暴落した中国株式市場から、富裕層の一部はうまく抜け出していたらしい。中国の決済機関によると、株式口座残高が1000万元(約2億円)を超える大口トレーダーの数が7月には3割近く減っていた一方、10万元未満のトレーダー数は8%増えていた。ブルームバーグが報じた。
中国政府は強気の相場観を変えていないが、“情報通”の富裕層はちゃっかり売り抜け、政府を信じる投資家が過酷な市場を耐えている構図だ。中国政府の思いのままにならぬ市場の裏では、エリート層の静かな中国離れも進んでいる。
相場を動かす富裕層
6月12日に上海総合指数が年初来最高値の5178・2を付けて以降、相場は下落基調に入った。実体経済から乖離した高値を恐怖した投資家が売りを加速させたためだ。
中国当局は7月1日から信用取引に関する証券会社への規制を緩和するなどの刺激策で投資家を引き留めようとしたが、その思惑に反するように取引の手じまいに入った富裕層は多かったようだ。
ブルームバーグによると、株式の保有残高が「100万~1000万元」の投資家数は7月に前月比で22%減少。世界的な投資会社CLSAキャピタルパートナーズの香港戦略担当責任者のコメントとして、「相場を動かしたのは富裕層の顧客。彼らは情報通だ」との分析を紹介した。
中国政府の宣伝に躍らず、海外情報を活用できる投資家がうまく混乱の中で立ち回っている様子が浮かぶ。
事態を収束できない当局
中国人民銀行(中央銀行)が2年4カ月ぶりに利下げに踏み切った昨年11月22日から、利下げは計5回に及ぶ。当初は不動産市況の悪化に歯止めをかける狙いとみられたが、いまや中国経済の屋台骨を支えるための価格操作の色合いが濃くなっている。
巨額資金の逃避に加えて、政府がそれをくい止める力を欠き、混乱を世界に広げている。なぜ事態を収束できないのか。
ロイター通信はその原因の一端として、中国証券監督管理委員会(CSRC)の頭脳流出を挙げた。2008年のリーマン・ショックに伴う金融危機の中、政府は中国系の専門家の引き抜きを積極化していたが、今年夏の株の急落局面において、人材を生かすことはできなかった。海外から中国に戻った「海亀族」と呼ばれるこうしたエリートは、すでに当局の仕事に失望して民間企業に移ってしまっていたからだという。
出世できない「海亀組」
同通信は、「CSRCでは国際経験が最も豊富な人が追いやられた」との銀行エコノミストのコメントを紹介。内部関係者の話として「(採用後の帰国組は)誰1人として昇進しなかった」という。
CSRCからコメントは得られなかったとしている。また上海総合取引所からも離職者が相次いでおり、金融市場が「素人の手に委ねられている」との中国ファンドマネジャーらの嘆きも掲載した。
ニューズウィーク日本版が昨年報じた中国の資産家393人を対象にした調査リポート。それによれば、中国の富裕層(資産1000万元以上)の64%がすでに国外に移住したか、計画を持っている。子供の留学は富裕層の8割が考えており、希望国の1位が米国という。
深刻な大気汚染が覆い、景気の悪化が襲う中国。富裕層が国にとどまり、資産を持ち続けるメリットは小さくなっている。
