文部科学省によると、平成25年度の大学生就職率は94.4%と高水準を記録した。アベノミクスによる景気好転の影響が大きいと見られる。しかしお隣中国では、経済成長が鈍化する中、大学生の就職難が大きな社会問題となっている。

 中国国家統計局が発表したデータを見ると、2013年の大学生の数は2,468万人に上り、この年の卒業生の数は638万人であった。高学歴化が急速に進んだ結果、中国の大学生就職率は同年に史上最も厳しい、わずか3割程度を記録した。かつての日本の就職氷河期とは比べ物にならないほど深刻な状況なのだ。

 そんな中国で、いま社会問題となっているのが、就職できなかった大卒者の犯罪だ。6月に発覚した事件では、大学院を卒業した男性が違法ドラッグの製造・販売をしていた。前年に大学院を卒業したこの被告は、就職難で食っていけず、犯罪行為を行うようになったという。

 「検察日報」(6月17日付)によると、被告は大学院で学んだ化学の知識を悪用し、インターネットで購入した化学実験の器具で違法ドラッグを製造していたという。作業は近所の住民が寝静まった深夜に行っていたが、階下に住む住民の通報により発覚したという。階下の住人は夜、帰宅したときに異臭に気が付き、トイレの天井から水滴が絶え間なく滴り落ちていたことに驚いた。天井は赤黒く変色しており、刺激臭が充満していたという。その住人は真上の部屋に住む被告を訪ねたが、挙動不審だったため、マンション管理会社に連絡。その後、地元警察が駆けつけて逮捕となった。

 被告は製造した違法ドラッグを中国のSNSツール「QQ」を使い、ネットで売りさばいていたという。「微博」(中国版Twitter)には、今回の事件について多くのコメントが寄せられている。

「小さい頃から知識だけ詰め込まれて、道徳心や思想教育ができていなかった結果がこれだ」
「実験器具まで自宅にそろえるくらいのやる気があれば、企業の研究職とかあっただろ!」
「米ドラマ『ブレイキング・バッド』(化学教師がドラッグを密造するドラマ)を見ているようだ」

摘発された中国のドラッグ工場(本文とは関係ありません)
 こうしたエリート大卒者による犯罪は、ほかにもある。香港在住の大手紙特派員は、こう証言する。

「特に都市部では大卒や院卒でもブルーカラーの仕事でこき使われ、安い給料しかもらえない若者が多くなっていますね。ドラッグ製造は珍しい例ですが、多いのはネット犯罪です。最近の若者はITスキルだけは高いので、SNSを使った詐欺や犯罪はハードルが低い。日本でもはやったLINE詐欺や、アップルIDのクラッキングなども、犯人はだいたい就職にあぶれた大卒者です。サイバー攻撃やハッキングを行う若者の増加は、就職難と関係がある。ロシアやナイジェリアなど、同じ問題を抱える国にもサイバー犯罪者の数が多いですからね。日本にも影響のある話なので、中国の就職難に関しては注視する必要があると思います」

 株価の暴落や不動産業の低迷と、バブル経済が迫りつつある中国。就職できずに犯罪に手を染めてしまう大学生は、今後も増えていくに違いない。