この旅もやっと後半戦に入りました。
予定では留萌を7時に出る増毛行に乗って、終点まで一往復してくるつもりでしたが、変な時間に目が覚めてしまいもう眠れなくなってしまったので、急遽予定を変更し5時50分発の列車で深川に出ることにしました。急な変更も思いのままなのは、一人旅の特権ですね。
昨夜は暗くてよくわからなかったのですが、沿線はまだまだ雪が多いです。
峠下で下り列車と交換。「新・鉄子」でも訪れ、個人的にもいろいろと思い出の多い駅です。
峠を越えるあたりはかなりの豪雪地帯。でもこれから一気に雪解けが進むのでしょう。
昨日に続き再び真布。暗かった昨日とはまた違った印象を受けます。
そして北秩父別。ここもじっくりと再訪したい駅の一つですね。
小ぢんまりとした駅舎が魅力の北一已。利用者はほとんど居なくなりましたが、昔ながらの木造駅舎は今も健在。
そして20分ほど進んだ滝川で降ります。
滝川からは路線バスを使い、札沼線の終点、新十津川を目指すことにします。
滝川-新十津川間は、石狩川を挟み5キロくらいの距離でしょうか。歩いても一時間くらいで辿り着けそうです。
新十津川駅の最寄となるバス停、新十津川役場です。バスは毎時一本くらいあり、運賃も220円と手頃。これでは一日に3本しかない札沼線をわざわざ使う人などいないでしょう。
バス停から5分くらい歩いた奥まった所に新十津川の駅はあります。役場の周りはコンビニもあってそこそこ賑わっていますが、ここは全く目立たずひっそりとしていて、秘境感さえ漂うほどです。初めてここに列車で降り立った人は、とんでもない田舎に来たと思ってしまうでしょう。
もちろん無人駅ですが、待合室はきれいで荒れた様子はありません。有人駅だった頃の名残は随所に見つかり、こんな所で列車を待つひと時は、それこそ最高に贅沢な時間と成り得ます。
ホーム側から見た駅舎もまた風情に溢れています。半端でない雪の量がよりいっそう駅舎を際立たせているようです。
しばらく待つうちに、僅か3本しかないうちの貴重な1本が札幌方面からやって来ました。既に時刻は9時半になろうとしていますが、これが今日ここに来る最初の列車なのです。これでは通勤・通学には使えず、地元利用者は限りなくゼロに近いというのが現状です。
ここまで来るのはそれこそテツくらいのもので、この日もそれらしき人物を2人確認。でも「18シーズン」であることを思えばちょっと少ないような。
途中の浦臼までは、通常利用者はまず居ません。それでも列車は律儀に一駅一駅丹念に停まって行きます。もちろん乗降はゼロ。
浦臼を過ぎると多少なりとも利用者を見かけるようになります。小ぢんまりとした木造駅舎を構える駅もチラホラ。
沿線は意外と雪深く、途中かなりの豪雪地帯を行きます。こうして見ると、本当に春はまだまだ先といった気がします。
秘境駅で名高い豊ヶ岡でも、普通に地元利用者を確認。
終点近くには3駅連続して「貨車駅」が。
石狩当別に到着。DCによる運転はここまでになります。
石狩当別からはロングシートの電車がバンバン走る完全な「都会の電車」区間となります。もはやDC区間とは似ても似つかない状況ですが、一昔前までは、ここも一日に数本しか走らない同じローカル線でした。
乗り換えの都合上、札沼線は札幌の一つ手前の桑園で降り、苫小牧行に乗り換え。
そのまま苫小牧までやって来ました。
苫小牧からは日高本線に乗り換えます。40系が2両繋いでいましたが、後ろ1両は途中の鵡川止まりでした。
発車してまず目に飛び込んでくるのは果てしなく広がる勇払原野。茫漠とした大地の、この北海道ならではのスケールには圧倒されてしまいます。
そのうちにこれまた果てしなく広がる太平洋が荒波を伴って線路ギリギリまで近づいてきます。海辺を走る路線は他にもいろいろありますが、波しぶきがかかるくらいの所を走る列車など、そうそう体験できるものではありません。
