世界経済の回復に対する懸念が高まり、ユーロ圏の債務危機がくすぶり続けるなか、ここ数週間にわたって珍しく多くの資金がポンドに流入した。オーストラリアドルやカナダドル、ブラジルのレアルなどその他の通貨も、円やスイスフランなど従来、資金の安全な避難先とされてきた通貨とともに買われた。
バンク・オブ・ニューヨーク・メロンのシニア通貨ストラテジスト、サイモン・デリック氏は「長期的にはこういった通貨の多くが安全な避難先と見なされる可能性がある。主要通貨は資金の安全な避難先ではないことは明らかだ」と指摘した。
米国はトリプルAの格付けを失い、ドイツの経済成長は実質的に足踏み状態。7月に利上げした欧州中央銀行(ECB)が利下げに転じるとのうわさも流れ始めた。こうした事態を受けて新たな避難先を求める動きが加速。その結果、ユーロとドルはさらに魅力を失った。
一方で、スイスフランと円の高騰はスイスと日本の経済に悪影響を及ぼす恐れがあるため、両国の中央銀行は自国通貨の魅力を減じる措置を講じている。
避難先を求める資金の一部はカナダドルやオーストラリアドルに流れている。この2つの通貨が魅力的なのは、資源価格の上昇が両国の経済で大きな役割を果たしているからだ。また、カナダもオーストラリアも主要国の多くを苦しめた金融危機の影響をほとんど受けていない。
新興国通貨であるブラジルのレアルは通常であれば、避難先として注目を集めることはなかっただろう。しかし、レアルに買いが集まっていることから、投資家が米国やユーロ圏の問題を避け、経済の規模が大きく安定度の高い国への関心を強めていることがわかる。
最大の避難先となっているのは英国かもしれない。経済に悪材料があるってもだ。失業率の上昇や小売売上高増加率の低下、インフレ率の上昇を受けて、英国の成長見通しは改善するどころかさらに悪化する可能性が高い。
しかし、英国は米国とは異なり、全ての主要格付け会社からトリプルAの格付けを付与されている。世界の外貨準備でポンドの割合は4%に過ぎないが、ドルの割合は60%だ。また、ポンドはオーストラリアドルやブラジルレアルなどの通貨より流動性が高い。これらの点を考慮すると、ユーロ以外の通貨に投資を分散させたい各国の中央銀行にとってはポンドを検討する余地は十分にある。
もちろん、米国経済が回復して、連邦準備理事会(FRB)がさらに多くの非伝統的な政策措置を採用する必要があるとのうわさが出なくなったり、あるいはユーロ圏の政治家が域内のデフォルトの脅威を払拭する方法を見出すことがあれば、新たな避難先への関心は失われるだろう。
しかし、ユーロ圏の債務危機がさらに悪化して、投資家が英国の銀行が抱えるユーロ圏へのエクスポージャーや、ユーロが崩壊した場合に英国が引き受ける経済的コストに注目し始めれば、ポンドもリスクにさらされよう。
