Roots of TWO-J #23 "焼きバナナ " | TWO-J official blog "groovin' everyday" Powered by Ameba

Roots of TWO-J #23 "焼きバナナ "

2003.

 

ここでのLAの旅は自分にとって刺激が多過ぎるくらい、たっぷりといろんな経験の旅になる。始まったばかりでFOESUMとのレコーディングを終えた。

 

また次なる経験として、菊池氏からの"神の声"が降り注ぐ。

 

(菊) "ベガスでSLOW PAINがイベントやるけど、遊び行く?”

 

"SLOW PAINっすか!? 行きますっ!"

 

とまあ、こう言う感じで俺にとって最高な"ボム"を菊池さんは次々落としてくれるのだ。

 

SLOW PAIN(スローペイン)はチカーノラッパーで結構前からCD聞いていた。

そのライブを生で見れるなんて楽しみすぎる。

 

みんなでベガスに向かった。

 

 

 

 

 

本来カジノとして使われてる建物が当日のライブ会場だった。

1000人くらいの客は集まってたと思う。

 

菊池さんはローライダーは勿論だが、チカーノのアーティストたちの撮影もしていて、しっかりと互いのリスペクトを持っていた為、知人がとても多く、この日も彼らの招待によって自分たちは2階のVIPでライブを観覧させてもらった。

 

自分がガキの頃から憧れた本場LAのラッパー達のライブを生で見れる。

 

最高だった。VIPで アーティストのWEETOを紹介してもらった。

 

 

 

 

WEETOはシンガーでスキンヘッドにローク(サングラス)をかけていかにも"ギャングスタ"なルックスだった。けど日本から来た俺に、

 

"ラップやってるんだって?俺はシンガーだ、今日は楽しんでってくれよ"

なんてとても優しく迎え入れてくれたのが嬉しくて、今でもその場面をはっきり覚えている。 

 

 

ライブはといえばそりゃすごくカッコよかった、オーディエンスの楽しみ方も日本とは違う盛り上がり方だった。各々が素直にライブを楽しんでる様子だった。

 

だがここで大きな衝撃を体験した。

 

ライブが終演して盛り上がりの余韻を残したまま、会場の照明も明るくなり、観客が少しずつ掃けていくと言う最中に"その事件"が起こる。

 

 

俺は突然誰かに床に引っ張り倒された。

 

倒れた先で体を抑えられて更にに伏せさせられた。

 

横にはさっきのWEETOがいて彼も床にぴったりと伏せていた。

 

どうやら俺を引っ張り倒したのはWEETOだ。

 

何が起こってるのかこの時点では分からない。

 

 

周りもみんな床に伏せていた。

 

 

ん???は??

 

としか思わなかったが、

 

何が起こったかといえば、会場内で銃が発砲されたのだ。

 

 

そういえばWEETOが俺を引っ張り倒す前に変な音がしたな。

 

それが発砲音だった。

 

"タン、タン” みたいな渇いた短い音だった。

ドラマで見るそれとは全く違う音だ。

 

 

発砲音など聞いた事のない俺が瞬時にそれを判断して素早く伏せるなど身についているわけがない。

 

 

WEETOに助けられた。

 

 

メインフロアを2階から覗くと、全員が伏せてた、後にすぐみんな慌てて会場を出て行こうとしていた。

 

WEETOは超真剣な顔で "you all right !?"と心配してくれた。

 

すぐに警察が大勢会場に入って来た。

 

いろいろ聞かれたら面倒だからと

 

その後、自分たちは裏口から会場を後にした。

 

菊池さんはSLOWと連絡を取ろうと電話したが、その時は電話に出なかった。

 

少し不安なまま俺らはホテルへと戻った。

 

 

あとでわかった事だけど、ショーが終わり少しして、若いギャングが何かを名乗り、発砲したらしい。推測するなら自分のギャング団のネーム、か敵対相手への言葉を放っての発砲だったんだと思う。

当然だが入場時にはにセキュリティーチェックがあるので、銃等会場内には持ち込めない、ショーが終わり一度退場してから銃を持って戻ったんだと思う。

 

 

翌日SLOW PAINが菊池さんに連絡して来た。

 

"せっかくショーに来てくれたのに危ない思いさせて悪かった"

 

"II-Jにも伝えといてくれ。落ち着いたら連絡するから飯でも行こう"

 

との内容だった。

 

 

後日SLOW PAINとランチに行った。

 

彼は娘も一緒に連れて来てた。まだ小さかった、2歳とかだった。

 

メキシカンフードをご馳走すると言ってくれていろんな料理を説明しながら振舞ってくれた。

 

"焼きバナナ食ったことあるか?"

 

と言って焼きバナナをめっちゃ勧めてくれた。

 

初めて焼いたバナナを食べた感想は、今だに表現が難しい。w

 

 

 

SLOWはショーでの出来事にとてもへこんでいたし、なんども"嫌な思いさせて悪かった"と言ってくれた。

 

 

"いつまでLAに居るんだ?タイミングが合えばスタジオに遊びに来い"

 

と誘ってくれた。

 

 

(その後THUMP RECORDSのスタジオにお邪魔してここでも突然のレコーディングが始まる事になる。これは本編で。)

 

 

 

いろんな体験をさせてもらった。

 

そんなSLOW PAINは今は居ない。

 

昨年2020年に亡くなってしまった。

 

できればもう一度会って、曲を一緒に作りたかった。

 

SLOWとの思い出は忘れる事はない。俺にとって宝物だ。

 

 

次にLAに言った時は、もう一度、焼きバナナを食べてみるよ。

 

いろいろありがとう、SLOW.

 

 

Rest In Peace .