あちこちに牧場が点在するのも日高本線の特徴。場所によっては、それこそ牧場の中に線路が敷かれているような錯覚に陥るほどです。
海も本当に恐いくらい線路ギリギリまで近づきます。今日はそれほど波が高くありませんが、それでも波打ち際の走行はハラハラするほどの迫力です。
そしてやって来たのは、まさにその海が間近に迫る大狩部。今や秘境駅としてすっかり有名になりました。
駅前には荒波が砕ける太平洋が広がり、ここまで見事なロケーションが望める駅も、そうそうあるものではありません。海に近い駅は全国各地に多々ありますが、寂寥感が漂う駅という点において、ここはトップクラスと言えるでしょう。
こんな所で列車が来なかったりしたら、それこそ途方に暮れてしまいそうですが、幸いそんなこともなくちゃんと定時で到着。折り返す形となる反対方向へ行く列車に乗って大狩部を後にします。
帰りも、ギリギリまで迫り来る海の迫力を存分に堪能。
だだっ広い大地に、貨車を改造した駅舎がポツンとあるだけの小さな無人駅で、周囲に人家は見当たらず、秘境感さえ漂っています。でもここから苫小牧東港が近いらしく、これから歩いて行ってみようとの試みです。
駅前に真っ直ぐ伸びる道路は車の往来もほとんどなく、またここからのルートは案内にも載ってなく、本当にこの道でいいのか、と不安に思ってしまうほど。今の時期はこの時間でもまだ何とか明るさが残っているからいいようなものの、陽の短い冬場だったら真っ暗になっているはずで、かなり怖い思いをするかもしれません。
それでも15分くらい歩くと、ちゃんと港に行き当たり、まずは一安心といったところです。大洗や仙台便が出航する立派な苫小牧フェリーターミナルに比べると、随分とローカルな港ですが、秋田や新潟を結ぶ新日本海フェリーはここから出ていて、今日はこれからそのフェリーに乗って北海道を後にすることにしています。
港には巨大な豪華客船が待機中。これからこれに乗ると思うと、何だかわくわくしてしまいます。
それではいざ、乗船です。まるで一流ホテルのようなホールにまずは驚いてしまいます。でもフェリーならこんなのは当たり前。
今夜お世話になる二等客室は、好みの場所を選べる自由席。乗客は各フロアに3~4人程度と気の毒なほど少なく、おかげでのびのびと部屋を使うことができそうです。
船内には自由に使えるラウンジや映画室、それに卓球ルームまであり、長い船旅を退屈させない工夫が凝らされています。移動中にこんな設備が利用できるのだから、まさに贅沢三昧。これぞ船ならではの魅力ですね。
というわけで、苫小牧東港を出港。寝ながらにして移動できるのだから、随分便利な乗り物ですね。
乗客が多ければバイキングになるみたいですが、今日の乗客は気の毒なほど少なく、広い食堂も完全に閑古鳥が鳴いている有様です。せっかくなので、いくつかあるメニューの中から「とんかつ定食」(1060円)を頼んでみたところ、相当なボリュームでこの価格ならオトク感いっぱいの大満足。下手なバイキングより合理的かもしれません。
ゆっくりと大浴場に浸かれるのも船ならではの魅力。温泉ではないけれど、このところユニットバスが続いていただけに、手足を伸ばしてのんびり湯船に浸かる幸せは格別です。それでは明日の朝までゆっくり休むとしましょうか。
留萌 5:50 → 6:44 深川 6:51 → 7:10 滝川 7:54(路線バス) → 8:10 新十津川役場・新十津川 9:41 → 11:03 石狩当別 11:38 → 12:12 桑園 12:26 → 13:44 苫小牧 14:22 → 15:46 大狩部 16:25 → 17:33 浜厚真・苫小牧東港 19:30(新日本海フェリー) →