付け、共に生活をしていく事になってゆきます。


手の平サイズだったシーサーは、あっという間に大きくなり、身体の悪かったところも無事に完治し、寄生虫もいなくなり、開かなかった目もレーザー治療で無事に開くようになりました。シーサーはどんどんと成長し、ジャンプ力のある逞しい黒猫に育っていきます。

唯一、苦手だったのは人間の小さな子供。ある日、子供が遊びに来た際に、尻尾を掴まれ握られたのが原因で子供を避けるようになったシーサー。でも、決して怒らず攻撃する事はありません。威嚇する姿も見た事のない優しいシーサーなのですが、仕事から帰ってくる僕等に見せしめのように、玄関にビリビリに破いた雑誌を置いていたりするヤンチャな一面も。

だけど、僕に辛い事があり泣いていた時、何も言わず長い時間膝の上に居てくれた優しいシーサー。仕事から帰ってくると僕の胸の上で寝転び、ゴロゴロ鳴らしながらヨダレを垂らす。本当に可愛いシーサー。

そんな大好きなシーサーと離れ、僕は夢を追いかけ東京へ。


シーサーと母親の新たな生活が始まります。

相変わらず母親の事も大好きなシーサーは、寝る時は必ず母親のベッドで寝る。

久しぶりに僕が家に帰っても、最初だけ他人のような対応をしてくるけど、思い出したら喉をゴロゴロ鳴らしてきてくれる。

バカやな俺。こんな思い出書いてたら、シーの事を思い出して辛くなるだけやのにな。

でも頑張って書いていく。






この全ての日記を書く、3日前に書いた日記

【家族になってから15年目の現在、2013年頃から糖尿病と腎臓病を患い、闘病生活を送っていた。

安定したり悪化したりを繰り返し5年が経った現在。身体も弱り、立つ事さえ出来ないくらいになってしまいました。嘔吐・失禁を繰り返し辛い思いをしている。

何が今のシーサーにとって幸せなのか。それはシーサーにしかわからない。でも、病気が少しでも良くなって、元気になってくれる事が家族にとっての願いです。今、シーサーは何を考え、何を望んでいるのかはわからないけれど、シーサーと僕らの気持ちが同じだということを心から望んでいます。最後の最後まで。】





だけど




どれだけ願っても別れの時はやってくる。



いつものように母親がシーサーに治療のために使うインスリン注射を打つ時間、シーサーが急に手足を伸ばした後、神様に祈るように両手を合わせていたそうです。その後、すぐに息を引き取った事に気がつかず、インスリン注射を打っている最中に亡くなっている事に気がついたそうです。

最後の最後に気づけず、インスリン注射を打っていた自分、長年一緒に暮らしてきた大切な家族を亡くした悲しさ。色んな思いが溢れて酷く泣いたんだろうと思います。

そして、母親は言いました。唯一の心残りは、シーを腕の中で看取ってやれなかった事だと。

我が子のように愛していたから、その辛さは痛い程伝わるよ。離れて暮らしている俺でもこんなに辛いんだ。きっと母親は今も相当辛いんだと思う。

動物病院から大量に貰ってきたインスリンの注射だけが残って





それでも、最後は15年間一緒に居てくれて、本当にありがとうとシーを抱きしめたそうです。


ただ俺が言える事はね、母親が仕事で誰も居ない時間に、孤独な中で息を引き取っていなくて本当に良かったと思う。

叶うのなら腕の中で看取ってやれるのが一番いい。でも、腕の中ではなかったけれど、一番大切な人のそばでシーは天国へ行った。

シーはどんな気持ちやったかはわからないけれどきっと、僕は孤独じゃなかったって。大好きなお母さんがそばにいるからよかった。って思ってたと、俺はそう願っている。


シーと最後の時間を過ごす母親は、特にこれからもっと寂しさを感じて元気がなくなると思うけれど、早く元気になるように心から願ってる。

そして、シーが無事に迷わず天国へいけますように。


15年間、精一杯生きてくれてありがとう。シー。いつまでも大好き。