妄想小説 続きです。




A子と大野さんの結婚式の翌日。


私は、土手沿いの道を雅紀と並んで歩く。


「今日もいい天気だねー」


青空を仰ぐ私。

そこへ、飛行機が飛んでいく。


「あの飛行機に乗ってるのかなー。A子達」


『ハワイだっけ?行き先』


「うん。いいなー、羨ましいっ」


卒業旅行以来海外へ行ってない私は、単純に羨ましがる。


『○○は・・・どこ行きたいの?』


雅紀が聞いてくる。


「え?そうだなー。ハワイもいいしオーストラリアも行きたいしー。


 あ、ヨーロッパもいいなっ」


『そうか・・・やっぱそんな感じだよな、うん』


「でも・・・一番行きたいところは、兵庫県!」


『兵庫県?』


「うん。連れてってくれるでしょ?・・・甲子園」


『あ・・・』


「春の選抜でも夏の大会でもタイガース戦でもいいよ。いつか、一緒に行こう」


『そう、だな。でもそれは、普通の旅行で行くとして・・・』


「え?普通の旅行って?」


『いや・・・だから・・・』


妙に照れてる雅紀を見て、ようやく理解した私。


「え・・・旅行って・・・」


(もしかして、新婚旅行のこと?)


驚いて立ち止まる私の前に、まっすぐ立つ雅紀。


『オレ・・・まだまだ仕事も半人前で、頼りなくて、給料も少なくて・・・


 ○○を幸せにする自信なんてないけど』


「お、おいおいっ。そこ大事」


思わずツッコむ私。


『でも・・・オマエと一緒にいるとオレは幸せなんだ。


 オマエも、同じように感じてくれると、嬉しい』


「雅紀・・・」


『オレの精一杯で、オマエを守りたい。オレに、ついて来て・・・くれないか?』


嬉しい。すごく嬉しい。泣きたいほど。

でも・・・


「イヤッ」


『え!?』


バランスを崩す雅紀。


『イヤッて・・・』


「守られるだけなんてイヤ。私だって、雅紀を守りたい」


『えっ・・・』


「ついていくだけなんてイヤ。一緒に横を、歩きたい」


『○○・・・』


「可愛げなくてごめん。でも、私ってこういうヤツなの」


『うん、知ってるよ。何年一緒にいると思ってんだ』


ははっと笑う雅紀。


『そうだ。オマエはそういうヤツだ。だから・・・好きなんだ』


「雅紀・・・」


『言い直すよ・・・オレと、この先の人生を、一緒に歩いて行ってくれないか?』


真っ直ぐ私に手を伸ばす雅紀。


「・・・はい」


頷いて手を伸ばす私。


2人の手が繋がろうとした時、


『ちょーーーっと待ったぁーーっ!』


大きな声にビックリして振り返ると、そこにはお兄ちゃんとカズナリ。


「お兄ちゃんっ。何でここに・・・」


『何でって・・・その・・・カズナリの散歩に』


「えー?だっていつもカズナリこんな時間に散歩しないよ?・・・無理やり連れ出したの?」


『いや・・・その・・・オマエがっ、朝帰りだから、その、心配で・・・』


「ちゃんとメール送ったじゃんっ。”終電逃しちゃったから雅紀のとこ泊まる”って」


『いやでも・・・嫁入り前の娘が・・・』


「あ、それだけどね。嫁入りが決まったっていうか・・・」


『先輩!・・・いや、お義兄さん!オレ・・・』


『ちょっと待てっ。相葉くんにお義兄さん呼ばわりされる筋合いはないっ』


「な・・・」


『お義兄さん!あの、妹さんを・・・』


『だーっ!認めんっ。オレは、認めんぞっ』


雅紀から逃げ出すように土手を駆け下りグラウンドの方へ走るお兄ちゃん。


『お義兄さん!待ってくださいっ』


それを追いかける雅紀。


「あーあ。せっかくのプロポーズが台無し・・・」


カズナリのそばに行って座り込む私。


『悪いな。兄貴がオマエのとこ連れてけって言うから探しにきちゃった』


「ううん。カズナリが悪いんじゃないよ」


カズナリの頭を撫でる私。


「ま、こんな感じでしょ。うちらは」


『よかったな』


「ありがと」


『幸せになれよ・・・○○』


「え?」


驚いてカズナリの顔を覗き込む私。


「初めてだね。私のこと名前で呼んだの」


『そうか?』


「うんっ。いっつも、オマエとかアンタだもん。わーいっ、嬉しい♪」


カズナリを抱きしめる私。


『お、おいっ。苦しいって』


「あ、ごめんごめん」


カズナリをそっと膝の上におろす私。


「ね・・・前にさ、何か言いかけたよね。雅紀のこと」


『ん?・・・ああ、初めて相葉くんに会ったときか』


「あれ、なんて言おうとしたの?」


『うん・・・いつか、こういう日が来るよって、言いたかった』


「え?あんな1年前から?それも匂いでわかるの?」


『半分は、な。相葉くんはオマエのことめちゃめちゃ惚れてるし、


 オマエも心の奥では相葉くんを想ってるのわかってたから。


 ・・・あとの半分は願望だな。そうなったらいいなって』


「そっか・・・」


グラウンドを見下ろすと、お兄ちゃんと雅紀の追いかけっこはまだまだ続いてる。


『お義兄さん!妹さんのこと・・・』


『わーっ、わーっ、わーっ!聞ーこーえーなーいー』


耳を両手で押さえて逃げ回るお兄ちゃん。


「何やってんだか・・・」


その時、私の目から涙がこぼれ落ちた。


「あ、あれ?なんで?・・・悲しいわけじゃないのに・・・」


『多分、幸せの涙なんだろうな』


そう言って、私の頬に流れる涙をペロッと舐めてくれるカズナリ。

泣いている時は、いつもカズナリがいてくれる。

優しい言葉はあまりないけれど、私を想ってくれる気持ちは伝わる。


「ありがとうカズナリ・・・大好きだよ」


『・・・オレもだよ』


また、珍しいこと言うカズナリ。


「今日はどうしたの?カズナリ」


『ん?別に。しっかし、まーだやってんのか』


追いかけっこをしてるお兄ちゃん達を見て呆れるカズナリ。


「・・・お兄ちゃんって、私と雅紀のこと、認めてくれたんじゃないの?」


『そりゃ、交際と結婚は違うだろ。兄貴も大変だな』


私の膝の上でカズナリが呟いたとき、お兄ちゃんが土手を駆け登り、

私の後ろへ回り込んで後ろから抱きつく。


『とにかくっ、オマエに妹は渡さんっ』


『そんなこと言わずに、お義兄さんっ、お願いします!』


土下座してお願いする雅紀。


そんな私達を、土手沿いの道をジョギングする人や

グラウンドで野球をしている人が見てクスクス笑ってる。


(恥ずかしいなぁー、もう・・・)


俯いて顔を隠し、カズナリと見つめ合って笑う私。



こんな楽しい日々が、いつまでも続くと・・・信じていた。