ヤフーとソニー不動産が手を組んで16日から本格的に開始した、個人間の中古マンション取引を支援するサービス「おうちダイレクト」が、不動産業界に波紋を広げている。
不動産業者の関与を薄くして個人間で売買できる仕組みに、既存の不動産業者は大反発。大手業界団体は「不動産情報サイトの中立性を損ねる」としてヤフーへの情報提供を取り止める事態になっている。
ヤフー、ソニー不の両社長とも「取引の選択肢を増やしたいだけ」と今までの取引方法を否定しない考えを強調しているが、競合する不動産業者は「やはり脅威だ」と戦々恐々だ。
新サービスは、既存の不動産取引と共存できるのか。それとも業界の慣習を打ち破る破壊者になるのだろうか。

■不動産業者の関与薄く

 「マンション流通革命、はじまる。」と銘打つおうちダイレクトは、都心の6区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、品川区、江東区)の中古マンション所有者が、自分の物件価格をネット上で検索できるサービスとして5日から始まった。
16日からは売り主が自由に価格を値付けして物件を掲載するサービスと、買い手が売り主に対して「買いたいリクエスト」を送信し、ソニー不動産を介して、物件見学ができるサービスがスタート、おうちダイレクトの一連の機能が本格始動した。
売買が成立すると、売り主からは仲介手数料はとらないが、買い手からは成約価格の3%+6万円の手数料が発生する。当初は、ソニー不が買い手との取引を仲介するが、今後は、ソニー不以外にも門戸を開く方針だ。
一方、通常の不動産取引は、売り主と買い手の間を不動産業者が仲介し、売買が成立すると、不動産業者は売り主と買い手からそれぞれ成約価格の3%+6万円の手数料を受け取る。
不動産取引には権利関係などさまざまな法的な規制があるが、不動産業者を介せば、こうしたことにわずらわされないなどの利点もある。

~中略~

しかし、実際に現場の不動産業者からは、不安の声が漏れている。おうちダイレクトのサービスエリアの一つ、江東区で30年営業を続ける不動産業者の男性(54)は
「本当に脅威だね。不動産仲介システムを根底から見直すことになるかもしれない」と述べ、両社のサービスによる経営への影響を心配している。
男性は、従来の不動産取引にも、物件の価格にかかわらず3%+6万円の手数料が実質、一律に決められていることなどに問題があると認めつつも、
「やがてネット販売で取引が完結するようになれば、我々はいらなくなるのかもしれない」とつぶやいた。

■犯罪利用の懸念も

 既存の不動産業者とのあつれきもはらみつつスタートした、中古不動産市場活性化を目的とした新サービスだが、今後への課題や懸念も多く指摘される。ネット上だけで売り主を特定できるのかというのがその一つだ。
反社会的勢力が問題物件を売りさばくなど犯罪に利用されたり、所有者以外の第三者が所有者の意に反して売り出し物件として掲載することなども懸念される。
これに対しては、「わが社が使用している反社会勢力のデータベースや、免許証などの身分証明書をネットでアップロードしてもらうことで対応する」(ソニー不幹部)と個人を特定することを重視するとしているが、
これまでに例のない取り組みのため、予想外の問題が生じる可能性もある。