上海株式市場の暴落から2日後の7月10日、中国自動車工業会が今年の自動車販売台数の成長率予想を1月時点に予想した前年比7%増から3%増に下方修正した。景気減速に株価下落による消費者心理の悪化が追い打ちをかけ、需要が冷え込む恐れがあるためだ。上海株はその後、落ち着きを取り戻したようにみえるが、実体は、投資家の保有株売却や新規上場を禁じるなど中国政府の異例の株価維持策にむりやり生かさせている「ゾンビ相場」の状態。中国政府が必死に厚化粧したゾンビの化けの皮がはがれて、株バブルがいよいよ崩壊へと向かえば、前年実績(6.9%増)からほぼ半分に成長率が鈍化するという中国自動車工業会の厳しい需要見通しは一段と下ぶれしかねない。世界最大の自動車市場の減速はどのメーカーにとっても大問題だが、中でも大きな痛手を負いそうなのが韓国の現代自動車だ。

■中国市場が世界販売の2割強
現代自にとって、中国市場は世界販売台数の2割強を占める最大の売り先。しかも、6月23日には内陸部の主要都市、重慶に現地で5番目となる新工場を着工したばかりだ。朝鮮日報(電子版)などによると、着工式に出席した現代自の鄭義宣(チョン・ウィソン)副会長は「(中国)西部にも拠点を確保し、名実ともに全国規模のメーカーとして成長する」と述べ、拡大戦略に自信を見せていたというが、このときは上海株の暴落など夢にも思っていなかっただろう。新工場には、提携先の北京汽車集団と合計10億ドル(約1200億円)を投資。年産能力は30万台で、フル稼働する2018年には傘下の起亜自動車の工場も合わせた中国全体の年産能力は270万台に増え、最大市場でのシェア拡大の牽引(けんいん)役が期待していたが、その戦略の歯車はどうも狂いそうな気配なのだ。5月に9.5%だった現代・起亜の市場シェアは7%台に低下するとみられており、先行きの5%割れの観測も出ている。そこに追い打ちをかけた上海株暴落はまさに“泣きっ面に蜂”なのだ。

■シェア低下 新車攻勢で後手に回る
もちろん、苦境の現代・起亜グループも手をこまねいているわけではない。9月以降にはSUVの新型「ツーソン」とセダンの新型「K5」を投入する。ただ、ゾンビ相場の成り行きによっては、せっかくの反転攻勢策も不発となる恐れがある。市場シェアを日本勢や中国地場メーカーに奪われている苦しい最中、保有株の値下がりで含み損を抱えた消費者が新車購入を手控えて市場の成長鈍化が強まれば、販売贈の武器となるはずだった新工場は一転して過剰設備として経営の重荷になりかねない。しかも、現代自に1年先駆け、2017年にはトヨタが広州で年産10万台の新工場を稼働させるという間の悪さもあり、中国5工場体制の見直しを迫られる可能性は否定できない。


■タイミング悪い新工場稼働
鄭会長は昨年末、法人長会議で「ポスト800万時代」を強調し、年間820万台の販売目標を掲げて拡大戦略に打って出た。ところが、現代・起亜の今年上期の実績は、国内市場こそ57万8661台と、前年同期比で2.4%増を確保したが、成長を期待した肝心の海外市場は3.3%減の336万7406台に低迷。この結果、国内外の全体販売台数は、前年同期比で2.4%減の394万6067台にとどまり、「ポスト800万台」の夢には到底、届かないペースなのだ。

■トヨタを上回る従業員の年収
同紙は背景として、トヨタはリーマン・ショックや米国での大量リコールなどで経営が苦しかった時期に、労働組合が賃上げを要求せず、むしろボーナスの削減などで労使一体で業績改善にあたった点に着目。対照的に営業利益が年々、減少する中でも現代自の労働組合が強気の賃上げを要求してきたことを指摘している。中国販売の不振で、その現代自労組がトヨタのような労使協調路線に簡単に転じるとは考えにくいのだ。 現代自の最近の株価はほぼ5年前の水準に逆戻りしており、多くの投資家も今はまだ反転攻勢に確信が持てず、経営の先行きを不安視している。簡単には巻き返しの展望が開けない中、おそらく現代自の海外法人長らはゾンビ相場と化した中国株バブルの行方に戦々恐々としていることだろう。