Roots of TWO-J #13 "メリーゴーランド"
ターゲットに絞った後輩に、
"サイドマイクとして一緒にライブやって欲しい" っていう話をして、
承諾してもらうのに案外時間はかからなかった。
むしろとてもやる気になってくれてた。
ここでは名前を"E" としよう。
Eは俺より二つ年下で、地元も一緒で、やつが17歳位の時からの仲間だ。
Eは高校生の頃から俺の先輩たちのライブに通って来ていたなかなかのツワモノである。
"お前マジで高校生?" なんて皆から言われて、可愛がられていた。
ここでも口の悪い俺は一応、一言付け加えさせてもらうが、
決してイケメンでもなく可愛くもない。
何てったってあだ名は"ゲス"だからね。
むしろあだ名じゃないんだから。
けどその時代からストリートムーヴメントに参戦してくる様なやつなんだから、
やっぱ特別なやつなんだ。とにかく最高に面白いやつだ。
で、当時Eはハードコアのバンドでボーカルもやってて、早い時期からライブもこなしてたし、デモテープなんかもリリースしてた。俺よりライブは得意だったんだ。
普段の遊びから、良くない遊びまで一緒にしてた分、気心の知れたやつだったし、俺にとって心強い味方だった。
確か俺が書いたリリックを見せながら、空のテンポでアカペラのラップして、Eに被せて貰いたい部分にはマーキングしてあった。それを見ながら、何度も繰り返し練習して、1曲ずつ完璧に覚えてくれたのだから、やっぱあいつは中々のやつだ。見本になる様な練習用の録音テープなんかも確か無かった様な気がする。何度か、自分たちで合わせて練習しただけだった気がする。今思えば原始的にも程がある。
"驚いた時の形容詞"が名前でおなじみのハンバーグレストランの片隅で、
むさ苦しい男二人が向き合って、真剣にノートを見ながらブツブツと念仏の様に何か喋ってるわけだから、側から見た人たちは怖かっただろうな。
おまけに俺のテーブルには 当時好物だった、遊園地によくある馬に乗って回転する様なアトラクションの名前が付いた女子が食べそうなパフェが置いてあるんだから、見方によってはギャグ漫画だ。それで真剣にブツブツ何か言ってるんだから、どう見てみも危ないよ。
それでもとにかく真剣に真剣に取り組んで、ライブに臨んだ。
そしていよいよ当日を迎える事になる。
2001年、何月だったかは今は覚えてない。
(ちゃんと調べて本編には書きますね。)
俺のバイト先の服屋のオーナーは、ここぞとばかりに、俺たちに上から下まで新品の衣装をプレゼントしてくれた。最高だった。ホワイトゴールドのチェーンもそのままくれてたらもっと良かったが。w
Eもコーンロウを編み込んでパリッと別人の様にキメてた。
出番前、狭い控え室で俺とEはウロウロとしていた。
ふとEの顔を見ると何というか、完全にスイッチの切り替わった真剣なモードの表情をしていた。気合いが表情から溢れていた。
二人とも意外と無口で。
俺が無口だったのは完全に緊張と動揺から来てたモノだが。。
何しろ当日、会場は満員も満員で、多分300〜400人くらいの客入りはあったと思う。
そりゃ当然、PHOBIAやM.O.S.A.D.といったビッグゲストが登場するわけだし、会場の熱気はやばかった。
けど、今これを書きながら思い出してるけど、途中から俺は緊張なんてとっくにしてなかった。多分それを通り過ぎて、勝負にかける気合いみたいなものにいつの間にか包まれまくってた。
そこまで来ると、"ヨッシャッ!やったるぜ" 的なモードしかないんだ。
いよいよその時が来た。
ステージ脇で俺たちのイントロが鳴って、階段を駆け上がり、ステージへ出て行った、
目の前は間近では見た事ないほどの数の人の顔で埋まってた。前から後ろまでビッシリ。
そこまでは覚えてる。
ライブの最中の自分のことなど、今一切覚えてない。
想像以上に物凄い大歓声を浴びた高揚感だけは微かに覚えてる。
自分が持ってる力以上の力が幸運にも出せた。
ライブ後にEと歓喜したのは覚えてる。
嬉しかった。
あれは俺とEにしかわからないスペシャルな感覚だったと思う。
その後もゲスト陣の登場でそのイベントは終始大盛況で幕を閉じた。
後日ライブの映像を確認した。
正直見るのは少し怖かったけど、観たかった。
いつかこのビデオも公開したいと思ってる。
自分の初ライブを観たその時の自分の感想は、
"クソカッコ良かった。"
以上。
あの時の " II-Jay " は ヤバかった。