マカオのカジノでVIP客とカジノを仲介する業者がこのほど、従業員に2億7000万パタカ(約40億円)を横領されたとして警察に被害を届け出た。この業者は元従業員を非難する新聞広告も出して騒ぎは拡大、収入減に直面し健全性をアピールするマカオのカジノ産業にとって新たな痛手となっている。
被害届を出したのは、マカオのカジノホテル「ウィン・マカオ」のVIPルームの運営に携わる仲介業者のドーア・ホールディングス。
「ジャンケットオペレーター」と呼ばれるこうした仲介業者は、上客を精査してカジノのVIPルームに招待し、必要に応じて客に資金を貸し出す。客は中国本土からの現金の持ち出し規制を気にせず遊ぶことができる。
ホテルを運営する米ラスベガスのカジノ業界の大物、スティーブン・ウィン氏は声明で、ホテル側には一切損害は発生していないと述べた。
投資銀行ユニオン・ゲーミングのアナリスト、グラント・ゴバートセン氏によれば、ジャンケットオペレーターは中国本土の客とのビジネスを行ううえで「100%欠かせない存在」だ。
「理由は2つある。まず第1に、客集めだ」とゴバートセン氏は語る。「ジャンケットは自治体レベルで情報網を持ち、中国本土で活動している。誰に信用力があるのかわかっている」
「2つ目は、中国では賭けに絡む負債は法的に負債と認められない点だ。カジノが客に金を貸してそれが踏み倒された場合、カジノとしてはその客に2度と利用させないぐらいしか対応策がない。その点、ジャンケットは債務の回収役も担っている」
マカオの規制当局は事件を受けて、透明性向上のためジャンケットオペレーターに出資者の身元の公表を義務づけるとともに、ジャンケットオペレーターが金融サービスを行うのは違法だと警告した。
マカオのカジノ収入はラスベガスの7倍とも言われるが、中国の反腐敗運動のあおりで高額ギャンブラーが減少。15カ月連続の収入減に陥り、ブルームバーグの予測によると今年下半期も32%減となる見込みだ。
シンガポールやラスベガスのほか、ベトナムやカンボジアでもカジノが新たに開設され、海外に足を運ぶ本土のギャンブラーが増えて、収入減に拍車をかけている。
今年に入り、マカオでは大規模な売春組織や犯罪グループの摘発も相次いだ。マカオ当局は健全で家族に優しいイメージを打ち出して立て直しを図っている。