妄想小説 最終話です。




雅紀の携帯から再生されるカズナリの声に叫びそうになり、手で口を押さえる私。


少し早口で舌っ足らずで甲高くて、でも、優しく包み込んでくれるような声。


『もしもし、相葉雅紀さん・・・ですか?』


『・・・そうですけど?』


『朝早くの電話すみません。オレ・・・櫻井○○の友人です』


『○○の?』


『はい。訳あって○○の携帯から電話させてもらってます。


 今日は、相葉さんにお話があって電話させてもらいました』


『・・・話?』


『オレと○○は、1年前に知り合いました。


 最初会ったときは、なんだか壊れてしまいそうで危なかしくて。


 でもなんかオレと同じ空気を感じてほっとけなくて・・・』


(そんなふうに感じてくれてたんだ)


胸が締め付けられる私。


『だけど、最近はすごく楽しそうで心から笑ってて・・・


 特に相葉さんと一緒にいる時は本当に幸せそうで』


『ねぇ。アンタ誰?』


『もう、オレがそばにいなくても大丈夫かなって思って・・・○○から離れることにしました』


(!!!)


目の前が真っ暗になる。

心臓が、止まりそう。


『こんなこと、オレが言うことじゃないけど・・・○○のこと、よろしくお願いします。


 知ってると思うけど、アイツは、気が強いくせに泣き虫で。


 自分のことより周りの人を気づかって。お人よしで、でも甘えん坊で寂しがり屋で』


(カズナリ・・・)


『すごく優しくて温かいヤツなんです。オレにとって、最高の・・・友人です。


 どうか、よろしく・・・お願い・・・します』


『ねえ、アンタもしかして』


『最後に一つ、お願いがあります』


『・・・何?』


『○○に、伝えてください。会えてよかったって』


『・・・わかった』


『ありがとうございます。じゃあ・・・失礼します』


『あっ!ねえ、ちょっと待っ・・・』


電話が切れて再生が止まる。



涙が止まらない私。

携帯電話をしまい、ゆっくり喋る雅紀。


『これ・・・カズナリ、だよね?』


(!)


一瞬迷ったけど、こくんと頷く私。


『やっぱり・・・話聞いてて、なんかそんな感じがして。


 ちょっと信じられないけど・・・喋れるんだ』


頷く私。


「ここで、出会ったの。私も最初はビックリして・・・。


 でも、すごくいい子で、いつもそばにいて、話を聞いてくれて・・・」


『・・・うん』


「どうして・・・ずっと、一緒にいられると思ってたのに!」


俯いて叫ぶ私の頭を、そっと撫でてくれる雅紀。


『オレじゃ・・・ダメか?オレじゃ、カズナリの代わりに、なれないか?』


雅紀の言葉に、少し考えて首を振る私。


「ダメだよ・・・なれないよ・・・雅紀は雅紀で、カズナリはカズナリだもん」


『そっか。そうだよな・・・じゃあ、オレの中にカズナリがいると思って!』


「・・・え?」


『カズナリと2人分で、オマエを愛する。笑顔にする。話も聞く。

 

 絶対に・・・悲しませないから』


雅紀の想いが嬉しくて、また涙がこぼれる私。


『オレのせいで、泣かせないから。オマエにはいつも、笑っててほしい』


「じゃあ・・・1つだけ、約束して」


『何?あ、浮気は絶対しないよ!ギャンブルもやらない。


 酒とタバコは・・・やめられないけど、ほどほどにするからっ』


「そんなんじゃ・・・ない」


雅紀の胸におでこをくっつける私。


「ずっと・・・そばにいて。私の前から、いなくならないで」


『○○・・・』


「もう2度と、こんな悲しい想い、させないで・・・」


私の言葉を聞いて、ギュッと強く抱きしめてくれる雅紀。


『うん。ずっといる。○○の、そばにいる。絶対・・・約束する』


「雅紀・・・ありがとう」


そっと体を離し、指で涙を拭いてくれる雅紀。


そのまま、ゆっくり唇を重ねる。


お互いがそこにいるのを確かめるように。何度も・・・何度も・・・。



私の耳元を吹き抜ける風にまざって、夢の中でカズナリが呟いた言葉が聞こえた気がした。




『元気で・・・幸せに・・・それから、今までありがとう』



――― END ―――