誰もが目にしたことであるこの絵。コラージュやパロティのネタともなっているこの絵は、ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの『スクリーム(叫び)』である。

 その名作に関しての面白い雑学が13ほど紹介されていたので見ていくことにしよう。これであなたもムンク通だ。


1.『叫び』は4部作

 『叫び』は4部作。同じテーマで、1893年に油絵バージョンとクレヨンバージョンを、1895年にはパステルバージョン、1910年にはテンペラで描いている。




2. ムンクはこの絵を大量生産した。

ヨーロッパの美術界で『叫び』がヒットすると、ムンクは同じモチーフでリトグラフを制作し、モノクロバージョンを大量に売った。これらは1984年にアンディ・ウォーホルによって、再び命を吹き込まれた。ムンク展に続いて、ニューヨークのギャラリー・ベルマンがポップアートのパイオニアであるウォーホルに、スクリーンプリントできるムンクのリトグラフの再生を依頼したのだ。ウォーホルはムンクの『マドンナ』、『ブローチをつけた女』、『骸骨の手をもつ自画像』を制作した。


3. もともとタイトルは『叫び』ではなかった。

 ムンクが考えていたタイトルは『自然の叫び』(The Scream of Nature)。1895年にパステル画を描いたときの詩の中でその原点とも言える体験を書いている。

"わたしは2人の友人と道を歩いていた。太陽は沈みかけていて、突然、空が血の赤に変わった。わたしはふと憂鬱を感じて立ち止まった。青黒いフィヨルドや町並みが炎の舌と血に覆いかぶさるようで、ひどく体がだるい。友人は歩き続けたが、わたしはそこに立ち尽くしたまま不安に震え、自然の発する果てしない叫びを聴いた"¥n
 つまり、この絵で叫んでいるのは周囲の環境すべてであり、中央の人物は叫んでおらず、叫びに耳を塞いでいる状態である。


4. 自殺について描かれたものという説。

 ムンク研究家のスー・プリドーは、最初に『叫び』が描かれた頃、ムンクは失恋から絶望の淵にあり、家系に遺伝している精神疾患が悪化するのを恐れていた。『叫び』に描かれている橋は、よく自殺者が飛び込む定番の場所であることは単なる偶然ではないとプリドーは考えている。さらに、この橋は屠殺場と妹が入っていた精神病院のすぐそばにあると言われている。


5. 叫んでいる人のモデルはペルー人ミイラという説。

 この絵が描かれた頃、ペルーのアマゾン流域Utcubamba川付近で、チャチャポヤスの戦士のミイラが発見された。両手を頬に当て、口を大きく開けてまるで叫んでいるような姿だったようで、ムンクの『叫び』の構図とそっくりだ。美術史家のロバート・ローゼンブルムは、パリでミイラの展示会があったときにムンクがこれを見て、ヒントにしたのではないかと言っている。


6. ウェス・クレイヴン監督作『スクリーム』はムンクの叫びにインスパイア

 この大ヒットスプラッタ映画の監督は、ムンクの『叫び』を自分のお気に入りの殺人鬼としてみなしている。彼は20世紀の純粋なホラー要素、または人間の存在自体にとって、最高の参考書になると語っている。


7. 『ドクター・フー』にも影響を与えた。

 イギリスのこのSFドラマシリーズで、愛すべきドクターがサイレンスという恐ろしいエイリアンと対決する。制作責任者のスティーヴン・モファットはこのエイリアンの顔は、ムンクの『叫び』にヒントを得たと言っている。


8. 『叫び』が最初に盗難にあったとき、犯人はあざ笑うようなメモを残した。

 1994年、リレハンメル冬季オリンピックが開幕したその同じ日、オスロ国立美術館に泥棒が忍び込み、ムンクの『叫び』を盗んで逃げた。賊は簡単に盗み出せたことに気を良くして、こんなメモを現場に残した。

"お粗末な警備をありがとう"¥n
幸いなことに、絵は3ヶ月もたたないうちに戻ってきた。



9. 2004年には武装したガンマンが絵を盗んだ。

 白昼堂々、覆面したふたりの男がオスロのムンク美術館に押し入り、『叫び』と『マドンナ』を盗み出した。3人が窃盗で有罪になったが、オスロ市が200万クローネ(31万3000USドル)の懸賞金を出したにもかかわらず、2006年5月時点では絵は見つからないままだった。


10. 200万個のM&Mが絵の奪還の報酬として提供された

 2006年8月、チョコメーカーのマース社が自社の新しいダークチョコM&Mを売り込むためのマーケット戦略も兼ねて、絵の奪還に一役買うことになった。『叫び』のあの象徴的な絵の中で赤いM&Mが石蹴りをする広告を制作して、甘い報酬を提案したのだ。

 この戦略が功を奏した。広告が公表されて数日後、有罪になった犯人のひとりが司法取引で、家族の面会と2.2トンのチョコと引き換えに、絵の行方についてついに口を割った。報酬を受け取るのは、そもそも犯人を逮捕したノルウェー警察のはずだったが、警察は金額にして2万6000米ドル相当の現金をムンク美術館に送るのがベストだと決めた。


11. 再び『叫び』が盗まれるかどうか、賭けが始まった。

 ロンドンの賭け屋ブックメーカーが、唯一個人所有であるパステル画の『叫び』が、2012年5月2日のサザビーズでの競売前にまた盗まれるかどうかのオッズは20倍だと発表した。絵の価値は8000万ドルと見積もられていたが、最終的には1億1990万ドルで落札され、当時において世界一高い金額で競り落とされた美術作品となった。


12. わたしたちは科学的に『叫び』のように反応するようになっているという説。

 ハーバード大学の神経生物学者マーガレット・リヴィングストンのマカークザル(アカゲザル、ニホンザルなど)を使った実験で、脳はムンクの『叫び』のように口を大きく開けた大げさな表情に反応する傾向があることがわかった。わたしたちの神経細胞が同調するものだから、よくパロディとして真似をされるのだという。


13. 『叫び』はパブリックドメイン(公有財産)

 『叫び』をはじめムンクのほかの作品は、作者の死後70年の著作権期間を採用している国の間ではパブリックドメインになっている。ムンクは1944年に死んだので、2015年1月1日で、ブラジル、イスラエル、ナイジェリア、ロシア、トルコ、EU諸国では著作権が切れてパブリック・ドメインになった。これは1923年以前の作品なので、アメリカではすでに著作権が切れている。