特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)の「上納金」を巡る脱税事件で、福岡国税局と北九州市が工藤会トップで総裁の野村悟被告(69)=所得税法違反 などで起訴=の預金など9億円超を差し押さえたことが関係者の話で分かった。所得税と地方税の未納分に重加算税などを加えた総額に相当する個人資産。差し 押さえにより野村被告の影響力の低下が進むとみられる。

 野村被告は2014年までの5年間で傘下の組員から集めた上納金などの所得約8億1000万円を隠し、所得税約3億2000万円を免れたとして7月に起訴された。

 関係者によると、野村被告は08、09年分も合わせて税務調査され、7年間で約5億5000万円の所得税の未納が判明した。更に意図的な所得隠しなどの 場合に課せられる重加算税と、期限までに支払わない場合に発生する延滞税を含め、約8億円の追徴課税処分を受けた。また、野村被告は北九州市から地方税 (市税と県民税)の未納分など約1億円を課税処分された。

 ところが野村被告はこれらの処分に従わず、今秋以降、福岡国税局と市から複数回にわたり預金などを差し押さえられた。

 野村被告は脱税事件を含め6回起訴され、来年始まるとみられる裁判は長期化が予想されている。野村被告の弁護士は9月、取材に対し「具体的な額は明かせないが差し押さえを受けた」と話した。

 ◇暴力団に詳しい垣添誠雄(もとお)弁護士の話

 暴力団トップの個人資産の差し押さえは異例。起訴内容に加えて、2年分さかのぼって調査した上で課税額を算定したり、預金を差し押さえたりしたことは、 工藤会の活動を抑える上で一定の評価はできる。国税当局は、これまで暴力団に対する課税が不十分だった。今後は工藤会以外の暴力団にも積極的に課税してい くべきだ。